見出し画像

「もう、入院はしたくない」——3度目の手術と、一番つらかった入院の話

前回は、自分で気づいた左足の付け根のしこりから、3度目の転移がわかり、手術を決断するまでを書きました。

「最悪の場合、片足を切断することもある」。そう言われながらも、私は手術を選びました。今回は、その3度目の手術と、これまでで一番つらかった入院生活の話です。

この回は、3回の手術の中で一番つらく、私が初めて「もう入院はしたくない」と精神的にまいってしまった話です。


もはや安定の、入院前日連絡パターン

2026年2月。3度目の手術のため、入院することになりました。

そして今回も、おなじみの「入院日は前日までに連絡します」パターンです(笑)。もう3度目ですね。さすがに慣れてしまい、今回も主治医に一応、予定を確認して、あらかじめ備えておきました。

このあたりの立ち回りは、回数を重ねてようやく身についた知恵ですね。


入院から手術まで

入院後、万一大腿動脈を切除する場合の準備として、右足の大伏在静脈の血管の太さと位置などをあらかじめ検査し、マジックで結構長い範囲をマーキングされました。切除の可能性は低いとはいえ準備された事により、緊張感が高まりました。

手術当日、相変わらず手術室までの道のりは緊張します。その後の手術台からの麻酔までの流れもいつも通りで、やはり麻酔後気づけば手術は終わっていました。

今回の麻酔が覚めた時の受け答えは、1回目の手術同様まったく覚えていませんでした・・・。2回目の手術の時は多少記憶がありましたが、この麻酔から覚めた時の受け答えをハッキリ覚えてる方っているんでしょうか。


「大腿動脈は、切らずにすんだ」

手術前にいちばん不安だったのは、やはり「片足切断の可能性」がでてきてしまう「大腿動脈の切除」でした。

転移の進み具合によっては、大腿動脈まで切除しなければならず、その場合は最悪、片足を失う。そう告知されていました。

だから、手術後に「大腿動脈は切除していません」と聞けたときは、本当に、心の底から安心しました。

足の心配はなくなった。

まずはそのことに、ほっと胸をなでおろしました。——でも、ほっとしたのも束の間。ここから、これまでで一番つらい入院生活が始まりました。


つらかったこと① 動かない足と、ひどい浮腫

ひとつ目は、身体的なつらさです。

今回の手術は、左の鼠径部リンパ節の郭清に加えて、大腿静脈と内転筋の合併切除でした。

術後、まず足が動きませんでした。そして、浮腫(むくみ)がひどい。大腿静脈とリンパ節を切除しているので、浮腫が出ることは事前に聞いていて、頭では理解していました。

でも、実際のあの重だるさ、足全体が浮腫んでパンパンに張っている感覚は、想像以上でした。

見た目は右足の1.2倍程度で、当初説明されていたよりも全然細いのですが、とにかく張りと重だるさが半端なくつらかったです。

さらに、意外とつらかったのが「内転筋の切除」です。

内ももの筋肉を切っているので、足を動かそうとすると、ほかの筋肉や神経がつっぱって、ビリビリと痛みます。ちょっと体勢を変えるだけでも、痛みが走ります。

この2点のため早く離床して頑張るということができず。とにかく不自由でした。
これまでの入院の中で、一番動けず、一番痛い。それが、今回の術後でした。


つらかったこと② 寄り添ってくれない人

もうひとつは、精神的なつらさでした。

担当のレジデント(研修医)の方が、こちらの不安を、煽るような物言いをする人だったのです。

私はこれまで、お世話になった医療関係者には、ほとんど感謝しかありませんでした(……第3話に、当たりの強い放射線科の先生がいましたが、あの方も最後は親身になってくれました)。

でも今回は、初めて「担当を変えてほしい」とまで思いました。こんな思いをしたのは、6年の治療の中で初めてです。

あまりにもやもやしたので、看護師さんや他科の先生に、こっそり愚痴をこぼしたりしてしまいました……。

過剰なサービスを求めているわけではありません。ただ、不安な患者にとって、寄り添ってくれる人か、不安を煽る人かの差は、本当に大きいです。身体がつらいときほど、その差が心にこたえる、と痛感しました。


初めて、家族に明確に弱音を吐いた

動かない足、ひどい浮腫、内転筋の痛み、そして寄り添ってくれない担当。

2019年からの治療の中で、愚痴っぽい事を冗談めかして言ってきたことはありましたが、今回は初めて家族に「もう、入院も手術もしたくない」と明確に言いました。

今まで治療を続けてきて、こんなに嫌になったのはこれが初めてでした。

これまでは、何かあっても「で、次はどうするか」と、淡々と前を向いてきたつもりでした。でも、このときばかりは、その気力が一気になくなった様な感じがしました。

何とか退院はできましたが、3回の手術入院の中で、間違いなく一番つらい経験でした。


退院後も、しばらく落ち着かなかった

今回は退院しても、すぐに楽になったわけではありません。

動くのも大変でしたが、それ以上に困ったのが、手術創からの漿液のにじみでした。ガーゼを毎日交換しなければならなく、しかも足はかなり動かしづらい。この状態が3週間ほど続いて、なかなか落ち着きませんでした。

左足の浮腫も、見た目には1.2倍程度なのですが、自分の感覚では2倍くらいに張っている感じで、特に夕方になるころには、ツッパリ感と重だるくてつらい。

もう、このままなのではないか、気力がなくなりつつありました。また、退院後に漿液もいつ止まるか不安で病院へ連絡し確認をとるほどでした。

それでも、3週間を過ぎたあたりから、傷が閉じてきたのか漿液もほとんど出なくなり、足の太さも1.1倍くらい、張り感も1.5倍くらいの感覚まで戻ってきました。「がんばれば夕方まで、何とか動けるかも?」というレベルまでは、回復できたのです。

そんな中ふと右足の太ももに小さい膨らみを発見しました。「まさか・・・」今までの経験と余裕のなさも相まって、即病院へ連絡。状況を説明すると退院後の診察で診るが、その前に皮膚科でも確認してもらった方がよいとの事で、すぐ皮膚科を予約しました。

近所の皮膚科クリニックで今までの状況を説明し診てもらいました。粉瘤や脂肪種でも、腫瘍でもなく何かの瘢痕のようだとの事で様子を見るように言われました。この結果を術後診察に持っていくこととしました。

術後診察では、まず右足の太ももの小さい膨らみの事を話しました。

術前のCTで右ももまで撮れていたので、その画像を見ながら、該当の部分はふくらんでいるが、腫瘍などではなく皮膚が厚いだけの状態との事で、触診でも柔らかいので皮膚科の先生の言う通り何かの瘢痕と思われるので問題なしと主治医から診断されました。

また手術後の傷の状態も問題なし。浮腫も想定範囲内で問題なしとのこと。

一度に色々な不安があったので、一気にほっとしました。ただ浮腫は見た目以上にしんどいので、改めて「どのくらいで良くなるのか」を聞いてみました。返ってきたのは、「次第に良くはなるが、完全に元通りになるかはわからない」「個人差がある」という答え。

——だんだん、動きづらくなっていくな・・・。

そう感じました。人工肛門、慢性的な倦怠感、足のしびれと感覚のにぶさ、腹部不調。今回の浮腫み。治療のたびに、元に戻らない事が増えていく。そんな感覚になってしまいました。


そして、また抗がん剤へ

退院後の診察で、また術後の抗がん剤治療(XELOX)の話になりました。

前回と同じ標準治療です。ただ、今回は前回ほど強くは勧められませんでした。前回実施した抗がん剤の蓄積型の副作用(足のしびれや感覚のにぶさ)が残っている状態で、また抗がん剤治療を実施するとそれらが悪化する事もあるようで、「どうされますか?」と。

それでも、私は「やる」と決めました。

しない選択をして、もし再発したら——そのとき後悔するのは、もう目に見えてわかっているからです。

前回のXELOXで、しんどいのは身をもって知っています。蓄積した副作用が、これからさらにひどくなる可能性があることも。本当は、したくない。でも、「やれることはやる」という私の判断軸は、やっぱり変わりませんでした。


おわりに

3度目の手術は、片足切断という事態こそ避けられたものの、これまでで一番つらい入院になりました。

弱音も吐きました。担当(主治医ではありません)に不信感も持ちました。足には、抗がん剤の影響で足先のしびれが残っています。そして手術による浮腫も、戻りきらないかもしれません。

それでも、こうして退院し、また次の治療に向かっています。大事なのはできることをやって、淡々と進んでいく。その繰り返しです。

弱音が多い記事になってしまいましたが、いつも前向きでいられるわけではない、ということもありますし、本当に今回手術から退院後の診察まで、気力を失う出来事が多すぎたということもあります。

長く治療を続けていればこういった様な出来事があるかもしれません。もしそんな事があったら、つらいときは、つらいと言っていいし、愚痴ってもいいと思います。

場合によっては精神科を紹介してもらって受診してもいいし、長く治療を続けるためにはつらいと吐き出す事もきっと大事なことだと思います。
私もいつまでも続く、だるさ、腹部不調について主治医と相談し、精神的な問題もあるかもとの事で精神科を紹介してもらい、今も継続して診察してもらっています。

とは言え治療は続いていくわけで・・・今まで通り、むりのない範囲でがんばっていきたいと改めて思いました。

これで、ほぼ現在の治療に追いつくところまで書いてきたことになります。
次回は、現在進行形で続いている抗がん剤治療と、厳しくなってきた家計、そしてこれからの事を書いていきたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


※本記事は筆者個人の実体験に基づく記録であり、特定の制度、手続き、医療行為等の正確性や効果を保証するものではありません。掲載情報は時期や環境によって異なる場合があります。万が一、本記事の情報により損害や不利益が生じた場合も、筆者は一切の責任を負いかねますので、最終的なご判断はご自身の責任においてお願いいたします。



いいなと思ったら応援しよう!

おじ 記事読んでいただきまして、ありがとうございます😊