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中川家まで、あと一歩

わが家の息子たちが、ずっと喋っている。

2人はいつも一緒だ。
ご飯を食べる時も、お風呂に入る時もいつもくっついている。

そして、延々とおしゃべりを続けるのだ。たぶんマクドナルドにいる高校生よりも、トーク量は多い。マックフライポテトがしなしなになっても、ドリンクの氷が溶けて味が薄まっても、うちの子たちはまだ話し続けている。CDアルバムの1曲目からラストまでノンストップで聴き終わるよりも長く、彼らのおしゃべりは止まらない。ラジオのDJのように、立て板に水でスラスラと言葉が出てきて話すのだ。

そんなに一体何を喋っているんだろうと不思議なので、一度耳をすませて聴いてみた。すると、ゲームやアニメの登場人物になりきっているようで、セリフらしき言葉を喋っている。

セリフを言い合っているのを聴いて、漫才コンビの中川家を思い出した。本物の兄弟でコンビを組んでいる中川家。初代M-1チャンピオンで、面白さは折り紙つきだ。しかも、カメラが回ってない時にも、2人でモノマネしあったりボケたり突っ込んだりと、ずっと喋っていると聞いたことがある。

あれ?
もしかしたら、うちの子たちと一緒じゃない?

アニメの言い回しをマネをしてシーンを再現しようとするあたり、中川家に通ずるものがある。年齢差は中川家と違えど、うちの子たちも兄弟だ。兄弟で疲れるまで延々と話している様子は、まさに中川家。

じゃあ、中川家と何が違うのか。

決定的に違うのは、笑ってしまうネタではないということだ。中川家はプロだから、話し方も流暢で、リズムも洗練されている。それだけではなく、話す内容が面白くて、そばで聞いていても思わず笑ってしまう。真面目な表情で繰り出される話には、笑いのツボがいっぱいだ。よくいる普通の人を観察してモノマネする様子は、「わかる!こういう人いる!」と思って、ついつい笑ってしまう。

一方、わが子たちは、自分たちだけが楽しければ良いと思っている。お互いが楽しくおしゃべりできれば、それで十分。観客はいない。強いて言えば、お互いが観客。

満面の笑みで、2人が楽しいと思うことだけを効果音をつけて、ひたすら全力でしゃべっている。たとえば、こんなふうに。

「待って!ここは僕の技だよ!」
「ちがうよ!ここでヒューンって入ってくるの!」
「ヒューン!」
「次は僕の攻撃だよ。ダダダダッ!」

食卓で、リビングの真ん中で、何やら激しい攻防戦が繰り広げられているのだ。熱心で楽しそうに喋る様子に、微笑ましくて思わず笑いそうになる。でもわが子たちの場合は、お笑い的にいったい何が面白いのかわからない。それでも本人たちは、お腹を抱えて笑っている。きっと私には、入れない世界なのだ。

聞いている人から爆笑をかっさらう話ができるようになったら、中川家に近づけるかもしれない。狙って笑わせるトーク力を身につけたら、M-1も夢じゃない。

しかし、わが子たちにはウケようという気はさらさらないようだ。ただ好きなだけ、好きなことをたくさん喋りたい。ずっと2人で、わかりあっている者同士で安心して話したいのが、わが子たちだ。

お笑い、意識してくれないかな。
そしたら、トーク力が伸びるかもしれないのに。
本人たちだけでなく、周りを幸せにできるかもしれないのに。

母である私の願いも虚しく、子どもたちは今日も、好きなアニメやゲームの話を、セリフを交えて好きなように話している。

うーん。
中川家まで、あと一歩。

でも今のところ、観客は本人たち2人だけである。

私にはわからない世界で、
2人は今日も楽しそうに笑い合っている。



子どもたちについては、こちらにも。

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