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「三層の一貫性」を掘り下げる #125

保険会社の経営設計に見る「三層の一貫性」

― 言葉と構造がズレると何が起きるか

前回の投稿で、戦略・ビジネスモデル・組織設計の三層構造について整理しました。

今回は、その理論を僕の日常のフィールドである保険会社のケースに当てはめて考えてみます。

ポイントは一つです。

三層が一致しているかどうか

なお、本稿で取り上げたケースは、一般的に想定される事例をもとに構成したものであり、特定の実在する保険会社とは一切関係ありません。

ケース①:「顧客本位」を掲げたが、構造は変わらなかった会社

ある保険会社が、「顧客本位」「長期的な安心の提供」を戦略に掲げました。

方向性としては、間違っていないと思います。

しかし、実態はどうだったか。

・評価制度は新契約件数重視
・代理店手数料は短期型
・商品設計は単発販売前提
・事故対応はコスト部門扱い

つまり、

戦略は「長期関係」
ビジネスモデルは「単発売切型」
組織設計は「短期成果主義」

三層がズレています。

その結果、現場では何が起きたか。

営業は契約を優先し、更新前の接点は弱く、事故対応はコスト圧力にさらされる

顧客本位は、言葉として残り、行動には落ちませんでした。

戦略が変わっても構造が変わらなければ、組織は必ず構造に従います。

ケース②:「地域密着」を本気で設計した会社

別の地方保険会社は、「地域で最も信頼される会社になる」という戦略を掲げました。

しかし、ここからが違いました。

まずビジネスモデルを変えました。

・特定地域に資源を集中
・代理店網を深耕
・事故対応拠点を強化
・地域データの蓄積を開始

さらに組織設計を変えました。

・事故対応品質をKPI化
・継続率を評価指標へ
・地域単位での責任体制明確化

戦略・ビジネスモデル・組織設計が一貫したのです。

その結果、何が起きたか。

営業は短期契約よりも関係維持を優先し、事故対応は「コスト」ではなく「信頼創出部門」になり、地域での評判が自然に積み上がっていきました。

三層が一致すると、組織は迷わなくなります。

ケース③:「予防型」へ舵を切ったが、利益モデルの設計が曖昧だった会社

最近増えているのが、予防・未然防止モデルへの転換です。

戦略としては魅力的です。

しかし、

・予防サービスは無料付帯
・収益化は未設計
・別部門のPoC扱い
・KPIは契約件数のまま

この状態では持続しません。

予防は戦略としては成立しますが、ビジネスモデルが未設計だと、やがて縮小します。

さらに組織設計が変わらなければ、営業は従来型の商品を優先します。

結果として、予防は「プロジェクト」で終わります。

ケース④:DXを構造設計まで落とした会社

DXも同じです。

単なるデジタル化ではなく、

・ダイレクトモデルを選択
・価格構造を再設計
・人員配置を再配分
・KPIを顧客接点データに連動

ここまで踏み込んだ会社は変わります。

一方で、DX部門を作っただけ、システムを導入しただけ、という会社は何も変わりません。

DXは技術の話ではなく、三層を貫く構造の話です。

保険会社の経営設計における本質

これまで保険会社のケースを見てきましたが、保険会社は、

・金融であり
・データ産業であり
・長期契約または長期継続ビジネスであり
・地域密着型でもある

という複雑な構造を持っています。

だからこそ、三層の不一致が起きやすい。

戦略だけ語る
モデルだけ変える
組織だけいじる

いずれも部分最適になります。

しかし三層が一致すると、組織は自律的に動きます。そして、迷いが減り、利益は安定します。

経営設計とは、三層の整合をどう取り続けるかを考えることです。

言葉と構造が一致しているか

保険会社の事例で示しましたが、この本質は業界固有の問題ではありません。

一方で、三層を一貫して設計している企業は多くありません。

経営とは部分最適の積み上げではなく、構造の整合を取り続ける営みです。

一貫性こそが、持続性を生む

これは、どの業界にも当てはまる原則だと思います。

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