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文車妖妃のアルエさん④

【文車妖妃(ふぐるまようひ)】
古い恋文にこもった想いから変化した妖怪。
美しい女性の姿をしているが、その体は恋文や巻物によって形づくられている。届かなかった想いで形成された彼女は、何を求めるのだろう。
ぼくは勝手に、アルエさんを文車妖妃だと思っている。

なんか勇ましいな…

前のお話はこちら

地獄の教師時代だ!

特にやりたい仕事もなかったぼくは、大学で教員免許だけ取って県に登録し、就職活動もせずにふらついていた。
そうしたら、ある全寮制の学校から「新卒の教員が消えたから面接に来ないか」と連絡があり、面接を受けたら即座に採用されて無事高校教師になった。

『暗殺教室』みたいな絵面

教師時代については割愛するけど、まあ地獄だった。
寮監も含めるとほぼ24時間勤務で月給18万円。やばくない?
学年主任と国語の教科主任と司書教諭と空手部の顧問と寮監と……。

周りが次々と病んで消えていく数年間だった。
でもちゃんと1年生から3年生まで担任を務めて、キリのいいところで辞めた。なお、この期間はアルエさんと一度も連絡を取っていない。

……おそら……きれい……

退職後、よく考えたら文章を書くことに関してはストレスがないことに気づいて、適当に「ライターになろ」と思った。でもパソコン使えないし、ワープロ検定や表計算検定くらいは取っておこうと思って、職業訓練校に通うことにしたのだった。

職業訓練校での出会い

ハローワークで申請することで、失業保険をもらいつつ職業訓練校などに通うことができる。資格も取れるし、昼食代ももらえるので使わないと損な制度だ。そこで、なんか見たことあるような人に出会った。

ナマコ先輩?ナマコ先輩ですよね!

アイドルみたいな美女だった。
アルエさんに似てるけど、もっと背が高くて目もぱっちりしてる。名札を見ると、苗字がアルエさんと一緒。あ、この子、アルエさんの一個下の妹だ。

「やっぱりナマコ先輩ですよね!」
君、しゃべりながら衣装替えしてない?

「アルエさんの妹さん?話したことないのによくわかったね」
「ナマコ先輩ほど目立つ人いないですし」
「あ…そうだよね……ナマコだしね」
「それに姉からもよく話を聞いていたので!」

それにしても本当にナマコなんですね!やばーい!

アルエさんが、家でぼくの話を!?
ちょっと嬉しく思いながら、アルエさんについて聞くと、大学卒業後はそのまま大学院に進んだらしい。「教授になる」とか言って。すごー。
卒業式の写真を見せてもらったけど、記憶のままのアルエさんが写っていた。

1000円で買った中古のスーツで卒業式に出たぼくとは雲泥の差!

妹さんと話した感じ、アルエさんは東京で一人暮らし中。
彼氏の有無についてはわからないけど、国内最高学府を卒業して活躍している同級生と会ってたと聞いた。やっぱりそのくらいの相手じゃなきゃ釣り合わないよなー、とか考えながらもムカついたのを覚えている。
アルエさんの妹とは、それ以降は会うことがなかった。

職業訓練校でぼくが入ったクラスは、ぼく以外は全員女性だった。
同じクラスの小柄な女の子が「にぃに」とか呼びながら懐いてくれて、嬉しいけど反応に困る感じで数ヶ月が過ぎ、無事に「ワープロ検定1級」と「情報処理技能検定2級」を取得できた。

「にぃにー!一緒にご飯食べにいこー!」
「ン拒否するゥ(お弁当なのです)」

家で「タイピングオブザデッド」で遊んでただけで合格できるだけのスピードは身についたので良かった。親には「なに遊んでるんだ無職!」ってガチギレされてたけど。

「遊んでないで早く働きなァ!!」
「うるせえババア!!!!」

無事に資格も取れたことだし、特に深く考えることもなく、ぼくはライターの仕事を探すことにしたのだった。

(つづく)


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