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そこには桜が咲いていたんだ

あの頃。


そこには桜が並木のように何本か植わっていて、春の時期にはとてもきれいな様子を…膨らんでゆくつぼみから、開花、桜吹雪、桜の絨毯、同時にすぐに芽吹く新緑の季節まで…見ることができました。

ですがそこらに住んでいる人しか知らないような、道から入ったところの奥まった場所です。咲かない時期にはそれが桜だとは気付かないかもしれませんね。

ひっそりと、ですが鮮やかに。


まだあの桜、あるのかなぁ…





そこには2階建てのアパートのような建物があって…あの頃当時も、もう既に古くなってしまっていたような…簡易な造りの。
長屋のようになっていました。一階と二階が一世帯、それが薄い壁で仕切られて一棟の中に連なっているのです。

大きな大きな松がたくさんある松林の中。
でもその建物の周りは松よりも違う木のほうが多くて、他よりはあまり松ぼっくりは落ちていません。
周囲は空き地のような、野原…というか原っぱ、としか言いようのない空間に囲まれていました。



子供たちが遊ぶには自由で良い場所でした

背景はまだ周辺に点在して残っていた
元米軍ハウスらしき別のお宅


クリスマスツリーが大きくなってしまったような
円錐にとんがった木が多くあって

「アメさんがクリスマスツリーにしようと
してたんじゃないの??」
「いや、でもこの大きさ…もっと古いよな?」

などと言われていました

官舎なのです。自衛官たちとその家族が住んでいました。
外には桜があって、そちら側には彼らの車を停めるテントのような車庫が世帯分…より少し足りない位の数で連なっています。その向こうには、基地内とこちら基地外とを分ける外柵フェンス。すぐそこにありました。

航空自衛隊の基地のそばでした。

Wikipedia「芦屋基地」の項より


自衛隊という職は、実は転勤族で…日本全国に散らばっている基地から基地へと転々とする人も多いのです。その時々の年齢や職種にもよるのかもしれないですけれど。
出身もそれぞれ。遠方の人もいます。その「彼ら」の中には、浜松(静岡県)、松島(宮城県)のほうの出身の人もいたのを覚えています。

彼らがその官舎に住む期間は大抵数年、ごくわずかです。また、そこの基地に勤め続けるにしても家族が増えれば手狭になりますし…町内の別の場所に移り住む必要があるでしょう。
ですから私がそこで彼らと顔を合わせたのも、ごくわずかな期間です。

ですが…子供の頃生まれ育った場所というのは案外よく憶えているものですね。

そう…私、そこらの子供だったんですよ。

あの頃のそういった建物はもうないかもしれないけれど…

あの桜と、
…それからその建物…彼らの住まい…を挟んで反対側、世帯ごとに仕切られた、庭とも言えないような小さな庭…の先にあった大きめのマンホール。あれは残っているかもしれませんね。
マンホールが地面から少し上に出てしまっていて、台になっているんですよ。
そこにしゃがみこんで落ちついちゃっている小さな子供。

それが私です。



おじさんたちの話を聞くのが好きでした。
彼らは飛行場のある基地に勤める整備員や元パイロットで。

そんな子供に聞かせるつもりもなかったのでしょう、分かるとも思ってはいない話…そんな話を彼らが話しているのを、私は横で聞いていました。外で井戸端会議的に話していただけなのでしょうけれど。
そして、そんな時に横から(下から…)ふと質問すれば
「…ああそうか、こんな子供になんて説明すりゃいいんだ!」
とかなんとか言いながら、それでも。
できる限り分かるように、その時には分からなくてもいつか将来には分かるように…言葉を選んで教えてくれました。

おいちゃん達、お元気ですか。


私も大人になりました。
当時そんな頃に出会ったかっこいい大人たちの話をぽつりぽつり、しようと思います。

新シリーズ『Secret of Pandora's Box』。

テーマは「かっこいいとはこういうことさ」

(みんな大好き『紅の豚』より)


更新は本当にぽつりぽつりになっちゃったらごめんなさい。でもぽつりぽつり続けますんで…。

お付き合いどうぞよろしくお願いいたします。


2025年 春





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