「焼き鳥は、3つの熱で焼いている」
焼き鳥の熱は、ひとつじゃない。
3種類ある。
この3つを理解したとき、焼きは別物になる。
ひとつ目は、炭の直火だ。
炭が燃えることで生まれる熱。
これが一般的に「炭火焼き」と呼ばれるものの正体だと思われている。
でも実際は、直火だけで焼いているわけじゃない。
直火は強すぎる。
当てすぎれば表面だけが焦げ、中は生のままになる。
炭の火さえしっかり付いていれば、特段難しくない熱だ。
ふたつ目は、蓄熱だ。
焼き台が長時間の火入れで蓄えた熱。
これが安定した焼きを生む。
一度しっかり熱が入れば3時間は持続する。
新人と熟練の焼き手の差は、ほとんどここで決まる。
火力じゃない。蓄熱を作れているかどうかだ。
直火はその場で調整できる。
輻射熱は構造が整えば自然に生まれる。
でも蓄熱だけは、時間をかけないと作れない。
急ごうとしても、作れない。
これが職人として一番難しく味を左右する熱だ。
みっつ目は、輻射熱だ。
焼き台や炭から放射される熱が、串の周囲を包むように伝わる。
直接触れるんじゃなく、じわっと中まで入り込んでいく。
これが焼き鳥の保水率を決める。
外を焦がさずに、中まで均一に火を通せるのは、この輻射熱のおかげだ。
この3つを整えることが、焼きだ。
直火で表面を仕上げ、蓄熱で安定させ、輻射熱で中まで通す。どれかひとつが欠けても、焼きは崩れる。
だから焼き手は、客が来る前から戦っている。
焼き鳥は、火で焼く料理じゃない。
3種類の熱を設計する限りなくシンプルな料理だ。
最初の記事
焼き鳥は炭で焼いていない。9割が知らない「本当の火入れ」
食べたくなってらこちまで
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