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「ターゲットはたった一人」――広告も文章も、「紙一枚」思考整理で考える

「ターゲットを絞りましょう」
マーケティング本には必ず書かれている言葉です。

でも、いざ実行しようとすると意外と難しいものです。「30代男女」「都内在住」などの数字だけでは、心に刺さる言葉は生まれないからです。

私が紙に書くときに大切にしているのは、ターゲットを記号ではなく、血の通った一人の人間に置き換えることです。その人の顔が頭に浮かぶまで考えると、言葉は自然に具体的になり、ターゲットに伝わるようになります。

先日、駅に掲出する採用広告のプロジェクトで、あらためてこの考え方の大切さを実感しました。



1. 「誰でもいい」は、結局誰にも届かない

今回の広告は、求人サイトを熱心に見ている人ではなく、「まだ探していないけれど、良い縁があれば働きたい」とぼんやり考えている人に届けることが目的でした。

私の頭に浮かんだのは、職場で働くスタッフの佐藤さん(仮名)でした。年代、家族構成など、私が思い浮かべているターゲットにピッタリのスタッフです。佐藤さんが仕事探しになにを優先制定るのかについて、直接話を聞きました。

「うちで働こうを思ったきっかけはなんですか?」

少し照れた笑顔で佐藤さんは答えてくれました。

「大きな会社でちゃんとしてそうだな、という安心感ですね。あとは子どもの行事で休みが希望通り取れるかが不安でした」

佐藤さんが優先するのは、給与や華やかな仕事内容ではなく、「心理的な安全」と「生活との両立」だったのです。

私はその声を反映して、福利厚生を前面に出した案を作りました。これなら佐藤さんに届くはずだ、と確信しました。


2. 折衷案は、メッセージをぼかす

しかし会議では予想通りの展開が待っていました。

  • 「仕事を探す人はまず給与を見るんじゃないか?」(年配の役員)

  • 「女性に来てもらうなら福利厚生は外せない」(若手女性社員)

私は、ターゲットも説明していますが、会議室の上司たちの頭の中でイメージが、バラバラなのです。結果、給与も福利厚生も仕事内容も同じくらい詰め込んだ折衷案が完成したのでした。

全部を伝えようとすると、言葉は丸くなり、誰の心にも刺さらなくなります。誰にでも良い顔をする文章は、結局誰にも響かないのです。


3. 「紙一枚」思考整理でターゲットを明確にする

私は考えを整理するとき、必ず「紙一枚」を使います。
そして紙の端に小さな人の形を書き、その下に名前を添えます。今回なら「佐藤さん」と書くわけです。

名前を書くと、思考の具体性が変わります。服装や悩み、誰とどんな話をするのか、具体的な情景が浮かんできます。

  • このフォントを見て、彼女は安心できるか?

  • このキャッチコピーを読んで、「あ、私のことだ」と思ってくれるか?

「30代女性」という抽象的なターゲットだと出てこないアイデアも、佐藤さん一人に向けて書くと、自然と言葉が出てきます。実は彼女の抱える悩みは、同世代の多くの女性が共通して抱くものなのです。なので、一人に届ける文章は、結果として多数に届けるための最短距離になるのです。


4. 決断とは「選ばなかった人」に頭を下げること

管理職や経営者は、どうしても最大公約数を選びたくなります。角を立てず、皆の意見を丸めて安全な場所に着地したくなるのです。

しかし、成果を出すには、どこかで誰かを「捨てる勇気」が必要になります。ターゲットを絞るとは、それ以外の人に心の中で「今回はごめんなさい」と言うことかもしれません。

迷ったときは、ノートに書いた「人の形」に戻って欲しいのです。

「いま、あなたの頭の中には誰の顔が浮かんでいますか?」

人の形に名前を書き、情景を思い浮かべる。それだけで結論はシンプルになり、響く言葉になるのです。

最後に少しだけ触れると、ターゲットは男女や業種を問わず応用できます。ポイントは「一人の顔を思い浮かべる」こと。これが、言葉を届ける最短ルートになるのです。


結び

広告でも文章でも、マーケティングでも、届く言葉を作るコツは一つ。「たった一人」を想像すること

管理職、経営者、個人事業主の皆さんも、今日の「紙一枚」にその人の名前を書いてみてください。迷ったときは、いつでもその一人に戻ってみる。

それが強く、響く言葉を生む方法になります。


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