見出し画像

NHKが「認めた」軍艦島映像の謎——たった2カットの映像が、なぜ国際問題にまで育ってしまったのか

2024年12月、産経新聞が報じた一本のニュースが、静かに、しかし確実に波紋を広げています。長崎・軍艦島(端島)を舞台にしたNHKの往年の番組「緑なき島」の坑内映像について、NHK自身が「端島炭坑内で撮影されたという確認が得られていない」と、東京簡易裁判所の調停の場で文書で認めたというのです。

「NHKがついに嘘を認めた」「これで韓国の主張は崩れる」——そんな声がSNSにあふれる一方で、この件はまったく報じていないメディアも少なくありません。

この温度差こそが、実はこの問題のいちばん面白いところだと思います。今日は「NHKは悪、韓国は嘘」という単純な構図に飛びつく前に、いったん立ち止まって、何が事実で、何が推測で、何がまだわからないままなのかを一緒に整理してみたいと思います。あわせて、こうした話にどうしても付いて回る「陰謀論的な見方」についても、その魅力と危うさの両方を考えてみます。

何が起きたのか——まずは事実だけを押さえる

1955年、NHKは「緑なき島」という短編映画を制作・放送しました。ふんどし姿の作業員が、狭い坑道で裸電球を頼りに人力で石炭を運ぶ——そんな過酷な労働風景が描かれています。この映像は長年、「端島炭鉱内の実際の様子」として紹介され続けてきました。

ところが元島民の有志が、令和2年(2020年)ごろから「あの坑内映像はおかしい」と声を上げ始めます。当時の保安規定や、実際に働いていた島民たちの証言と映像の様子が食い違っている、というのです。全員がヘッドランプを装着していない点、裸電球を使っている点などが、実際の端島の坑内作業の記録と一致しないと指摘されました。

NHK側は当初、OBや専門家による内部調査を実施し、「端島炭坑外であるとの結論には至らない」という、なんとも歯切れの悪い報告書を返しています。要するに「違うとは言い切れないが、そうだとも断言しない」という、判断を先送りするような回答でした。元島民側はNHK会長への面会要求やBPO(放送倫理・番組向上機構)への申し立てを行いますが、いずれも実を結ばず、最終的に東京簡易裁判所への調停に踏み切ります。そして2024年12月17日、調停が成立し、NHKは文書で「端島炭坑内で撮影されたものであるという確認が得られていない」と認めました。

ここまでは、複数の報道で確認できる事実です。4年越しの申し立てに対して、公共放送が正式な文書という形で「確認が取れない」と認めたこと自体は、報道機関としての検証の甘さを問われても仕方のない話だと思います。

なぜこの映像がここまで重い意味を持つのか

ここから先は

2,848字
この記事のみ ¥ 600
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

今の世の中に「なんか違和感…」を感じているなら、それは「考える力を取り戻すサイン」です。\ 学校や社…

スタンダードプラン・第2期

¥1,200 / 月

悩み相談 + スタンダードプラン

¥3,000 / 月

応援よろしくお願いします!