電線は、空のベンチだった。
朝、窓の外を見ると、
一本の電線に、
四羽のスズメが並んでいた。
チュン。
短く鳴く。
少し離れた一羽が、
小さく返事をする。
それきり、
また静かになった。
朝の風が吹く。
ふくらんだ羽が、
やわらかく揺れる。
一羽は、
羽づくろいを始めた。
くちばしが、
背中の羽を整えていく。
しばらくして、
一羽が飛び立った。
残ったスズメは、
首を右へ。
左へ。
また右へ。
また左へ。
数秒の間に、
何度も何度も。
風が吹けば、
小さな体は揺れる。
羽づくろいも続ける。
それでも、
細い両足だけは、
電線をしっかりつかんだままだった。
長年、
スズメを見てきたつもりだった。
でも、
あんなに何度も首を動かしていたことも、
両足だけは、
ずっと動かなかったことも、
私は知らなかった。
やがて、
もう一羽が飛び立つ。
また一羽。
最後の一羽も、
空へ溶けるように飛んでいった。
朝の空には、
細い電線だけが残る。
忙しなく動いていた首も、
何度も揺れていた羽も。
それでも、
両足だけは、
ずっと動かなかった。
私たちも、
同じなのかもしれない。
気持ちが揺れても、
考えが定まらなくても、
それでも、
動かさずにいられるものが、
どこかにある。
それさえあれば、
あとは、
揺れていていい。
電線は、
空のベンチだった。
この文章を元に、静かなアコースティックの楽曲を作ってみました。
歌として聴くことで、感情や情景がよりまっすぐ伝わる気がします。
家事や洗濯、ハミガキの合間にでも、よければ聴いてみてください😊
🎵 『電線は、空のベンチだった』
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財布の中で折りたたまれていた一枚のレシート。
何気なく受け取っていたその紙は、
「今日を生きた証」でもありました。
身近なものの見え方が少し変わる、そんな一篇です。🌿
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