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【台北】台湾新文化運動の街・大稲埕


◆はじめに

前回の記事(上記リンク参照)で、台北市大同区大稲埕エリアが日本統治時代に台湾新文化運動の中心地であったということに触れたところですが、本稿では、大稲埕エリアにある台湾新文化運動ゆかりのスポットをさらに3つほど紹介させていただきます。

■1.私立天主教静修女子中学(台北市大同区寧夏路59號)

台湾人への文化的啓蒙を進めるため、蒋渭水医師(1890~1931)の提唱により、実業家・資産家の林献堂(1881~1956)が青年学生を集めて1921年に結成した団体が台湾文化協会です。
同会の設立大会が行われたのは、大稲埕にあるカトリックの女子校・私立静修高等女学校(現私立天主教静修女子中学)でした。
写真は、民生西路にあるドミニコ会系列の教会「聖母無原罪司教座堂」
私立静修高等女学校は、ドミニコ会蓬莱町大聖堂(現聖母無原罪司教座堂)の隣接地に設置した学校です。

「聖母無原罪司教座堂」

■2.台湾新文化運動紀念館(旧台北北警察署)(台北市大同区寧夏路87號)

私立天主教静修女子中学の少し北、寧夏路錦西路の交差点にあるのが台湾新文化運動紀念館。
同館は日本統治時代の1933年台北北警察署として建てられた鉄筋コンクリート造り2階建ての建物で、流線型の曲線美が目を引く西洋円柱式のデザインで知られています。この建物は中華民国による台湾接収の後も、3階部分を増築したうえで、引き続き台北市政府警察局の警察署(刑警総隊、第一分局、大同分局など)として用いられてきました。
2012年台北市政府警察局大同分局が東側の隣接地に落成した新庁舎に移転した後、この建物は台北市政府警察局と同文化局による修復作業のうえ「台湾新文化運動紀念館」として保存・活用されることになりました。
戦後に増築された3階部分を撤去し、竣工当時の美しい姿に復元されたかつての台北北警察署は、2018年に「台湾新文化運動紀念館」としてオープン。
地元の人々や観光客に、大稲埕の街で花開いた新文化運動と警察署の歴史を伝えています。

「台湾新文化運動紀念館」

館内には台湾新文化運動の資料も充実していますが、警察時代の留置場や取調室、水牢もそのまま保存されており、蔡徳本氏の「台湾のいもっ子」に登場するような扇形の拘留室を見学できる貴重な施設となっています。

大稲埕に関する展示
扇形拘留室の展示

■3.蒋渭水紀念公園(旧錦西公園)(台北市大同区錦西街51號)

最後に紹介するのは、台湾新文化運動紀念館から錦西街を東に進んだところにある「蒋渭水紀念公園」
もともとは道路名に因んで「錦西公園」という名称でしたが、蒋渭水医師没後75周年の2006年に当時の馬英九台北市長が、蒋渭水医師の「抗日精神」を顕彰するため現名称に改めています。
「蒋渭水紀念公園」の名称が定められてから、園内には「大安醫院」をモチーフにした記念碑蒋渭水医師の銅像台湾文化協会及び台湾民衆党の構成員の氏名を刻んだ石碑などが設けられました。

「蒋渭水紀念公園」入口
「蒋渭水紀念碑」
蒋渭水医師の銅像
(左)「台湾民衆党党員紀念碑」(右)「台湾文化協会会員紀念碑」

台北市文化局としてはこの蒋渭水紀念公園のほか、天水路沿いにある台湾民衆党本部跡台湾文化協会の設立大会が開かれた私立天主教静修女子中学延平北路沿いの大安醫院など大稲埕一帯に散在する蒋渭水医師ゆかりのスポット観光コース化することも視野に入れているそうです。
余談ですが、蒋渭水医師の出身地は宜蘭県。2006年に全通した台北・南港JCTと宜蘭県・蘇澳ICを結ぶ高速道路「国道5号」には「蒋渭水高速公路」の愛称が付けられています。

◆おわりに

古くから台北の経済・文化の中心地として栄えた大稲埕エリアには、台湾新文化運動ゆかりの史跡がこの他にもいくつか存在しています。
大稲埕エリアから台湾全土に広がった台湾新文化運動、そして台湾民衆党、台湾地方自治連盟といった団体の活動は、今日の台湾社会に根付いたアジアでもトップレベルと言える民主主義の源流となったと評価されることもあり、それに関連する形で台湾新文化運動ゆかりの史跡を掘り起こす動きもあちこちで生まれているといいます。
1920年代初頭、日本の内地で花開いた大正デモクラシーに刺激される形で、台湾のインテリ層もまた新文化運動を通して文化的啓蒙を進め、自由主義や民主主義、台湾人のアイデンティティを模索したわけですが、昭和の時代に入り、こうした活動は軍部の台頭や戦時体制の強化を前に影をひそめることになりました。
そして日本の敗戦後、中華民国による統治が始まって間もない時期に発生した二・二八事件では、台湾文化協会で西洋史講座を受け持った林茂生哲学博士(59歳)や蒋渭水医師の姪・蒋巧雲氏(17歳)など、台湾新文化運動に縁のある人物も数多く犠牲になっています。
今回、台湾新文化活動の歩みに目を通すなかで、現代の私たちが一見当たり前に享受できているかのように見える民主主義や言論の自由、平和は、実は数多くの先人の弛まぬ努力や理不尽な犠牲のうえに成り立っているものであることを改めて実感した次第です。
最後になりましたが、私たち一人ひとりが、こうした民主主義や言論の自由、平和を次の世代のために大切に守っていけることを願って、結びに代えさせていただきます


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