裁量なし、事務と経費の負担あり?それは「分担」でしょうか。
今日から、「給付付き税額控除」をめぐる国と地方の協議の場が始まりました。公開されている資料と報道をもとに、考えたことを投稿します。
これまで私が発信してきたのは、地方自治体の負担の重さです。国が決めて、事務負担は地方。この歪んだ関係性のまま、新たな事務負担が始まることへの懸念を発信し続けてきました。
今回の協議を見て、一歩進んだと感じた点と、そして新たに生まれた懸念があります。
国が担うと明記された部分は、前進です
「国でコールセンターを設置」「給付支援サービスを国で一括契約して提供」など、全国一律のインフラ整備を国で対応しようとしている点は評価できます。
特に、受給意思の確認負担を軽くするため、「公金受取口座を登録している場合は、申請なしで給付を行えるよう法制上の措置を検討」していることも重要です。芦屋市では、これまでは過去に給付金を振込された口座に支給を希望する場合でも、いったん支給決定通知書を市から発送していました。通知内容に変更がない場合は、申請手続きは不要という運用です。この部分がどのように変わるのか、今後の法改正に期待したいと思います。
ただ、地方の負担が大きいことも、明らかになってきました。
事務は自治体が担う前提になっています
事務負担については、「住民とのインターフェイスの部分は地方自治体を中心に対応」とされています。ただ、示された執行イメージを見ると、窓口業務だけではありません。対象者の抽出も、給付額の算定も、申請の審査も、振込も、市町村の事務となっています。実際の給付事務は、ほぼ全て地方自治体が担う前提です。

今年4月のデジタル庁の資料(第4回社会保障国民会議有識者会議(令和8年4月21日)資料3)では、「簡素な要件で限定された対象者への給付であれば、(国で給付する場合の)台帳作成及び支給方法などのシステム上の課題は、2-3年後には解決可能か。」とありました。「国が直接給付をする場合は実現に相当の期間を要する」との今回の資料では、後退していると言わざるを得ません。
地方自治体の事務は、既にいっぱいいっぱいの状況です。
行革の動きもあり、職員数は30年前に比べると大きく減っています。一方で、行政のニーズは多様化・複雑化しており、仕事はむしろ増えています。「公務員の仕事は楽」という状況ではなく、採用試験の倍率も全国的に下がっている状況です。人口減少が進む中、ますます人材不足は深刻化するでしょう。
だからこそ、国が担える分野は国が担う。地方は、地方でなければできない仕事に専念する。行政の安定的な事務を守るためにも、その体制を整えるべきです。
これまで私が発信してきた通り、「国がいつから給付を担うかをまず決める。市区町村が暫定的に担うのはそれまでの間」とできないでしょうか。
地方の費用負担まで議論されています
これまでの給付事務では、事務に従事した正規職員の人件費は国の負担ではなく、自治体の負担でした。
さらに今回示されたのは、給付そのものの財政負担も「国と地方で分担したい」という考え方です。これには、強く強く反対します。「インターフェイスを担ってほしい」どころか、給付そのものの費用まで負担を求める。さすがに筋が通らないのではないでしょうか。
全国の自治体は、既にいっぱいいっぱいの状態で予算編成を行っています。そこに直接手を入れ、多額の財政負担を一方的に決められてしまうということです。諦めざるを得ない政策もあるでしょう。
これは、半強制的に自治体の政策の優先順位を国が決めることに他なりません。
しかも今回の事務の特徴は、地方に一切の裁量がないことです。
給付額も対象となる所得の水準も、国が全国一律に決める制度によって、地方自治体の財政負担が一方的に決められることになります。裁量のない地方自治体に負担だけを求めることは、分担とは呼べないのではないでしょうか。
「いくら得か」の先を話しませんか
そもそも、この間の議論に私が感じている違和感は、「あなたはいくら得するか」の議論ばかりが目立っていることです。もちろん、物価高騰の中、暮らしをどのように支えるかは重要なテーマです。
一方で、財政悪化への懸念が高まり円安が進めば、いま生活が苦しい方をさらに苦しめるかもしれない。そこまで向き合った上での議論が必要ではないでしょうか。
どこにも打ち出の小槌はありません。国も地方も、限られた財源の中でやりくりしながら、様々な行政サービスを行っています。
負担減を求める今の議論の根底には、必死に納めた税金がきちんと活かされているのか、国民に信頼されていないことがあるのだろうと考えます。税金の使い道を、私たち自治体も国も可能な限り分かりやすく示すことで、国民の信頼を取り戻す必要があるのではないでしょうか。我々も発信に努めます。
持続可能な地方を創るために、どう考えますか
この問題は、もはや給付事務を国で担うかどうか、に留まらないと考えます。地方行政をどのように持続可能にするか、そのためにどのように国と地方で役割分担をするかが問われているのではないでしょうか。
先日、国会議員の皆さまに問題提起したのもまさにこのことです。
これまでの投稿へ大きな反響を寄せてくださった皆さま、ありがとうございました。なかなか注目されにくい行政事務のことだからこそ、継続的な発信が必要だと考えています。ぜひこれからも、あなたの考えを聴かせてください。
これからも、市長という立場でできる発信を続けます。
*関連する過去の投稿です
【地方自治体は、国の下請けなんでしょうか】
— 高島りょうすけ|芦屋市長 (@TakashimaR_2023) June 14, 2025
様々な党から国民に給付金を支給する案が浮上しています。物価高騰対策をしたいのは理解しますが、どうか、やり方を考えていただきたいです。
5年前の一律10万円の給付金、覚えていらっしゃいますか。申請は、市区町村にしたはずです。… pic.twitter.com/Ot88VepzMq
【全国の地方公務員の皆さまへ。声を上げなければ、また市に事務負担が降りかかります】#芦屋市長 #給付付き税額控除
— 高島りょうすけ|芦屋市長 (@TakashimaR_2023) July 1, 2026
給付付き税額控除の事務負担。今回も給付は市区町村になりそうです。なぜでしょうか。… https://t.co/SWq80Skr4b
