戦略とビジネスモデルとの関係を考える #124
戦略が先か、ビジネスモデルが先か?
経営の設計において、まず整理すべきことがあります。
それは、戦略とビジネスモデルを同じレイヤーでは語らないことです。
両者は順番の問題ではなく、階層の問題だからです。
戦略は意思の層、ビジネスモデルは構造の層
この階層の違いを明確にしない限り、議論は迷走することになります。
僕の整理
まず前提を置きます。
・戦略=どこで勝つかという意思
・ビジネスモデル=事業を成立させる構造(誰に・何を・どのように+利益モデル)
戦略は「競争優位の設計思想」
ビジネスモデルは「収益が出る仕組み」
では、どちらが先か。
僕の答えはこうです。
抽象度が高いのは戦略
具体度が高いのがビジネスモデル
つまり、階層が違うんです。
ただし、現実は循環する
理屈で言えば、
① 戦略を決める
② それを実装するビジネスモデルを設計する
という流れが自然です。
しかし、実務はそんなに単純ではありません。
むしろ多くの場合は逆になります。
ケース①:モデルが先に存在する
スタートアップなど創業企業の多くは、
・面白い収益モデルを思いついた
・新しい価格構造を作った
・既存の利益源を破壊した
という「ビジネスモデルの発見」から始まります。
その後に、
「我々はどこで勝つ会社なのか」という戦略が明確になります。
つまり、
モデル → 戦略
という順番です。
ケース②:戦略転換がモデル変更を迫る
一方で、大企業や既存企業では逆が多くなります。
・地域集中に舵を切る
・データ活用型へ転換する
・顧客生涯価値を最大化する
という戦略が先に掲げられ、
その結果、
・収益構造を変える
・チャネルを変える
・商品・サービスを変える
というビジネスモデルの変更が起きることになります。
これは、
戦略 → モデル
の順番です。
では結論は?
僕はこう考えています。
戦略とビジネスモデルは、どちらが先かではなく、整合しているかが重要
順番よりも、「ズレ」が問題です。
・戦略だけ変えて、収益構造が変わらない
・ビジネスモデルだけいじって、競争優位が定まらない
ここに失敗の本質があります。
保険会社で考えると
例えば、「顧客生涯価値最大化」を戦略に掲げるなら、ストック型の収益型モデルに変わらなければ整合しません。
逆に、ダイレクト型の収益モデルを採用するなら、戦略は価格競争を前提に再設計する必要があります。
戦略とモデルは、車の両輪ではなく、
歯車の噛み合わせ
です。
どちらかが先というより、かみ合っていなければ成果は出ません。
もう一段抽象化すると
戦略は「意思」
ビジネスモデルは「構造」
意思なき構造は小手先になる。
構造なき意思は理念に終わる。
だから問いはこうなります。
どちらが先か?
ではなく
両者は一貫しているか?整合しているか?
つまり、経営とは、
意思と構造を一致させ続ける営み
ともいえます。
戦略→ビジネスモデル→組織設計の三層構造
一貫性のある戦略とビジネスモデルの実現は、それにフィットする組織設計が求められます。
ここで、戦略・ビジネスモデル・組織設計は、どう接続されるべきかを考えてみたいと思います。
経営を本気で設計するなら、少なくとも三層で考える必要があります。
第一層:戦略(意思の層)
繰り返しになりますが、戦略とは、
・どこで戦うのか
・何を選び、何を選ばないのか
・どの競争優位を取りに行くのか
という 意思決定の束です。
ここでは、まだ収益の獲得までは細かく設計しません。
あくまで、
競争に対する立ち位置の宣言
になります。
第二層:ビジネスモデル(構造の層)
これも繰り返しになりますが、ビジネスモデルは、
・誰に
・何を
・どのように
・どこで利益を得るか
という収益構造を含む事業設計 です。
戦略が抽象度の高い「方向」だとすれば、ビジネスモデルは具体度の高い「仕組み」です。
第三層:組織設計(実装の層)
最も軽視されがちなのが、この層です。
組織設計とは、
・KPI設計
・評価制度
・権限配分
・人材配置
・予算配分
のことです。
ビジネスモデルがストック型なのに、営業評価が新契約件数のフロー型だけであれば、組織は必ず旧モデル、つまり、ビジネスモデルの型に回帰します。
要するに、
組織設計は、ビジネスモデルの現実化装置
です。
三層がズレると何が起きるか
戦略が変わると、
「地域密着」「顧客本位」「DX推進」
など、競争優位性の方針が変わります。
しかし、
・利益モデルは旧来型
・KPIも旧来型
・人事評価も旧来型
これでは何も変わりません。
一方、ビジネスモデルが変わると、
新しい価格設計を導入する
新サービスを始める
しかし、
戦略が整理されていない
すると、
組織の中で意味づけが共有されず、摩擦が生まれます。
また、組織をいじると、
DX部門を作る
横断組織を作る
などの動きが生じます。
しかし、
戦略もビジネスモデルも変わらない
となると、
ここでも、期待する変化は起こりません。
これは最もよくある失敗です。
保険会社に当てはめると
例えば、
戦略:「顧客生涯価値最大化」
↓
ビジネスモデル:
・ライフサイクル型商品設計
・ストック型収益モデル
・事故対応を関係深化の中心に
↓
組織設計:
・評価指標をLTVベースへ
・更新率・継続率をKPIに
・事故対応部門を利益創出部門へ格上げ
ここまで一貫して初めて、戦略は現実になります。
最後に
戦略 → ビジネスモデル → 組織設計
これは順番の議論ではありません。
抽象から具体へ
意思から構造へ
構造から行動へ
という階層構造の話です。
三層が一致している企業は強いと思います。
三層がズレている企業は、どれだけ優秀でも成果は安定しません。
しかし現実には、この三層を俯瞰し、相互の関係性を理解しながら経営全体を設計できる人材は、決して多くありません。
だからこそ、これからの時代に問われるのは、
戦略を語る力だけではなく、構造を設計し、それを組織で回し切る力になります。
意思を構造に落とし、構造を組織で回すこと
これを実行できるかどうかが、企業の持続性を分けることになります。
まさに、経営設計とは、その覚悟の問題だと、僕は考えています。
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