死を目前にした友からの誘い
少し前まで熱波で苦しんでいた北ドイツも今は普段通りの寒い夏に戻っています。今日は特に風が強くて、空には一面に重い灰色の雲だらけ。時に思い出したように小雨がパラパラと降る、そんな月曜日。
昨夜はドイツ君がいなかったので夕食後に「一人映画時間」と名付けて「ドイツ君は興味がないだろうけれど、僕は観たい映画」を探して楽しく鑑賞会をしました。
ドイツ君はあんまり人間ドラマには興味がないっぽいんですよね。けど、僕はそのジャンルが好きなのでこの日を待っていたんです。だって数日前にネットフリックスに「これ見たい!」と思っていたのが見られるようになったから。
その映画というのが The Room Next Door(邦題・ザ・ルーム・ネクスト・ドア)。
何に心をひかれたかと言うと、キャスト。だって、ジュリアン・ムーアとティルダ・スウィントンの二人だったら絶対にそれだけで良さそうって思っちゃいません?
ジュリアンムーアは「めぐりあう時間たち」でその存在を知り、その後、ゲイの男性と結婚をした女性を描いた「エデンより彼方に」でもっと好きになり、「シングルマン」「アリスのままで」などでの演技も素晴らしく好きなんですよね。知的で繊細な雰囲気なのだけれでもどこかに親しみやすさがあるのが凄く魅力的で、そこに惹かれています。
ティルダ・スウィントンを最初に映画で見たのはレオナルド・ディカプリオ主演の「ザ・ビーチ」でミステリアスな存在として異彩を放っていた姿。けれど僕の記憶ではそれをケイト・ブランシェットと認識していて数年前にその間違いに気が付きました。この2人ってどこか冷徹な感じがとても素敵で魅力的という共通点、感じませんか?それともみんなはそんな間違いはしないのかな?
そんな彼女と独特な存在感に気が付かされたのが「ドクター・ストレンジ」での「エンシェント・ワン」の役。これはかなり社会的な問題にもなった配役でしたよね。もともと「エンシェント・ワン」はマーベルコミックに登場するキャラクターで、男性でアジア人なんですよね。ただ、この映画版では白人の女性に置き換えられた。なので「ホワイトウォッシュだ!」と言われましたが、僕は彼女のミステリアスな雰囲気にあっていてとても良かったと思います。
その存在感が凄かったのでこの女優の名前を調べてみたら彼女の名前がティルダ・スウィントンと分かり、彼女の出演作を見てみると、ナルニアの白い魔女役だったり、キアヌリーブス主演のコンスタンティンのガブリエル役だったりと、何と個性的な役ばっかり。
そんな二人が共演して、しかも話の内容は死をまじかにしたマーサ(ティルダ・スウィントン)が最近は交流が途絶えていたけれどマーサの病気を知って交友が復活したイングリッド(ジュリアン・ムーア)に自分が安楽死するために服毒死をする際にそばにいてくれという誘いを持ちかけるというもの。なんと重苦しい内容。けれど、僕はその重さが好きだったりするんですよね。
予告版をみてみたら、美しいさの塊というよ鵜な映像や台詞ばっかり。静かに、けれど地響きが常にどこかで微かに響いているような不安定感、そしてこの二人の不思議な関係性。(ぞわぞわ)または(ざわざわ)という気持ちが全身を走る感じがして「これは見なきゃ!」って思っていたんです。
そして昨日見始めて気が付いたのがこの映画の監督があのスペイン人のペドロ・アルモドバルであるという事。このThe Room Next Doorが彼にとっての初めての前編英語の長編映画なのだそう。まだ僕が日本に住んでいた時に彼の作品である「オール・アバウト・マイ・マザー」を見に行って、そのポスターを自分の寝室に貼っていたのをふと思い出しました。
映画は本当に静かに進んでいきます。そして殆どにおいて出て来る人はこの主人公2人だけ。語り合う事もあれば何もしないでただ寄り添っていることもある。仲良いこともあれば、仲たがいしそうになる時もある。何か物凄くショッキングなことが起きることもない。静寂の中に生きているふぃたりの人間が映し出されている。そしてそれが美しくも儚げでどこかで心がきしんでいる感じがするそんな映画。
そしてそんな二人を包んでいるのがニューヨークの大都会であったり、死ぬ場所として選んだ田舎の素敵な家やそこにある自然。これらの環境もこの映画には必要不可欠な存在としてそこに映し出されています。鳥の声、ふる雪、太陽の日差しとそしてその影。
また色の見せ方もとても素敵なんですよ。特に田舎の家に引っ越してからのカラーバランスの美しさはまるで美術雑誌かファッション誌の様。そこにもとても惹かれます。
もちろん、主演の二人の演技は何も言う事がないくらいに素晴らしく、こちらの気持ちに寄り添っているなと思えば、気が付くともう一人の気持ちになっている。どちらの気持ちも同時に分かるし、自分がその二人の隣に存在してあの時間を一緒に過ごしているようなそんな錯覚を覚えさせてくれます。
静かにゆったりと湖の中に沈んでいく、そんなイメージがする映画です。
もしよろしければ見てみてくださいね。
