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第四章 One day I'll finally know my soul(ヴェトナム、たくさんの顔をひとつひとつ見つけてゆく旅ーー行き当たりばったり右往左往、ヴェトナム紀行)

長距離バスの狭いベッドのなかで眠っていた私は
突然起こされる、
どでかい音量で鳴り響く歌によって。


女性歌手は歌いあげる。

Tell me all about this name that is difficult to say
It was given me the day I was born
Want to know about the stories of the empire of old
My eyes say more of me than what you dare to say
All I know of you is all the sights of war
A film by Coppola, the helicopter's roar
One day I'll touch your soil
One day I'll finally know my soul
One day I'll come to you
To say hello Vietnam

私に教えて。
どう発音したらいいかわからない、この名前について。
それは私が生まれた日に授けられた名前。
古の帝国の物語について知りたい。
私の目は、あなたがあえて口にすることよりも、
私自身について多くを語っている。

私はあなたを戦争映画でしか知らない。
コッポラの映画や、
猛り狂うヘリコプターでしか知らない。 
いつか私はあなたの土に触れるでしょう。
いつか私は、自分の魂を知るでしょう。
いつか私はあなたのもとへ行くでしょう。
そして言うでしょう、
こんにちは、ヴェトナム。

私は突然この歌で眠りから叩き起こされた。
にもかかわらず、
One day I'll finally know my soul
その一節だけが、
なぜだか耳に残った。

いつか私は、ついに自分の魂を知るでしょう。

大げさな歌詞だ。
けれども旅先では、ときどき大げさな言葉が、不意に
胸のなかに入り込んでくることがある。

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いまこの文章を書きながら調べてみると、
この歌はベルギー生まれのヴェトナム系歌手、
Phạm Quỳnh Anh
の歌う
”Hello Vietnam”
という歌だった。
もともとはフランスの男性歌手Marc Lavoine
が彼女のために書いた
”Bonjour Vietnam”というフランス語の歌に、
その後、英語の歌詞をつけ直し、
世界中のヴェトナム人たちを魅了したそうな。

その歌の主人公は、
ヴェトナムの外で生まれ育った若い女性だ。
彼女はヴェトナム語を話せない。
ヴェトナムを見たこともない。
それでも、
自分のルーツの土地に憧れている。

私は少しどきっととした。
「私はあなたを戦争映画でしか知らない。
コッポラの映画や、
猛り狂うヘリコプターでしか知らない。 」
いくらかおこがましいかもしれないけれど、考えてみれば、
私もまた似たようなものだったから。

マルグリット・デュラス。
コッポラ。
ティム・オブライエン。

私はそうした他人の物語を通じて、
ヴェトナムを想像してきた。

その歌の主人公が祖国を探していたように、
私は私なりにヴェトナムを探していた。
もちろん私はヴェトナム移民二世ではない。
故郷を探しているわけでもない。

それでも、

One day I'll finally know my soul

という一節は、
不思議なくらい私の耳に残ったのだった。


 ヴェトナム戦争の終結後、社会主義体制下での迫害などを逃れて、
多くのヴェトナム人たちは世界各地へ散っていった。
なかにはボートピープルとして海を渡った人々もいる。
アメリカ、カナダ、オーストラリアが多かったらしい。
その数は140万人とも150万人とも言われている。

そして、この歌は、
その子供たちの世代に向けた、
郷愁と帰郷の歌なのだろう。


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もっとも、このときの私にこの歌に惑溺している暇はなかった。

なぜなら、私は、
いま別の問題に直面させられているのだ。
朝六時。  寝台バスは高台で停車した。
私を含め、乗客たちは全員荷物を抱えて降ろされる。

冷たい空気が頬に触れる。
周囲には緑の丘が広がっている。

うっすら霧に霞んでいる。


私は、こんなところで降ろされて、
いったいこれからどうしろというのだ!??
私は自分の魂について考えるまえに、
まずは自分がいまどこにいるかを知る必要があった。
私は、Dalatの街のいったいどこにいるのだ?

つづく

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