いつもの人がいる朝。
休日の朝、よく行くパン屋がある。
小さな木の扉を開けると、
ちりん、とベルが鳴る。
焼きたてのパンの匂いがする。
木の棚には、
丸いパンや、
細長いパンが並んでいる。
窓から入る朝の光が、
テーブルの上に落ちている。
私はパンを選び、
いつもの席に座る。
少し離れた席に、
今日も二人がいた。
年配の男性と女性。
夫婦なのかもしれない。
でも、
私は知らない。
名前も知らない。
どこから来て、
どこへ帰っていく人なのかも知らない。
ただ、
この店で何度も見かけている。
男性は、
ゆっくりパンを食べている。
女性は、
窓の外を見ている。
ときどき、
二人の間で言葉が交わされる。
小さな声なので、
何を話しているのかは聞こえない。
紙袋が、
かさりと鳴った。
入口のベルが、
また鳴った。
私はパンをひと口食べる。
まだ少し、
温かかった。
ある朝。
パン屋から少し離れた道を歩いていた。
向こうから、
見覚えのある二人が歩いてくる。
あれ。
どこかで見たことがある。
すれ違ってから、
少しだけ振り返る。
ああ。
パン屋さんだ。
いつもいる、
あの二人だった。
いつの間にか、
「あの人たち」になっていた。
次にパン屋へ行った朝。
窓際の席を見る。
二人がいた。
私は、
いつもの席に座った。
パンをひと口食べる。
窓の外で、
風に揺れた葉が一枚、
ゆっくり落ちていった。
入口のベルが鳴る。
ちりん。
焼きたてのパンの匂いがする。
今日も、
いつもの朝だった。
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よければ聴いてみてください😊(約3分25秒)
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