全員嘘つき? 本当に半二郎はすごい役者だったのか?【映画「国宝」】
どうも、まろん亭奏字でございます。
先月、「国宝」という映画についてお話させて頂いた時、「半二郎が喜久雄に『役になりきっていない』と叱責するシーンは、数多くの作品で役になりきってきた渡辺謙さんが言うから説得力がある」みたいなことを書きましたが、ふと、「いや、半二郎は、役になりきる程度のことしか出来ない、歌舞伎役者としてはそんなにたいした男じゃなかったのではないか」と思いました。
まだ原作を読んでいないので、もしかしたら原作ではハッキリとそう書かれているかもしれません。(あるいはその逆かも)
世界のケン・ワタナベが威厳たっぷりに演じているからつい騙されてしまったんですが、渡辺さん演じる半二郎って、「二代目」なんですよね。
彼もまた、俊介同様、「血筋の力」を使って成り上がってきたところもあるんじゃないかと思うんです。
一方、喜久雄は「なりきる」だけでは終わらない才能を持っていた。
だから、「人間国宝」になれたんじゃないかと。
前回もチラッと書きましたが、やっぱりこの映画のテーマって「嘘」だと思うんです。
誰もが、なんでもないわけないのになんでもない顔をして、思ってもいないことを思っているかのように言葉にする。
シナリオ学校で、「セリフは嘘つき」と教えられましたが、まさに嘘つきだらけの映画。
「アウトレイジ」が「全員悪人」なら、この映画は「全員嘘つき」なのです。
それで思い当たるのが、ハルちゃんが俊介を連れて喜久雄の前から姿を消すシーン。
一見、敗れた俊介を受け止めて寄り添っている聖母マリアのように見えるハルちゃんですが、俊介に引導を渡すことで、喜久雄がトップに立てる道を作ったという見方もできるのではないでしょうか。
そうだとしたら、ナイスアシスト!
もしかしたら、ラストで「舞台上のあなたは素晴らしい」と父・喜久雄に贈った娘の賞賛でさえ、「嘘」だった可能性があります。
俊介の母親が喜久雄に対して、「なんで血筋でもないアンタが」と詰め寄る言葉の裏側で、本当は誰よりも喜久雄の才能を感じ、俊介が去ったことにホッとしていた気持ちもあったのではないでしょうか。
だから、最後のカットで、喜久雄が宙を見つめ、何かを見たような表情になっていますが、私は「何も見ていない」んだと思うンです。
どこまでも続く果てしのない「空(くう)」。
そんな虚無と心中することを選んだのが、あの表情の「正体」だったのではないでしょうか。
そもそも、「女ではない男が、女性を演じる女形」というものからして、最大の「嘘」ですからね。
この映画のセリフをすべて「嘘」という前提で見直したら、新たな発見があるかもしれません。
ということで、今回は映画「国宝」について、少しだけ追加でお話させていただきました。
それでは、また。
「国宝」
2025年公開
日本映画
監督: 李相日
出演: 吉沢亮、横浜流星、高畑充希、森七菜、寺島しのぶ、渡辺謙
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