曼珠沙華の約束|毎週ショートショートnote
夕焼けに染まる土手は、血が流れたように真っ赤だった。
――曼珠沙華。
毎年、彼岸の頃になると、この燃えるような花たちが一斉に現れる。誰も世話をしているわけではないのに、彼らは決まって、私を待っているかのように咲き乱れる。
私はその群生の中に一人、立ち尽くしていた。風が吹くと、花弁がゆらゆらと揺れる。まるで、無数の小さな手が私を招いているように。
――おいで。
そんな声が、どこからか聞こえた気がした。幻聴だろうか。でも、その声は私の胸の奥に直接響いてくるようで、抗えない衝動に駆られた。
一歩、また一歩と、花の中へと足を踏み入れる。足元の土は柔らかく、そして温かい。それは生きているかのように脈打っていて、花の赤が私の視界を埋め尽くす。私は静かに目を閉じた。
次に目を開けた時、夕焼けは消え、夜の帳が降りていた。曼珠沙華の群生は自分自身が発光しているかのように、ぼんやりと赤く輝いている。その光の中で、私は自分が一人ではないことに気づいた。私を呼んだ「声」の主が、そこにいた。
彼は、花と同じ、血のような色の瞳で、私をじっと見つめていた。その瞳の奥には、遥か昔の約束が映っているようだった。
(了)
たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」に参加しています。
今週のお題は「曼殊沙華は恋をする」です。
最近、全てにおいてやる気が出ません。(特に仕事)
毎日毎日暑くて、もう本当に嫌です。
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