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給付付き税額控除は、市の給付?結局、市は、国の下請けなんでしょうか。

この間、議論が続いてきた給付付き税額控除の制度設計。まずは給付だけにしようという案が出ています。

税額控除をせずに給付のみで良いのか、消費税の一時的な引き下げが本当に良いのか、議論は様々あると思うのですが、今日は地方自治体の長として、1点だけ。

どうして、今回も給付は市区町村、なのでしょうか
「国がいつから給付を担うかをまず決める。市区町村が暫定的に担うのはそれまでの間」とできないのでしょうか。

この話をするのは1年ぶりです。
昨年の参議院選挙前、様々な党が「国民に給付金を支給する」案を掲げました。物価高騰対策が大切なのはよく分かります。私が当時声を上げたのは、事務は地方自治体任せだったからです。


そもそも、いま検討されている案は?

6/26に開催された「社会保障国民会議 給付付き税額控除等に関する実務者会議(第17回)」で、中間とりまとめ(案)が公開されています。

目的は、大きく分けて2つ。

  • 中低所得の現役勤労者の税・社会保険料負担を軽くし、手取りを増やす

  • いわゆる「年収の壁」による働き控えを緩和し、就労を促進する

この目的の実現のため、令和11年度から本格導入される「給付付き税額控除」のイメージは以下の通りです。少し複雑ですが、所得に応じて支援額が変わるイメージです。

出典:第12回給付付き税額控除等に関する実務者会議(令和8年5月27日)資料2

そして、令和11年度の本格導入を前に、つなぎ措置として、令和9年度から2年間、「飲食料品の消費税率1%への引き下げ」「簡易版の給付制度の先行導入」が示されています。

給付するのは誰の仕事?

今回の議論では、まずは「税控除」ではなく「給付」のみとする方向性になっています。
となると、問題は、誰が「給付」の作業をするのか。今のところ、実際の給付作業は地方自治体が実施する方向性で考えられているようです。

執行に係る主体については、国か地方自治体かの二者択一ではなく、国と地方が協力して運営していくという基本的な考え方の下、役割分担をしていく方向で検討を行う。システム等の全国一律とした方が効率的なインフラの整備は国が対応することを基本とする一方、住民とのインターフェイスの部分は地方自治体を中心に対応する。

出典:第12回給付付き税額控除等に関する実務者会議(令和8年5月27日)資料2

市の業務に影響が出たばかりか、経費も全額出ませんでした

ちなみに、これまでの給付金業務では、苦情や問い合わせが殺到し、市の業務に影響が出ています。例えば、令和6年度の住民税非課税世帯を対象とした給付金(約11,000世帯対象)では、4か月で1,221件もの問い合わせがありました。
そればかりか、市の業務にかかった経費が全額国から支給されることもありませんでした。本来、市民の暮らしに最も身近な存在である市役所の職員にしかできない、目の前の市民一人ひとりに寄り添い、支える仕事に影響が及んでいました

今回はコールセンターを国で設置するなど、一定の事務負担の軽減策は考えているようですが、それでも給付の実務は地方自治体とのこと。地方自治体の仕事がまた増えることには変わりありません。
マイナンバーに公金受取口座を紐づける制度は進んでいますが、全員が紐づけているわけではありません。あくまで全員給付にこだわるのなら、むしろ手間が増えます。二重支払いのおそれがあるからです。

国でやるなら最低2-3年かかる!?

この議論でよく指摘されるのが、「国で給付するには時間がかかる」という点です。その通りだと思います。実際、現在、国には給付事務のための仕組みはありません。すぐに事務を担えるわけではないことは理解します。

一方で、4/21に開催された社会保障国民会議有識者会議(第4回)では、興味深い資料がデジタル庁から提示されました。

簡素な要件で限定された対象者への給付であれば、台帳作成及び支給方法などのシステム上の課題は、2-3年後には解決可能か

出典:第4回社会保障国民会議有識者会議(令和8年4月21日)資料3

これまでは、いつまで経っても国がやることは難しい、という指摘が大半でした。今回、デジタル庁から公式に「2-3年後には解決可能か」と示されたこと、大きな一歩だと思います。「簡素な要件で限定された対象者への給付であれば」という条件付きですが、逆に言うと、国民一律に支給する給付金の事務であれば、近い将来に問題なく国で担うことが可能ということだと捉えました。

出典:第4回社会保障国民会議有識者会議(令和8年4月21日)資料3

「国がいつから給付を担うかをまず決める。市区町村が暫定的に担うのはそれまでの間」とできないでしょうか

もちろん、国が担うことになったとしても、市区町村が何もしなくて良いわけではないでしょう。DV支援措置の対象者など、国ではなく市区町村の方が丁寧にアプローチできる方もいらっしゃいます。

一方で、国が給付を行うために解決すべき事項がリストアップされた以上、これをどのように解決すれば良いか、前向きに議論すべきだと考えます
開始時に市区町村が事務を担うとしても、少なくとも「国がいつから給付を担うか」はっきり決めた上で、「それまでの暫定的な措置として市区町村が担う」と定めるべきではないでしょうか。

ゴールが決まっているのであれば、市区町村としても業務増には何とか対応できるかもしれません。一方で、今後ずっと業務が増えます、となると、さすがに今行っている業務に影響は避けられないと考えます。
地方自治体の業務は、既にいっぱいいっぱいの状況だからです。

現在、国と地方の役割分担、議論中です

実は、様々な事務について、国がやるか?地方がやるか?という大きな議論は、国も進めている最中です。

現在、国で開かれている「第34次地方制度調査会」では、「国・都道府県・市町村間の役割分担」について議論が行われています。これまでの「国の権限を地方に移す」方向性だけでなく、「国で地方の事務を引き取る」方向性の議論も進められていることが特徴です。

なぜいま、この議論か。それは、地方自治体によっては、事務が回らない状況になっているからです。
行革の動きもあり、職員数は30年前に比べると大きく減っています。一方で、行政のニーズは多様化・複雑化しており、仕事はむしろ増えています。「公務員の仕事は楽」という状況ではなく、採用試験の倍率も全国的に下がっている状況です。人口減少が進む中、ますます人材不足は深刻化するでしょう。

だからこそ、これからも行政の安定的な事務を守るためにも、国が担える分野は国が担い、地方は地方でなければできない事務に専念できる体制を整えるべきです。

全国市長会で発言しました

6月の全国市長会の分科会では、この議論を行っている「第34次地方制度調査会」について、担当の方から説明がありました。
せっかくの機会だったので、私からも発言しました(以下、大意)。

国と地方の役割分担を見直すべきだという理念には賛同します。ただ、市町村が既に担っている業務をどのように国や都道府県に移行するか、という観点ばかりなのが気になります。重要なのは、新しい事務を安易に地方へ振らないことではないでしょうか。例えば、「給付付き税額控除」の給付事務です。諸々の理由で当面は市町村が担わざるを得ないとしても、将来的には国が担う方向性まで明確にした上で制度設計をしていただきたいです。

地方自治体は、国の下請けではないはずです
国でやるべきことと、地方でやるべきこと。地方の現状を理解した上で、整理すべきだと考えます。

あなたはどう考えますか

コロナ禍から6年が経ちました。
この間、自治体は毎年のように、給付金の支給業務を繰り返してきました。そしてついに、恒常的な給付金の支給業務が国から担わされようとしています。

結局のところ、コロナ禍からの6年間に自動で給付するシステムを国で整備できていないことが全てだと思います。そろそろ、国で担おうという方向性を出すべきだと考えます。

これまでの投稿へ大きな反響を寄せてくださった皆さま、ありがとうございました。デジタル庁から「2-3年」という値が出てきたことは、大きな一歩だと思います。だからこそぜひ、これからもあなたの考えを聴かせてください。
これからも、市長という立場でできる発信を続けます。

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