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ふと、母を想い浮かべた…

懐かしい道のり……

車を運転しながら「懐かしいな」
心で呟いた。

いろいろな場面が、
走馬灯のように浮かんだ。


次女と病院へ向かう車の中。

そう思った同じタイミングで、
次女が、ぽつり呟いた。

「この道、懐かしい…」


そか……次女もここへ通ったよね。
そうだね、懐かしいよね……

「そうだね」

そう、私も返事をした。


あの頃は、酷く傷ついていた。

私も次女も、長女も、そして、母も……

皆、それぞれの暗闇の中を歩いていた。

長く暗いトンネルを彷徨って、
助けを求めた。


何度ここへ足を運んだかな……

何度ここへ付き添ったかな……


ここへ来ていた頃を
それぞれに、私も次女も感じていた。




2012年
母が発病して、統合失調症の急性期に
お世話になった場所。

病識のない母からの罵倒を受けながら、
医療保護入院をさせた。

幾度の痛ましい光景は、
今でも私の目に焼きついている。

母の形相……

私へ向けられる母の言葉、姿に、
何度、涙をこぼしたことだろう。


辛く苦しい現実を受け入れていくしかなかった。
変わり果てた母を見ることが
とても辛かった……

もう二度と元に戻ることはない。
変わり果てた母と
根気強く向き合っていくしかなかった。

母を喪失したと感じた。


妄想は消えない。
妄想があっても、そこに固執せず流せれば良し。

でも、そこまでにはなかなか至らずに、
幻聴と妄想が母を苦しめていた。

妄想に振り回され、
周りを振り回し、
人をコントロールさせようとする。

悪化し妄想が強くなれば入院、薬を調整。
その繰り返し。

悪化の恐怖はトラウマとなった。

妄想の中で生きる母の言葉を
いつまで聞かねばならないのか、
こんなことをいつまで続けなければならないのかと

疲弊した……

母の言葉に、気が狂いそうになった。

身も心もボロボロになった……


母が頼りとするのは長女の私、全集中。

認知機能も酷く下がって、何もできない。
何もできない子どもが親に縋る、そんな形態。

私がそばにいることが唯一の安心材料。

母の想いを感じるからこそ、
母の想いに応えられないことに苦しんだ。

自分の生活を優先し守ることに心が痛んだ。
酷く葛藤をした。

自分を責めた……


自分の人生を歩むことに罪悪感が付き纏った。

自分が幸せになっていいはずなのに
幸せになろうと動くことに罪を感じ、苦しんだ。

自分が自分であることを許してあげられずにいた。


母の言葉は、身体に突き刺さった。
拭いたくても拭えない。
母の言動が、心に張り付いて離れなかった……

私の心も身体も限界に達した。


そして、私自身も母との関係、
自分と向き合うために、ここへ通った。


あの頃のことを
思い浮かべていた……


あれから、母が亡くなる2022年まで、
本当の母の姿と会話ができたことはない……

私が知っている母の姿は、過去の母。
病気に侵された母は、母であるけれど本当の母ではない。病気に侵されている母だ。

だから、過去のような母は、もうそこにはなく、
そのことが、とても悲しく、辛く、苦しかった。

母の終末期。

言葉を話せなくなった母と、
たった一度だけ、心が通った瞬間が起こった!

忘れもしない。

言葉はなくとも、
母の瞳を見れば、伝わってくる。

私の手に、手をゆっくりと合わせてくれた、
あの時の母の顔。

紛れもない、あれは本来の母だった。

(あぁ、私が昔から知っているお母さんだ!)

嬉しくて、ポロポロと涙が溢れた。


あの心を通わせられた瞬間を忘れはしない。


壮絶だった母との時間が
私の頭と心を駆け抜けた。






次女がここへ来るのはいつぶりだろう……

あれは、友達と上手くいかない出来事から、
起立性調節障害となった頃。

彼女もまた、暗闇を歩き自分の内面と闘っていた。


思春期の真っ只中の、
危うい自我が悲鳴をあげていた。

早くに立ち直れた娘を誇りに思う。


起き上がれずに、食事もままならずに、
辛い中でも頑張り抜いた次女。

自分の中で折り合いをつけながら、
ゆっくりとできることをリハビリのように
努力していた。

あの暗黒を生きた娘は、
今はしっかりと自分を生きている。


だが、元々の気質や自分のクセは残っている。
大学で心理学を専攻する娘。
今の間に自身について向き合っておきたいと申し出た。

高校時より検査を希望していたが、
部活や受験で忙しくなった。
安定もしていたため先延ばしとなっていた検査。

自然の流れに、そのタイミングがようやく訪れた。
次女の希望により、久しぶりに通る道のり。

各々に思い出されるものを感じていた。





私が自分と向き合えたのは、
長女のお陰でもある。

なかなか勇気が湧かずにいた私に
勇気を与えた長女。

長女は自身の発達傾向の疑いを持っていて、
検査を受けてみたいと希望した。

留学から帰国して自分に不安を抱いていた長女。
自己理解に積極的だった。

後押しされるように、
限界にいた私も便乗した。

長女の存在はとても心強かった。





母とのこと 自分のこと
次女とのこと 長女とのこと

懐かしい道のりに、
沢山の場面と想いが、走馬灯のように流れた……


病院に着くと、満開の桜が咲いていた。

生き生きと光って🌸
まるで出迎えてくれているかのように見えた。

暗黒から脱した今を迎え入れるように、
私たちの心を癒した。

桜の花が、
過去からの未来と希望を照らしていた……




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