「Claude 5」時代は余計な設定は削る
Anthropicの中の人が、7月末に以下のように書いていた。
Claude Codeのシステムプロンプトを80%以上削ったが、コーディングの評価に測定可能な劣化は無かった。
We removed ~80% of the Claude Code system prompt for our newest models, this is what we've learned about writing system prompts, skills and Claude.MDs for them. https://t.co/6DZwSrZjE9
— Thariq (@trq212) July 24, 2026
削ったら劣化する、ではなく、削っても劣化しない。
理由は、モデルの判断力が上がったから。
以前は最悪の事態を避けるために強い制約が必要だったが、今はその多くを消して、判断に任せて良い、と。
しかも、Claude Codeを作ったBoris Cherny氏が、Opus 5公開直後のインタビューでこうも言っている(訳は以下同じ)。
6か月ごとに、CLAUDE.mdを消してください。スキルを消してください。フックを消してください。モデルがどうするか見てみると、驚くかも知れません。
過去のモデルに必要だった指示が、今のモデルには要らないかも知れないから、って理由で。
これまでとの違いを簡単に図にすると、こういうことになる。

作った本人が消せと言っているので、実際に削ってみた。
設定にコードの話はほとんど無い
まず、自分の環境から。
ObsidianのvaultをClaude Codeで扱っていて、あちこちに指示を書き溜めている。
眺めてみると、コーディングについて書かれた部分がほとんど無い。
書いてあるのは、日本語でどう返してほしいかと、ノートやファイルをどう扱うか。
元記事もインタビューも、コーディングが前提なので、効き方は違うかも知れないと思いつつ、作業に入る。
守られないから、足していた
最初に見つかったのが、矛盾。
どう返してほしいかについて、指示が3つに増えていた。
グローバル設定、プロジェクト設定、自動メモリ。
増えた経緯もハッキリしている。
書いてあるのに口調がちょくちょく変わるので、その都度こう返してほしいと指示する。
すると、既にある記述を直すのではなく、追加で書き足される。
それを繰り返した結果が3箇所。
しかも、簡潔に答えろ、と、丁寧に説明しろ、が別々の場所に入っている。
毎回この3つを突き合わせて、落とし所を探している状態だった。
口調程度でと、思われるかも知れないが、日常的にやり取りする中で、返答の口調というのは、快適さや効率に大きく関係する。
それがClaude 5になってから、口調がぶれること自体が無くなっている。
古いモデルの弱点を埋めるための積み上げが、そのまま残っていた。

解消の仕方は「どちらかを消す」ではない。
適用場面を書き足しただけ。
質問に答えるとき → 聞かれたことだけ。網羅列挙しない
作業の提案・ファイルを消す前 → 情報を省かず丁寧に
矛盾は、片方が間違っているのではなく、適用範囲が書かれていないだけ。
そういうことが、けっこう多い。
vaultの外も見てもらった
3箇所のうち、2箇所はvaultの中では無い。
グローバル設定と自動メモリは、Claude Code本体側にある。
なので、そちらも合わせて確認してほしいと頼む。
vault内のみの整理では、口調の指示は外に残ったままなので、それだけだと矛盾は解消できない。
範囲を広げたのは、日本語でやり取りしているから。
応答の調子や説明量が、そのまま成果物の質になる。
コードを書かせているだけなら、口調が多少ぶれても困らない。
日本語で使っているからこそ、出力スタイルの矛盾が問題になった。
同じ表が4箇所にあった
次が、重複。
同じフォルダ構成の表が、4箇所に複製されていた。
Claude Codeは、Obsidian以外にも、Zedで開いている仕事のプロジェクトなどでも使っている。
今回見たのはObsidianのvault内だけで、その中だけでこの数。
Claude CodeとCodexの両方で扱っているので、同じ内容を2セット持てば、当然そうなる。
おまけに、それぞれが「正本は別の場所にある」と注記しながら、全文をコピーしている。
コレが一番危ない。
正本は別にあると書いてあるので安心してしまうが、実際には同期されない。
事実、毎日書くノートへの追記手順が、設定ファイル側だけ古いまま放置されていた。
複製すると、正本となる片方だけが、更新される。
置き場所が増えるほど、こうなる確率は上がる。
定期的に見直す必要性を、改めて感じた部分でもある。
削るかどうかは「行数×頻度」
一律に削ったのかというと、そうではない。
Obsidian開発者のkepano氏が公開している「obsidian-skills」を5つ入れていて、そのうち1つは395行と長い。
これは触らず、更新の取り込みだけにした。
必要な時に読まれる便利なものだし、手を入れると次の更新が面倒になる。
自分で書いたものと、他人から借りたものは、扱いを変える。
そしてもうひとつ、判断基準がある。
設定ファイルは毎回読み込まれる。
だから何行書いてあるかが、そのまま毎回の消費になる。
対してスキルは、必要な時にしか開かれない。
同じ400行でも、削る価値がまったく違う。
削減対象は「行数」ではなく「行数×読み込まれる頻度」で選ぶ。

上記インタビューでも、同じ理由が挙げられている。
モデルは、使うたびに毎回その指示を読むということを忘れないで下さい。
結果として、設定・定義ファイル全体で約1,700行が250行程度になった。
とはいえ、この数字自体はあまり重要ではない。
大半が重複の解消なので、実質は2セットを1セットにしただけ。
やり取りが簡潔に
削った結果、どうなったか?
元記事の評価軸は「コーディング評価に測定可能な劣化は無かった」。
コードは動くか動かないかで白黒がつくから、80%削っても劣化しなかったと数字で言える。
ノートの整理や調べものには、その判定基準が無い。
代わりに何が起きるかというと、「そうじゃなくて」と打ち直す回数として出てくる。
そして、こちらは明確に減った。
聞いたことに対して、目的の答えが返ってくるまでが短い。
削っても質は落ちない、どころではなく、辿り着くまでが速くなった。
理由は明らか。
矛盾した指示が3箇所にあれば、毎回それを突き合わせて、落とし所を探すことになる。
コードなら、結果が多少ぶれても、動けば正解。
しかし、日本語の応答では、結果がそのまま出力の調子になる。
聞いただけなのに長い説明が返ってきたり、逆に説明してほしい時に一行で終わったり。
そのたびに、打ち直すことになる。
矛盾を消したのは、判断を任せたというより、迷う理由を取り除いたということ。
上記インタビューでも、社内でシステムプロンプトを全部消す実験をした結果として、こう言っている。
興味深いのは、これらのプロンプトが無いほうが、モデルは実際に少しだけ賢くなるということです。
以前の「/insights」コマンドで見直す、という投稿。
投稿時は、足りない指示を足して往復を減らした。
今回は、多すぎる指示を削って往復を減らしている。
正反対のアプローチで、同じ着地。
書いておく必要が無くなった
ここまでは、設定ファイル側の、問題の修正と削除。
削れた理由は、もうひとつある。
以前は、書いておかないと拾ってくれなかった。
だからフォルダの一覧を書き、決まりごとを書き写した。
Claude 5時代は、やり取りの中から推測して拾ってくれる。
ファイル作成時、内容に即したフォルダを提案し、そこに作成。
フォルダ名を並べた表は消し、置き場所に迷った時の判断基準だけ残す。
記録の扱いも変わった。
「学びが5件以上溜まったら設定に反映することを提案する」というルールを消したら、設定に転記する代わりに、記録そのものを読みに来るようになった。
あらかじめ書き写しておく工程が、不要になっている。
消して、使って、つまずいたら戻す
上記インタビューで、消した後の手順まで語られている。
まず消し、次に使う。
同じ所で繰り返しつまずくのを見た時、それが戻すタイミングです。
早めに戻してはいけない、とも。
モデルが本当にその指示を必要としているか、確認できるまで待つ。
先回りして書いておくのではなく、困ってから足す。
今のところ、削って困った所は出てない。
細かく書くほど逆効果
上記インタビューの中で、よくある失敗として挙げられていたのが、過剰に具体的な指示。
よく見かける失敗は、あまりにも具体的すぎる指示を与えてしまうことです。これをやってほしい、でもこのやり方で、こう、こう、こうやって。まず1番、次に2番、3番、4番、というふうに。今のモデルに対しては、それは本当に正しいやり方ではありません。
代わりに何をするか。
タスクと、守ってほしい範囲と、終わりの条件を伝えて、あとは任せる。
長年コードを書いてきた人ほどこの失敗をしやすい、とも言っている。
昔のシステム開発では、そう作るのが正しかったから。
同僚に頼むくらいの感覚で良い、というのが今の水準らしい。
削れば誰でも良くなる、訳ではない。
効いたのは、指示が多いからではなく、指示同士が衝突していたから。
矛盾が無ければ、量が多くても素直に動く。
ただ、細かく書き込んでいる設定ほど、いつ書いたものか分からなくなってしまっているのではないか?
実際、削ったもののいくつかは、今のモデルには必要の無いものだった。
増える仕組みそのものを止めた
最後にもうひとつ。
作業をしていて、承認の許可リストも同じように膨らんでいるのを見つけた。
こちらもスリム化していく予定なので、それはまた別で書く。
それとは別に、その日の最後に自分で書いたルールを見つけた。
やり取りの記録が5件以上溜まったら、設定ファイルへの反映を提案する、というもの。
記録は毎回溜まっていくので、放っておけば設定は増える一方になる。
そしてこの日、まさにそのルールが働いて、設定に足しませんか?と提案された。
丸一日削り続けた直後に。
もちろん足さずに、そのルール自体を消した。
削って2行減っただけ、と言えばそれまで。
しかし性質が違う。
それまでは、増えたものを削っていた。
この2行の削除は、増える仕組みそのものを止めている。
対処ではなく、予防。
モデルは賢くなり続ける
設定ファイルは、放っておくと増える。
承認するたびに記録が残り、溜まったら追加を検討するルールがあり、定期的に増えていく反面、削る手順が無い。
増える経路だけが用意され、減る経路が無い。
一方で、モデルは新しいものが出るたびに賢くなっている。
口調がぶれるから足した3つの指示も、ぶれなくなった時点で役目は終わっていた。
書いた当時は正しかったものが、そのまま残って足を引っ張る。
だから、新しいモデルが出たら設定も見直す。
作った本人が6か月ごとに消せと言っているのだから、それくらいの頻度でちょうど良い。
消してみて、困ったら戻す。
それだけで、毎日のやり取りが軽くなる。
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