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思春期の肥満と向き合う:将来の健康を守るために今できること

「部活やめても食欲は変わらない……」、「最近、体重が急に増えてきたけれど大丈夫かな?」そんな悩みを持つ中学生や高校生、そして保護者の方も多いのではないでしょうか。立川パークスクリニックにも、体重増加を気にして受診される中高生がしばしば受診されます。

実は今、世界中で10代(10〜19歳)の肥満が増えています。これは単なる「太り気味」という見た目の問題だけではありません。医学の世界では、肥満は将来の大きな病気につながる可能性があり、ケアが必要な「病気」としての側面があると考えられています。特にコロナ禍では、外出が減って運動不足になったり、スマホやゲームの時間が増えたりしたことで、肥満が進んでしまった人がたくさんいます。

今回は、JAMA pediatrics に掲載された総説をもとに、10代の皆さんの健康を守るためのヒントを分かりやすくお伝えします。

肥満が体に送っている「サイン」と将来のリスク

体重が増えすぎると、自分でも気づかないうちに体の中で「SOS」が出ていることがあります。

  • 糖尿病の予備軍: 血液中の砂糖(血糖値)が高くなり、将来「2型糖尿病」になるリスクが上がります。

  • 脂肪肝: お酒を飲まない子供でも、肝臓に脂肪が溜まってしまうことがあります。

  • 心臓や血管への負担: 若い頃の肥満は、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることがわかっています。

  • 睡眠時無呼吸: 寝ている間に呼吸が止まってしまい、昼間の強烈な眠気や、勉強への集中力低下を招きます。

また、見た目のサインとして注意したいのが、首のまわりや脇の下が黒ずんで見える「黒色表皮腫(こくしょくひょうひしゅ)」です。これは「体の中のインスリンがうまく働いていないよ!」という体からの警告灯かもしれません。さらに、肥満は本人の努力不足だけではなく、「家族の体質」も大きく関係しています。お父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんに糖尿病や心臓の病気がある場合、遺伝的に太りやすいリスクを共有していることがあります。決して「本人が悪い」だけではないのです。

なぜ太ってしまうのか?脳の「ブレーキ」のお話

肥満の原因を整理すると、大きく3つのポイントがあります。

  1. 食事の習慣: ジュースやコーラなどの「砂糖入り飲料」や、スナック菓子などの「加工食品」を毎日摂りすぎていませんか?

  2. 生活のスタイル: 1日6時間以上のスクリーンタイム(スマホやゲーム)は、運動不足の大きな原因になります。

  3. 脳の発達とストレス: 最新の研究では、ストレスを感じて食べてしまう「感情的摂食」は、脳の発達と関係があることがわかってきました。

人間の脳には、食欲をコントロールする「ブレーキ」の役割をする場所(前頭前野など)があります。しかし、ストレスで食べてしまうタイプの方は、この「ブレーキ」の成長がゆっくりであるため、自分では止めたいと思っていても、なかなか食欲を抑えられないことがあるのです。これは脳の仕組みの問題であり、あなたの意志が弱いせいだけではありません。

今日から始める生活改善

肥満の改善で最も大切なのは、生活習慣の土台作りです。以下の目標を参考にしてみましょう。

飲み物:ジュースをゼロにし、水やお茶を飲む

運動:1日60分、少し息が上がる程度の運動(散歩など)をする

スマホ・ゲーム:宿題以外での利用は1日2時間以内に抑える

食事の内容:野菜や果物、食物繊維を増やし、加工食品を減らす

ここで大切なポイントがあります。一人で頑張る必要はありません。 研究では、医師や管理栄養士、運動の専門家などと「3ヶ月以上の期間で、合計26時間以上」じっくり相談しながら進める「チーム・コーチング」が非常に効果的だとわかっています。私たちは皆さんの「健康のパートナー」として、オーダーメイドの治療を提供します。

最新の治療法:お薬の助けを借りるという選択肢

生活習慣を整えても変化が難しい場合、お薬という選択肢もあります。現在注目されているのは、お腹の中にある天然のホルモンに似せて作られた「GLP-1受容体作動薬(リラグルチドやセマグルチドなど)」です。これは脳に働きかけて「お腹がいっぱい」と感じやすくさせ、食欲を自然に抑えてくれる仕組みです。商品名ではトルリシティ®、オゼンピック®、ウゴービ®、リベルサス®などです。

アメリカでは、セマグルチド(ウゴービ®)は12歳以上の人の肥満治療に使われることが認められており、主に次のようなすごい効果が確認されています。

  • 体重や肥満度が大きく減る: 12歳以上の中高生が週に1回この薬の注射を約1年半(68週間)続けたところ、体重が平均して17.7kgも減少し、BMI(体重と身長のバランスを示す肥満度の数値)も16.7%下がったというデータがあります。最近のいろいろな治療法を比べた詳しい研究でも、セマグルチドはBMIを減らすのに一番効果が高いことがわかっています。

  • 体の中も健康になる: 体重が減るだけでなく、お腹まわりのサイズが小さくなったり、血糖値(血液中の糖分の量)や肝臓の働きといった、健康診断で引っかかりやすい数値が良くなったりする効果も確認されています。

  • 食事や運動の見直しと「セット」が絶対条件: とても重要なことですが、この薬は単独で使うよりも、お医者さんや専門家のアドバイスを受けながら、食事や運動などの「生活習慣」を見直すことと組み合わせて使ったときに最も大きな効果を発揮します。薬だけに頼ると、落としたくない筋肉まで落ちてしまうことがあるため、健康的に痩せるためには運動などを組み合わせることがとても大切です。

チルゼパチド(マンジャロ®、ゼップバウンド®)は、セマグルチドよりもさらに強力に体重を減らす効果が期待されている新しい薬で、現在も研究が進められています。しかし、今のところ子どもや中高生に対して「具体的に何キロ痩せたか」という詳しいデータは、まだありません。

残念ながら、日本では、これらの有効な薬剤をもちいた肥満治療は20歳以上の方だけが対象であり、青少年期の肥満には保険診療で用いることが出来ません。日本では「肥満は自己責任」という古い考え方の人が多く、最新の科学と乖離した肥満治療後進国なのです。

まとめ

セマグルチドなどの薬は体重を減らすのにとても強力なサポートをしてくれますが、魔法の薬というわけではありません。お薬をやめると体重が戻ってしまうこともあるため、継続的なケアが重要です。また、吐き気や下痢などの副作用が出ることもあるので、必ず医師の指導のもとで使用する必要があります。基本となる「健康的な食事と運動」をセットで行うことが、将来の健康を守るための鍵になります。

学校帰りに相談してみませんか?

肥満は一人で悩むものではなく、専門家と一緒に「解決していくもの」です。私たちは、あなたが将来ずっと健康で、自分らしく過ごせるように全力でサポートします。中学生までは小児科で、高校生以上は内科で治療が受けられます。少しでも不安があったら、まずは学校帰りにお話しに来てください。

あなたの「今」が、輝く「未来」につながるよう、一緒に一歩を踏み出しましょう!

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