【饂飩美味紀行】#46 自家製うどん くら川(福岡県宗像市)
" 玄 界 の 潮 騒 に 響 く、宗 像 饂 飩 の 一 杯 "
❖ 福岡県宗像市の位置
福岡県宗像市は、九州の北なる地にあり、福岡と北九州の間にその名を馳せる土地なり。北は玄界灘の荒波に面し、南は犬鳴山系の峻嶺を背負う。沖には「神宿る島」と称される沖ノ島、大島、地島などの離島が点在し、これまた由緒ある地と伝わる。
宗像の地は、古来より海の道を掌握する要衝として栄えたり。宗像大社を奉じる宗像氏は、海上安全の守護神として人々の信を集め、その歴史は深し。この価値、世にも貴く、2017年には「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として世界文化遺産の誉れを得たり。
交通の便も誠に良し。JR鹿児島本線が市内を貫き、東郷、赤間、教育大前なる駅を擁す。国道3号線はこの地の脈動を担い、福岡、北九州への往来を容易ならしめる。また、西九州自動車道の宗像IC、九州自動車道の若宮ICを擁し、さらに神湊港より大島、地島へと船も出る。
宗像の地は、自然の恵みにも富み、玄界灘の荒波に育まれし海の幸、殊にアワビやウニは絶品なり。風光明媚なる海岸線と、古き遺跡の残るこの地は、旅人の足を止めるに足る魅力を持つ。また、近年は福岡の寝所としても栄え、住まう人々も増えつつある。
さらに、宗像の地には「宗像のテンちゃん」なる愛らしきゆるキャラあり。ホンドテン(キテン)を象りしその姿、祭りや催しに姿を見せ、宗像の魅力を広く世に知らしめる。
かくのごとく、宗像の地は歴史と自然、そして利便性を兼ね備えたる地なり。かの地の発展は今後も続かんこと、疑うべくもなし。
❖ 店舗外観
❖ 饂飩絵図

❖ 饂飩膳の記録
寒風吹きすさぶ饂飩茶屋「自家製うどん くら川」への訪問
ある冬の昼下がり、拙者は老母を伴い、「自家製うどん くら川」なる饂飩茶屋へと足を運びし候。この日はことのほか冷え込み、吹きつける北風により、鼻が凍てつき砕け散らんばかり。世の喧騒を離れ、温かき饂飩にありつかんとするも、店先にてすでに異様な熱気を感じる。
昼飯どきもとうに過ぎたる刻なれど、暖簾の向こうには、なおも人の群れが陣を敷き、順番待ちの列をなしておる。その様子、さながら凍えた兵(つわもの)どもが温もりを求めて押し寄せる冬の陣といったところ。噂には聞いていたが、まこと侮りがたし。この饂飩、いかほどの手練れなるか、いざ試さん。
拙者もまたその列に加わり、寒さに震えながら待つこととする。老母と連れ立ちつつ、饂飩談義に花を咲かせるも、震える唇では言葉もたどたどしきもの。待つことしばし、ようやく案内され、いざ戦場へと足を踏み入れたり。
現代の妖術との対峙——凍えた指先との戦い
席へと通され、目の前に鎮座するは、何やら見慣れぬ蒔絵の施された黒き板。これは最近流行りの「板の書物」、人の手を介さずとも料理を所望することが叶う神器とやらか。
拙者、初めてこの仕組みに出会しし折には、何やら狐に化かされたる心地なれど、今やすでに手慣れたもの。しかし、この日は違った。凍てつく指先が言うことを聞かぬ! 指が動かぬゆえに、画面を滑らせるたび、拙者の手元が怪しげに震え、店の者に怪訝な目で見られる。まるで初めて妖術機巧に挑む未熟者のようである。
評判高きおでん、見るからに美味そうなどんぶりも候えど、拙者が狙いし「かしわおにぎり」は、無念にも売り切れとのこと。まことに残念、されど戦場とはかくあるべし。狙いたる獲物を得られぬこともまた、武士の定め。致し方なし、ごぼう天うどん単品を所望し、静かにその刻を待つこととする。
運命の対面——饂飩との邂逅と凍える顔面
ほどなくして、饂飩が運ばれたり。その姿、まるで白糸を織り上げたるがごとく繊細にして、湯気がほのかに立ち昇る。かの気高き一条の光を前に、拙者、思わず息をのむ。
箸を手に取り、一口啜れば——おお、これは柔らかきことこの上なし。まるで戦場を駆けし勇将が、槍を置き、隠居の身となり穏やかに過ごすが如く、優しき歯触り。讃岐のごとき剛毅なるコシこそあらねど、この柔らかき饂飩の魅力はまた別の次元にあり。
つるりと喉を滑り、口内に広がる滋味に、しばし陶然となる。しかし、調子に乗って勢いよく啜りすぎた拙者、熱きつゆが唇を襲う! 「むむっ!」と呻き、顔をしかめるも、老母には「あんた、ほんに間抜けよのう」と一蹴される。まことに無念なり。
つゆの妙なる調和と冷えた体の蘇生
饂飩の命は、ただ麺のみならず、そのつゆにもあり。これぞ武士における魂と肉体のごとし。
このつゆ、まろやかにして奥深き味わいを湛え、濃すぎず、かといって頼りなきこともなし。まるで名君のごとき見事な采配にて、饂飩を包み込む。ひと口含めば、その滋味がじんわりと染み渡り、凍えた体が次第に温もりを取り戻してゆく。
ごぼう天の香ばしき風味もまた格別。汁を吸いて尚、崩れぬその食感、まことに見事なり。
饂飩界の戦乱と勢力図の変遷
この地においては、かつて「英ちゃんうどん」一強と謳われしが、今や新たなる挑戦者現れ、饂飩界の勢力図も塗り替えられつつあり。
古き名店がその地位を守らんとする一方、新たなる猛者どもが次々と挑み、己が流儀を示す。これはまさしく戦国の世と変わらぬ光景なり。
讃岐、博多、小倉、それぞれの流儀が交錯し、新たなる文化が生まれつつある。まさに今、饂飩界は新時代の幕開けにあるといえよう。
次なる戦場を求めて
ついにすべてを平らげ、拙者は静かに箸を置く。満足の息を吐きつつ、次なる機会には、ぜひともおでんとどんぶりを試みんと誓う。
饂飩茶屋を後にし、店を振り返る。そこには、なおも行列を成す人々の姿があり、彼らもまた、己が求める饂飩を求め、戦場に挑むのであろう。
拙者、己が満足を胸に秘め、新たなる戦場へと赴くが如く、風の如く店を後にせり。
❖ 店の評判帳
残念至極ながら、店の評判帳を見出すことが叶わず
❖ 詳細な絵図
❖ 饂飩道を嗜む者へ(宣伝)
百田尚樹氏が2012年に著し、世に評判となりし歴史経済小説なり。戦後の世を生き抜きし一商人、出光佐三をモデルとし、その生涯を描きたるものなり。
主人公・国岡鐡造は、宗像郡赤間村(今の宗像市)に生を受け、些少なる油売りより身を起こし、やがて天下に轟く大商いへと成長せしむ。戦乱の余波、異国との軋轢、幾多の艱難辛苦に耐えながらも、「人こそ宝」との信念を曲げることなく、己が道を突き進みたるなり。
2016年には岡田准一殿が主演し、絵巻物として世に映し出され、さらなる評判を呼びたり。志を貫くことの大切さを知るには、まことうってつけの一冊なり。
❖ 過去の饂飩絵巻
美味を求む饂飩侍、風の如く歩みし味巡礼の記録なり
❖ 諏訪たけしの饂飩美味紀行全集
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