弱者のハラスメント対策 ~人間関係に悩まない職場づくり~
大勢の中のひとりの言動でも
人は深く傷つく。
これが、ハラスメントの本質だと考えています。翻すと、人が集まれば、どんな集団・組織であってもハラスメントが起こる危険性があります。会社、団体、自治会、PTA、友達のグループ、家族。
職場での立場や権力を利用し、過度な叱責や無理な要求を繰り返すパワーハラスメント。性的な言動や不適切な接触で相手を不快にさせるセクシュアルハラスメント。妊娠・出産・育児に関わる人への不利益な扱いや嫌がらせであるマタニティハラスメント・パタニティハラスメント。客が過度な要求や暴言で従業員を苦しめるカスタマーハラスメント。世の中には、ハラスメントが溢れています。
故意に人を傷つけることもあれば、
意図せず人を傷つけることもある。
ハラスメントは事前の防止策が大切です。ですが、防止策だけでは完全に避けられません。人が集まれば、想定外のアクシデントは起きる。だからこそ、被害後に当事者の心身の回復のために安心できる支援体制の確立も必要です。事後のケアは、個人の尊厳を守り、組織に再び歩む力を与えます。
僕も障害者雇用で働いたときは、
「パワーハラスメント」に
苦しめられました。
しかし、同時に、
パワハラからの
身の守り方も覚えました。
そこで、今回は。
「弱者のハラスメント対策」と題を打って、パワハラの定義からパワハラ防止と事後ケアまでを僕の経験を交えて、みんなといっしょに情報共有したいと思っています。
難病患者・障害者といった弱い立場であるからこそ、理不尽に抗う知識は役に立つものです。逆境を上手に生きて欲しいと願います。
メニューは次の通り。
キーとなるのは「心理的安全性」。
働きやすい職場には、
「相互理解」が必要不可欠です。
どうすれば、
メンバー同士で
相互理解ができるのか?
一緒に学んでいきましょう。
それじゃー。
Here We Go!

パワハラの定義
労働施策総合推進法において、「パワーハラスメント」とは、職場での優位な立場や力関係を背景にして行われる不適切な言動を指します。例えば、上司や同僚などが業務上の必要な範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為です。
次の3つの要素を満たす言動がパワハラに該当します。
① 優越的な関係を背景とした言動
職務上の地位が上位の者による行為である。また、同僚又は部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるものも該当します。労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない関係性であることを要します。
② 業務上、
必要かつ相当な範囲を超える言動
業務上で明らかに必要性のない行為、業務の目的を大きく逸脱した行為がこれに当たります。「社会通念上」相当であるかの責任が問われます。法律のように明文化されていなくても、社会で一般的に共有されている考え方や常識に沿って、適切でないものが該当します。
③ 労働者の就業環境を害する言動
精神的・身体的苦痛を与えられ、業務をする上で看過できない重大な支障が生じる場合です。パワハラ行為によりパワハラを受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響を及ぼしている場合などが該当します。労働者の主観的な感情によるところが大きいのですが、判断基準においては、「平均的な労働者の感じ方」を基準とします。
上司と部下の関係性があるだけで、①の条件は該当します。また、労働者が不快に感じれば、③の条件も容易に該当しやすいです。したがって、パワハラの成立には②の「業務上、必要かつ相当な範囲を超える言動」があったか、なかったかということが、争いの焦点になりやすい傾向にあります。
では。
具体的に、どのような行為がパワハラに当たるのでしょうか?
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントに当たる6つの類型を例示しているので、紹介します。
1. 身体的な攻撃
相手を殴る、蹴る。物を投げつける。暴行・傷害に当たる行為です。
2. 精神的な攻撃
人格を否定するような言動。長時間にわたる叱責。大声での罵倒。脅迫・名誉棄損・侮辱に当たる行為です。
3. 人間関係からの切り離し
仕事を与えず別室に隔離する。集団で無視をし、孤立させる。隔離・仲間外し・無視などの行為です。
4.過大な要求
長時間にわたる苦痛を伴う肉体労働。必要な教育訓練を行わず、達成不可能な目標・成果を設定する。業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制・仕事の妨害などの行為です。
5. 過小な要求
労働者の能力に対して釣り合わない、明らかに軽易な作業を行わせる。わざと仕事を与えない。業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事のみを命じたり、仕事を与えないといった行為です。
6. 個の侵害
労働者を職場外でも継続的に監視、命令を行う。無断で写真撮影を行う。労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の極めてデリケートな個人情報について、了解を得ずに他の労働者に暴露する行為です。
2020年6月の労働施策総合推進法の改正により、企業にパワハラ防止措置の義務が課されました。罰則こそありませんが、行政が企業に対し、助言・指導・勧告は行えます。勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性があります。また、パワーハラスメントにより従業員が心身の不調を訴えた場合、労働契約法の安全配慮義務違反になりかねません。近年では企業側に多額の賠償を認める裁判例もあり、放置しておくことはリスクです。論理的に「何がパワーハラスメントに当たるのか?」を理解することは、職場でのパワハラ発生のリスクを下げることになります。
パワハラに該当する3つの言動と6つの例示は、覚えておいて損はないと思います。

僕のパワハラ体験と対策
【パワハラ体験】
僕もはじめて
障害者雇用で働いたときに、
パワーハラスメントを経験しました。
パート従業員の女性に「障害者はバカだ!」などと罵倒されることが何度もありました。
事の発端は、障害者雇用2年目からです。僕の正社員化の話が出始めた頃からでした。元々、契約の非正規社員だったのですが、障害者雇用で1年間働いたあたりから、3年目から正社員にしたいという話をいただきました。フロアの違う職長や事業場外の職長が僕の働いてる課に来る度に、「君もこれからはここの歯車の一員だな」とか、「正社員化の試験をがんばれよ」と歓迎するような温かい声かけをしてもらっていました。
ですが、そういった僕への応援を聞く度に、隣の席で、パートの女性はとても険しい形相で怒りを押し殺しているようでした。そのパートの女性はよく怒る性格のため、孤立していて、正社員の人達もすごく嫌い、煙たがっていました。入社当初から、正社員の人たちとの雑談の中で、僕が「仕事が楽しい」と言えば、「仕事の辛さがわからないなんて、障害者はバカだ」とか、「給料を貯めて、猫と暮らしたい」と言えば、「障害者がペットなんて飼えるわけがないじゃない、生活の苦しさがわからないなんて非常識だ」と言われてしまう状況だったので、決して良いと言える関係ではありませんでした。この言葉は今でも、心の傷になっているのかもしれません。治療と仕事の両立支援を行うにあたって、難病患者・障害者が余暇に『楽しみ』を持てることを大事にしたいと思っています。ペットと戯れること、ゲームで遊ぶこと、ショッピングに出かけること、スポーツに汗をかくこと。『楽しみ』を持つことは『病気・障害と向き合う力』になります。生きる気力となる。難病患者・障害者が笑顔になることは『悪』で、常に苦しんでいることが『善』だという社会の偏見は間違っていると思っています。こういった思い込みをなくしたいという願いが僕の治療と仕事の両立支援の源泉となりました。また、常にイライラしている異常に神経質な女性だったので、机の中まで「ノートは右、ハサミ左、整理されていない」とチェックされたり、自分用の手控えのメモまで「同じ大きさの文字でまっすぐ書く」と注意をされていました。ですから、元から良い関係性ではなかったパート女性と、就職して1年目を過ぎた頃から、揉めることが多くなります。
この頃から、「新人が有給休暇を使い過ぎる、障害者なんだから、もっと休みを控えなさい。」とパート女性から叱りを受けるようになりました。そのパート女性は誰かに強く物を言われると、すぐに外部相談窓口にセクハラやパワハラで通報する人です。上司は彼女が怒り出すと怯えきった様子で、「彼女が怒り出すと面倒だから、彼女の言うことを聞いてくれないか?」と言うようになりました。僕の有給休暇は、すべて病院の通院日に当てています。自分の遊ぶ時間やリフレッシュに使える有給休暇はありませんでした。そのため、病院でのクローン病の治療法を変更せざるを得なくなりました。そして、その新しい治療法がまったく身体に合わなくて、体調が悪化していきました。
また、同時期に、その上司から、パート女性が僕(障害者)と仕事の能力差で比較されるから、「彼女と友達になってほしい。彼女に君の生き方を学んで欲しいんだ。」と頼まれるようになりました。正社員の人たちは僕のことを賢いとか、仕事ができると言ってくれていましたが、そのパート女性はあまりにも仕事ができない人であったので、その比較において、僕が優秀に見えていただけで過大評価だったんだと思います。そもそも障害者雇用の仕事はコピー取りであったり、簡単な入力作業であったり。裁量権のある仕事やキャリアが積めるような仕事はありません。ですから、僕に対しての評価も見誤っていたと思います。
ですが、パート女性と友達になれという頼みは、僕にとって、本当に苦しいことでした。上司は「仕事ができない人でも、社会のどこかに居場所があってもいい。助けてくれる人がいて、障害者は恵まれている。」としきりに言っていました。けれども、そのパート女性は話すと不満や怒りだけ。障害者だなんだと人のことを小馬鹿にしたり、罵倒したり。僕まで心が病んでいくというか、話を聞くことすら苦痛でしょうがありませんでした。パート女性とは、話せば話すほど、関係性が悪くなるばかりで、正社員の人からも「ムリすることないよ」と助言をいただき、彼女と話すことを避けるようにしました。
しかし、上司は「彼女は孤独な人なんだ!どうしてわからないんだ!彼女を誰も助ける人がいないんだ!」と苛立ちを募らせているようでした。僕は、クローン病で障害者である自分の何が『恵まれている』のか、今でも全く理解できません。難病のせいで、やりたい仕事はできない、好きな物は食べられない、遊びにも出かけられない。さらには、経済的にも厳しい。パート女性は、健康でやりたいことができる。努力をすれば何だって手に入る。努力をしないから、社会でぞんざいに扱われる。なんで健康で怠けている人を努力しても評価されない難病患者・障害者が支えなければならないのか?本当に理解に苦しみました。
上司からはクローン病のことを「安倍首相のような人間がなるぜいたく病だから、恵まれない人の気持ちがわからない」と言われていました。これこそ科学的根拠に基づかない偏見そのものだと思います。近年、クローン病・潰瘍性大腸炎は遺伝性の免疫疾患である可能性が高いことは解明されてきています。職務上の優越的地位にある上司に対して、当時は自分の立場も考え、言い返しもしませんでした。ですが、そのことが結果として良くなかったのかもしれません。
就職して1年目を過ぎてからは、そのような状況が続き、上司との関係もだんだん悪化していきました。昼休みには、上司から「パート女性がいつもひとりなんで、一緒に食事をしてやってくれ」と頼まれ、昼休みに話すと、その女性はストレスがたまっているせいか、いつも批判ばかり。「障害者はバカだから、仕事が終わった後も仕事のことを考えないと仕事を覚えない。障害者はもっと働きなさい。」と罵倒されて、本当につらかったです。見るに見かねた先輩が「私は彼女と一緒になりたくないから、昼休みの時間は彼女とずらしているよ。昼休みは外で食事をして、戻ってこない方がいいよ。」とアドバイスをくれたので、昼は外で食事をして、昼休みが終わるまでゲームセンターで時間を潰していました。そうしたら、「大のオトナがいつまでもゲームをしてるなんて!」と上司は激怒。社労士になった今なら、休憩時間の自由利用は労働基準法で定められているので毅然とした態度を取れるのですが、当時の僕は、どういう対応をすればいいのか、本当にわからない状態でした。
そのせいか、上司の要求もさらにエスカレートしていき、「休日に彼女と映画を観に行ってくれないか?」とまで言われるようになりました。通院の有給休暇すら使えないのに、なんで土日の休日まで、体調悪化の原因となっている大嫌いな女性と過ごさなければならないのでしょうか?そのことを上司に尋ねると「君は能力が高いのに、性格が子どもっぽいから、もっと一般常識を知るために、結婚をして家庭を持たなきゃいかん。彼女と恋仲になったっていいじゃないか。弱い者同士で支え合えばいいじゃないか。男性は女性に謝りながら生きていくものだよ。」と嘲笑されながら言い返されました。僕の家族は仲があまり良くなくて、僕自身も結婚したいとか、家庭を持ちたいとか思ったことが人生で1度もありません。家族が増えるなんて、まっぴらごめんです。上司の言葉は、軽口でも、殺意を覚えるくらいに、僕にとっては本当に許せない言葉でした。ですから、「ネットゲームのオフ会があるんで、行きません」と僕が答えると、上司は「ゲームと彼女と、どっちが大事なんだ!?」と声を荒らげ、「絶対にゲームです!」と言い合いになるようなことがありました。
このあたりから上司との関係性も完全に冷え込みます。「君は人を追い抜くばかりで、追い抜かれる人の気持ちが分からない」、「能力の暴力だ、まるでアントワネットのようだ」、「仕事はできるのに、仕事以外は一切できない」「障害者らしく見えないから、障害者らしくしなさい」と言われるようになりました。中途で派遣会社から派遣社員がやってきたのですが、パート女性はその派遣社員にも誹謗中傷や嫌がらせをし、派遣会社からクレームが入りました。そのため、パート女性に関わることをみんなが嫌がり、上司はなにがなんでも僕とパート女性を友達にしようと画策していました。ですが、僕もなにがなんでもその女性と友達なんぞなりたくないと抗いました。また、パートの女性本人からも「行政書士試験に合格してるなんて嘘つきだ!あなたみたいな頭の悪い障害者に取れるわけがない!」と経歴詐称の疑いまでかけられようになります。僕も体調悪化と心の疲労が重なり、うんざりとした気持ちが強くなって、仕事を辞めることにしました。仕事を辞めるときも、上司に「このままじゃ、加害者と被害者の色がつく。彼女がこの会社だけでなく、社会でも生きていけなくなる。彼女を殺す気か?」と言われ、なかなか辞めさせてもらえませんでした。正社員の先輩などからも頼んでもらい、ようやく辞めることができました。
まあ、ここまで、長々と書きましたが。
一言で例えるなら、
「相互理解」が上手くいかなかった。
読むのが面倒であれば、コミュニケーションが良好ではなかったということだけ覚えておいて下さい。
【僕のパワハラ対策】
体験談だけ読むと、僕がやられっぱなしのように見えると思うのですが、実は水面下でしっかり対策をしていました。
パート女性からよく「私は法律に詳しいの。あなたを辞めさせることは簡単なんだからね」と脅されていました。ですが、僕は一応、行政書士の資格を持っており、法律上そんな根拠はまかり通らないとわかっていたので、スルーしていました。まあ、そんな態度が気に食わなくて、火に油を注いでいったのだと思います。法律の資格を持たない彼女が、僕が行政書士の資格を持っていると知ったときは、「嘘をつくな」と頬をパンパンに膨らませ、赤い水風船のように顔を真っ赤にした表情を思い出します。人間の顔があんなに赤くなることに驚きました。ゲームのファイナルファンタジーに「ボム」というモンスターがいるのですが、自爆するときにそっくりでした。
そういった理由で、いつ法的トラブルに陥ってもおかしくないと認識し、事前の準備は進めていました。
そこで。
僕が行っていた
「ハラスメント対策」
を紹介します。
1. プロセスを透明化する
嫌がらせを受けている事実を、同僚・先輩には、できるだけ話すようにしていました。仕事でよその課に資料を配りに行ったときに、「今日は○○って言われた。嫌になっちゃう。」と恣意的に話題に上げるようにしていました。「いじめ」に関しては、被害者が腫れ物扱いされますが、加害者も本人がいないところで必ず陰口が叩かれ、当事者ではない人たちは加害者と距離を置きたがります。人は利益より損失に敏感で、不確実な選択に迫られたときは、安全な選択を好む心理があります。心理学でいうところの「プロスペクト理論」です。ですから、自分に非がなければ、ハラスメントのプロセスを透明化し、自分の被害を公にするのは、いじめに抗う有効な手段となります。僕は当時、mixiやTwitterなどのSNSをやっておりました。SNSでつながってる同僚もいたので、知ってもらえるようにSNSにも被害を書き込むようにしていました。SNSでの情報拡散には注意もあります。個人名、主語は書かないこと。相手の批判、評価はしないこと。事実と自分の気持ち(感情)だけを書くようにすること。このおかげもあってか、正社員の人たちは、僕を味方してくれました。
2. 訴える前に証拠を集める
被害を訴えてから、証拠を集めるのでは、加害者側が証拠を隠滅したり、言い逃れをする可能性があります。逃げ道を塞ぐことが必要です。被害を訴える前に、見える証拠を1つでも多く集めましょう。証拠という「手札」は多ければ、多いほど良いです。僕の場合、パート女性に「障害者はバカだ」とよく言われていたので、ICレコーダーを持ち込んで、叱責する音声を録音しました。持ち込んだ初日の朝に、すぐに録音ができました。会話の盗聴になるのではないかとの懸念の声がありますが、「同意のない録音」として証拠能力が否定されなかった裁判例もあります。また、前述したSNS、ブログなども、細かく書いており、日付と被害の内容を記述してあるものは、間接証拠に当たると考えていました。また、就職期間中、祖母が亡くなったのですが、パート女性に「また休む気?」と言われ、葬儀の日取りを会社に言い出せなくて、忌引き休暇をもらえず、葬儀に出席できませんでした。こういったことも、勤務表や祖母の死亡日がわかる戸籍などから証明可能じゃないかと考えていました。そして、正社員の人たちからも、もしパート女性に訴えられたら、「いじめられていることを証言するからね」と言ってもらえていたので、第三者の証言も得られたと思います。
3.相手に証拠は見せるな!
できるだけ証拠をたくさん集めたら、その証拠はすべて相手に見せないことが大切です。手札はすべて裏にしておく。交渉の段階、和解の条件に応じて、手札を明かしていくのがいいでしょう。カードゲームの『遊戯王』でも、魔法カード、トラップカードという伏せて見せないカードがあります。自分のターンで1枚ずつカードを明かして、魔法攻撃をしてもいいし、トラップカードのように、裏側でセットし、次ターン以降の相手ターンに条件を満たしたとき、発動させてもOK。上司に「我々を脅す気か。まるで、ヤクザのやり口だな」と言われたのですが、違います。遊戯王のやり口です。交渉においては、バカ正直に全部言うのではなくて、情報を小出しにしていくことが大事だと思います。
僕はハラスメントの交渉をするにあたり、これら3つの対策をしました。しかし実際には、この3つの対策は全部を使いませんでした。人事の担当者にハラスメントを訴えたとき、僕が証拠を提示せずとも、僕の言い分をほぼ信じてくれました。たまたま、人事が僕と背中合わせの隣の課で、事の経緯は全て見ていてくれたからです。すべてが徒労に終わりました。
社労士になった今、思うことは、「もっと早くに相談すればよかったな」ということです。そうすれば、事態がここまで悪化することはなかったのじゃないかと感じます。社内に専門の相談窓口があったわけじゃなかったので、当時の僕は、誰に相談したらいいのかわかりませんでした。
ですから、『相談窓口の設置』と『具体的に誰に相談すればいいのか』を社内に周知するだけでも、ハラスメント対応は変わるんじゃないかと思います。

パワハラ防止策
パワーハラスメントが起こらない企業風土、人間関係で悩まない職場作りに必要なものが何かと問われれば、2つあります。
それは。
「人材マネジメント」
と
「良質なコミュニケーション」。
そして、
その2つを実現するものが。
「心理的安全性」です。
心理的安全性を提唱したハーバード大学教授のエイミー・エドモンドソン氏はこう説きます。
「心理的安全性とは、組織の対人関係でリスクある発言をしても、拒絶されたり罰せられたりしないと信じられる状態である。」
つまり。
・職場でネガティブな
プレッシャーを受けない
・チームで成長できる関係性の構築
以上の2つが重要です。
そのために、
企業内で具体的に、
どのような施策が必要かと言うと。
「対話とルール作り」です。
まず、最初に理解しなければならないことは、『心理的安全性の高い職場』とは、『楽しく優しい職場』ではないことです。かと言って、『悲しくつらい職場』であってはならない。フラットな関係性でお互いに言いたいことが言い合える。建設的な議論ができる場でなければならないのです。時として意見の対立が必要な場面もあります。反対意見は相手の人格の否定ではない。人格攻撃をせず、事実だけを伝える技術が必要です。
職場は「みんなでリラックスして楽しく過ごせたらいいね」ではなく、仕事においては、目標を達成し、生産性を高めることが目的となります。その中で、時には『人に優しく、成果に厳しく』ということも必要になります。『遠慮をして言わない』が1番ダメ。例え、厳しい内容であっても、ためらわず、『スピーディに、ストレートに』伝える。それができる職場環境を作ることが、「対話とルール作り」です。言わない『配慮』より、伝える『誠実さ』。それが心理的安全性です。
・職場における「対話」とは?
チームのメンバー間の「価値観の共有」が大切です。そのために、相手が大事にしている価値観を理解する努力が必要になるでしょう。Googleが「成果を出すチームの条件」を科学的に調べた研究「プロジェクト・アリストテレス」において、特に重要なのは「心理的安全性」で、安心して意見を言える環境が成果につながると示しています。2012年から約180のチームを分析し、効果的なチームには共通項があることを見つけ出しました。チームの成功を左右するのは、メンバーの能力よりもチームの雰囲気や関係性であることが述べられています。メンバー個人の働くことの価値、役割、背景情報をお互いに知ることが生産性の向上につながります。相手がどんな価値観や考えか分からない状態では、『自分の発言が誰かの気分を害するんじゃないか?』『自分は嫌われ者なんじゃないか?』と言いたいことが言えなくなってしまいます。
ぜひ、チームの管理者、マネジメント担当者に積極的に行っていただきたいのは、「メンバー間の橋渡し」です。そして、それを実現するには、リーダーほど率先して、自発的に自己開示を行ってください。Mission・Vision・Value。仕事の課題・役割、自分の夢・仕事の将来像、自分の大事にする仕事の価値観。リーダーの考えを、メンバーに日頃からよく伝えてください。好み・感じ方・考え方などの自分の取り扱い説明書をメンバーに渡すことで、チームメンバーの信頼は高まります。
さらに、
「相互理解」が深まる方法は2つあります。
① 1on1の面談
チームメンバーの一人ひとりと1対1の面談を定期的に行ってください。理想は1ヵ月に1回30分程度。『達成できていること』と『達成できていないこと』の両方を尋ねるといいでしょう。定期的な面談を行う意義は、チームメンバーの様子を定期的にモニタリングすることです。アメリカの損害保険会社が労働災害の発生パターンを発表した研究に「ハインリッヒの法則」があります。1件の重大事故の背景には29件の軽傷事故、さらに300件の小さな異常や危険行動があるとされます。つまり、重大な事故を防ぐには、日常の小さな危険や不注意を見逃さず、早めに対策することが大切だと教えてくれる法則です。メンバーの小さな変化にいち早く気付くことで、ハラスメントなどの対人トラブルを未然に防止することになり、相互理解も深まります。定点観測は有効な手段です。面談では、仕事だけでなく、人間関係、健康面、プライベートの過ごし方も訊いてください。会社の中の問題と外の問題で解決できること、できないことがあります。問題を切り離す必要はありますが、個人理解が深まり、リーダーとメンバーの心理的距離は近くなります。リーダーシップを発揮しやすい環境を整えるでしょう。メンバーの目標・悩み・価値といったニーズを捉えるだけで、労務トラブルの発生を抑止し、優秀な人材の定着につながります。
② 誰でもわかる情報共有
職場でのコミュニケーションには「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」という二つのスタイルがあります。ハイコンテクストは、相手の背景知識や文化的文脈を前提にしたやり取りで、暗黙の了解や「察する力」に依存します。例えば、『この仕事、うまくやってよ』と具体的な例示をせず、指示を行う方法です。一方、ローコンテクストは、誰にでも分かるように前提を言葉で明示し、曖昧さを減らすスタイルです。例えば、『この仕事は、明日の○時までに、グラフや図解を含めた資料を作って』とより具体的な指示を出す方法です。
この「ハイコンテクスト文化」を「ローコンテクスト文化」に変えていくことが必要です。言葉と行動が不一致な指示をしない。ダブルバインドを生み出さないことが安心感につながります。
ハイコンテクストな職場コミュニケーションは、阿吽の呼吸で仕事のスピード感が出る、チームの一体感が強まるなどのメリットがある反面、ついていけないメンバーに対して、能力の成長機会を奪いやすい、脱落者などの仲間外れが発生しやすいというデメリットもあります。学生時代のコミュニケーションは、比較的ローコンテクストなやりとりが中心です。授業や課題、部活動などでは「誰が見てもわかる説明」「明確な指示」が求められるため、曖昧さを避けてシンプルに伝えることが多くなります。背景や暗黙の了解に頼らず、分かりやすさを重視するスタイルです。一方、それが社会人になると職場ではハイコンテクストなやりとりが増えます。長く同じ職場にいる人同士は「言わなくてもわかる」「前提を共有している」という暗黙の了解を前提に話すことが多くなり、背景知識や人間関係を踏まえたコミュニケーションが日常化します。こういった学生時代と社会人時代のコミュニケーションのギャップによって、戸惑う人が多いようです。若い世代でハイコンテクストな文化が嫌われ、ホワイト企業が支持されたり、エシカル思考の経済行動を選択する一因になっています。若者の人材定着にも有効です。
ローコンテクストな職場のメリットは次の通り。
-誤解や摩擦が少なくなる-
「言わなくても分かるだろう」という前提がなくなるため、情報が正確に伝わり、余計な衝突を防げます。特にメールやチャットなど文字のテキストベースのやり取りでは、ローコンテクストが誤解防止に大きく役立ちます。
-新しいメンバーが
安心して参加できる-
暗黙のルールや独特の言い回しに頼らないため、入社したばかりの人や異なるバックグラウンドを持つ人でも理解しやすく、早くチームに馴染めます。
-仕事の効率化-
マニュアルを作ることや指示を明確にすることで、推測や確認の手間が減り、意思決定や作業がスピードアップします。「結論は何か」「次に誰が何をするか」が明確になり、時間の節約にもなります。
-多様性な価値観が生まれる-
異なる文化や価値観を持つ人ともコミュニケーションが取りやすくなり、規模の大きなプロジェクトや多様な人材を活かす場面で力を発揮します。異なる価値観に寛容であることは、新たなアイデアを生み、成長につながります。
「1on1の面談」や「誰でもわかる情報共有」を進めることで、相互理解が深まり、フラットな対話ができる職場に近づきます。
・職場における「ルール作り」とは?
職場でパワーハラスメントを防ぐためには、個人の意識だけでなく、組織としてのルール作りが欠かせません。属人的な要素を排除し、タスクを切り分けます。誰が判断しても、同じ結果になる。明確なルールを整えることで、安心して働ける環境をつくり、信頼関係を育むことができます。また、レギュレーションに沿った判断をすることで、公平性を保つことができます。
① 行動指針の明文化
「どのような言動がパワーハラスメントにあたるのか」を明確に定義し、社内規程やパンフレットに記載して周知します。わかりやすく言えば、パワハラ発生後の対応マニュアルを事前に作っておくこと。誰が対応しても、同じ支援となることが大切です。同時に、パワハラ発生後の当事者の保護ルール、懲戒規定の整備も予め行っておくとよいでしょう。
② 相談窓口の設置
社内外に相談窓口を設け、誰でも相談できる仕組みを整えることで、声を拾いやすくします。ただ、相談窓口を設置しても、職場での立場・キャリアを考えて、相談をしないという選択肢をとる人もたくさんいます。相談窓口が形骸化していて、専門家へリファーできないことは避けるべきです。そのためにも、「いつ」「誰が」「何を」相談できるのか、具体的に担当者名や相談できる内容、過去に利用した例を提示して周知することが必要です。また、利害関係のない第三者機関の外部窓口も、支援担当者をパワハラの被害者と加害者の双方から板挟みにしない負担軽減に大きなメリットがあります。
③ 研修や教育の実施
管理職や従業員に対して、パワーハラスメント防止の研修を定期的に行い、理解を深めます。認識の共有がパワハラの未然防止につながります。また、必要な情報を企業内で共有し、情報を引き継ぐことで他部署の間での連携を強化します。建設的な議論の在り方、事実と感情を切り分ける物事の伝え方、傾聴の仕方などの研修を含めれば、より相談しやすい雰囲気が生まれます。職場でパワーハラスメントを防ぐためには、個人の意識だけでなく組織全体の理解と行動が必要です。研修を通じて従業員一人ひとりが正しい知識を持ち、安心して働ける環境を整えましょう。
「対話とルール作り」が心理的安全性を高める重要な要素であることは理解いただけたでしょうか?そもそも人間は他人がコントロールできるものではありません。ですから、人間を管理するのではなく、ルールで人間を支援する。コントロールできるものは、プロセスと結果です。人材マネジメントと良質なコミュニケーションでパワーハラスメントを防ぎましょう。

事後ケア -腫れ物を生まない-
最後に、
パワハラ発生後の対応です。
次の順で対応します。
1.被害者保護を優先
加害者と被害者を一時的に分けるなど、すぐに被害拡大を防ぐ措置を取ります。当事者間で連絡を取り合うと脅しによる被害の取り下げ、口封じなどの恐れがあります。公正な取り調べのため、必要があれば、一時的に自宅待機、就業場所の変更なども検討します。
2.迅速な事実確認
被害者・加害者双方から丁寧にヒアリングを行い、客観的な証拠を確認します。中立性を保ちながら、被害者だけでなく、加害者にも弁明の機会を与えることが必要です。そして、プライバシーの尊重も重要となります。ヒアリングで知った当事者の個人情報は厳密に管理し、外部に漏らさない。
3. パワハラの有無を判断・処分
パワハラの有無を判断します。パワハラ行為が認定された場合は、就業規則などの規程に基づき、研修・配置転換・減給・懲戒処分などを検討します。処分手続きは法令に抵触しないように、社会通念上相当であるか、客観的に合理的な理由があるかなど、正当性を守る必要があります。また、被害者の不利益の回復、関係改善に向けての援助、加害者が行動を改めるための研修・面談など長期的なフォローを行います。
4. 再発防止策の制定
組織全体で研修や相談窓口を見直し、同じ問題が起きないよう仕組みを強化する。情報共有する場合は、プライバシー保護の観点から、個人名を特定されない配慮が必要となります。個人の問題ではなく、組織全体の問題として、ハラスメントを再発させない仕組み作りを行うことが重要です。外部の専門家に相談することも有効な手段です。
ハラスメントが発生すると、被害者・加害者の双方が「腫れ物」の扱いとなります。周囲が過度に気を使い、触れてはいけない存在のように扱われます。当事者の言動や過去のトラブルから周囲が距離を置き、自然なコミュニケーションが難しくなる状態です。これはハラスメントの被害者・加害者双方の孤立を招き、チームにとっても信頼関係や生産性を損なう原因になります。
特定の人を特別視せず、公平に接し、困っている人には早めに声を掛けることが重要です。『おはよう』『今日は、体調どう?』といった何気ない雑談が孤立を防ぎ、職場に「腫れ物」を作らない手立てとなります。小さな「声掛け」が信頼関係を育て、チーム全体の雰囲気を温かくするものです。ハラスメントの事後ケアは、意外と誰でもできることなんですよ。でも、みんな、そのちょっとの気遣いに気付かない。だから、どうしても「腫れ物」を作ってしまう。
特に、ハラスメント被害者は、傷を負った被害者であるのに、その後の人生で不利益になることが多いです。過去のハラスメントを隠しながら生きなければならない。
例えば、転職会社の人事担当者が障害者雇用で採用のポイントに見るのは次の3点です。
・体調の安定が見込めない
・対人関係でトラブルを起こす
・家族関係が安定しない
僕も最近になって知りました。過去に被害者であっても、加害者であっても、ハラスメントの経験があると対人関係でトラブルを起こしやすいと、企業の採用担当者からは忌避されます。こういった人材は能力・スキルがあっても採用しないように、障害者雇用の転職市場で指南されているのが現状です。難病患者で、過去にハラスメントの経験があって、家族仲もあまり良くない僕は、スロットでいう「777」の状態です。フィーバー!障害者雇用でブラックリストに入っていた理由がわかりました。社労士がこのことを知らないわけがないだろうから、東京都社会保険労務士会の中で嫌われ始めているのにも、こういった理由があるんだろうね。
でも、これって、
なにか間違っていると思いませんか?
ハラスメント被害を好きで受けている人なんていないと思います。社会全体でハラスメント被害者を「腫れ物」にしている気がするんですよね。だから、僕は、「腫れ物」になっても、自分のハラスメント被害を正直に話し続けるつもりです。ひとりでも理解者が増えるように。
まあ、年金特別アドバイザーを3ヵ月で下血して辞めて、東京都社会保険労務士会の中でも、「腫れ物」扱いになっている難病の社労士が言っても説得力がないことなのかもしれないけど。
「PPI」とか、「治験」とか、新しい取り組みをしてることも反感を買う1つの理由になってるようです。「社労士の仕事をなんで普通にやらないの?」とは、よく言われます。誰になんと言われようとも、必要な知識は取り入れる。そして、「難病患者の治療と仕事の両立支援」を貫き通す。乾坤一擲の覚悟を胸に抱いています。
病気の痛みは、
病気になった人しかわからない。
ハラスメントもそれは同じ。
涙は嘘で流せても、
血は嘘では流せない。
わかりあえるのは、
きっと、時間が掛かるんだろうね。
面白いことに、ベテラン社労士ほど、モーゼの海割れのように僕のことを避けるんですよ。人が左右に分かれて、道が開けるの。目も合わせてもらえない。社会保障のプロでさえ、そうなのだから。したり顔で事業主に「職場で障害者を腫れ物にしちゃいけませんよ」と言いながら、自分の隣に障害者が現れたら、それができない。言動不一致なんだよね。
それでも、僕は。
目を背ける人にも、しっかりと目を合わせて、挨拶をする。会話をする。笑顔を見せてやる。
絶対に視線をそらさない。
これが僕の生き方だから。
今回もブログを
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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