父のnote 12話
1998年 11月
修太へ
実は修太が少年野球を始めたことがきっかけで父さんも審判員の勉強を始めて、
1ヶ月前に試験に合格したんだ!
そして先週初めて少年野球の公式試合で審判してきたぞ!
父さんな、メチャクチャ楽しかった!
子ども達が皆んな一生懸命で、
一緒に試合をしている気分でこんなに楽しいとは思わなかったぞ
修太がきっかけを作ってくれたんだ。
本当にありがとう!
父さんはもっと勉強したくなったぞ!
さっきも修太と甲子園を見ながら
スコアの付け方やルールを勉強していたところだ。
しかも今年は地元が優勝しそうだな!
そして修太は覚えが早いな!
父さんには野球のルールが難し過ぎてまだまだ未熟だが、勉強してて物凄い楽しい!
まさか父さんが野球の勉強するなんて思ってもいなかったぞ。
しかも修太、野球のセンス凄いあるらいな!
父さんは修太がどんどん成長していくのが本当に嬉しい。
父さんは全くスポーツ出来なかったからな。
父さんも頑張って野球に詳しくなるからな。
でも時々、修太が大きくなっていくのに寂しさも感じるんだ。
この前までは、
「パパー!」
って駆け寄ってくれていたのに、
今は遅い時間まで野球の練習して1人で家に帰ってくるんだもんな。
もっと父親らしいことして上げられたらなと思う時も沢山ある。
仕事ばかりで全然家族と過ごして上げられないもんな。
でも父さんは修太や千秋、母さんを今より幸せにするためにもっと頑張るぞ!
そして今よりもっと大きい家に住んで、
家で野球の練習が出来るぐらいのお家を建ててやる!
約束だな!
修太も野球も勉強も頑張ろうな!
父さんももっと、修太にとって自慢になる父親になるからな。
いつも元気をくれてありがとう!
ところでこのnoteを読んでくれている修太は
前のページの内容はちゃんと見たか?
修太にはどんな『誇り』がある?
父さんと母さんはな、
修太や千秋が『誇り』だ。
親父が背中を押してくれて、東京で料理に出会い、
母さんと出会って修太と千秋が生まれた。
そして地元でお店を出すことが出来て、
沢山のお客さんが来てくれて、
最高の人生だ。
全てのことに感謝しかない。
そして2人がいてくれるから毎日楽しく仕事も出来るし、
元乃屋も繁盛していくんだ。
2店舗目を作るとしたらのお店の名前を、
『千修』という名前にするということも決めているんだ!
修太と千秋から取った名前だ。
元乃屋よりちょっと小綺麗な感じにしようと思っている。
2人のことを誇りに思って名前をつけるんだ。
名前もかっこいいだろ?
それが父さんの『生き方』だ。
修太がこのノートを読んでいる頃にはもう出来上がっている予定だな!
修太がシェフやってたりしてな!
違うな修太はプロ野球選手になってるか!
期待してるからな!
父さんより
夕方の元乃屋から
父さん、
俺も父さんのこと誇りに思うよ。
破れたページには父さんが初めて審判した時の話や、
2店舗目の名前を僕と妹の千秋の名前にする予定の話が書いてあった。
父さんがこのページを破ったのは、
自分が不甲斐なく思ってしまったんだろうな。
父さんもそんなことがあったけれど、
それでもいつも前向きだったんだ。
見習わないとな。
そして開けた引き出しの奥を良く見ると、
1冊のノート、
そして僕が小さい頃よく遊んでいた木彫りの蛙の人形と、
古いスコアブックが入っていた。
1冊のノートを取り出して見てみると、
『千秋へ』
と書かれていた。
そして『美代子へ』と『千秋へ』
の書かれた手紙があり、母さんと千秋の手紙も入っていた。
父さん、
ちゃんと母さんと千秋の2人の分も手紙書いていたんだ。
スコアブックを開くと懐かしい匂いがした。
古いスコアブックは僕が父さんと甲子園を見ながらスコアの付け方を練習してたその当時のスコアブックだった。
捲っていくと、最後のページに
「修太との思い出」
と書かれていた。
父さん、ありがとう。
僕はnoteと見つけたノート、2枚の手紙を持ち、
父さんの部屋を出た。
また雨が降っていた。
大事な日はいつも雨が降っている気がする。
優しい雨音が、
父さんの部屋を響いていていた。
