プロローグ:迷宮
本サイトで翻訳してまいりました、チャールズ・アイゼンスタイン著『気候:新たなる物語』が、野草社/新泉社から2025年12月10日に発売されることとなりました。各書店サイトより注文を承っております。
何人もの編集者の手を経て、いっそう読みやすく一貫性の向上した本になりました。表紙は、来るべき世界を予感させる美しく清々しいものとなりました。翻訳着手から5年の歳月を要してしまいましたが、チャールズ・アイゼンスタインの素晴らしい文章が、より多くの皆さまの手に届くことを願っております。
昔むかし、一人の男が迷宮に落ちていました。彼がどうしてここへ来てしまったのか、謎を解くためなのか、それとも宝物を探すためなのか、それは別の話なのですが、ともかく今は、彼がなぜ、どうやってここへ来たかは忘れていました。彼が手放すまいと握りしめている記憶、陽の降り注ぐ場所のかすかな記憶、あるいはそれを覚えているという記憶が、この迷宮は現実の全てではないと彼に語りかけます。どこかを通って彼はそこにやって来たのだから、出口はあるはずです。最近、中にいるのがだんだん苦しくなってきました。迷宮はどんどん暑くなり、早く出口を見つけないと死んでしまうのは分かっています。以前なら胸躍る探検だったものが、恐ろしい罠へと変わってしまいました。
(原文リンク)https://charleseisenstein.org/books/climate-a-new-story/eng/prologue/
著者:チャールズ・アイゼンスタイン
翻訳:酒井泰幸
