気づいたら、家が2軒になっていた
熟年離婚したと、思われているのかもしれない。
夫が同僚から
「奥さん、元気ですか?」
と聞かれたらしい。
社宅の駐車場にあった私の車が、最近停まっていないことに気づいたのだろう。
夫の定年が近づいたころ、私たちは老後の住まいを探し始めた。
会社員でなくなったら、賃貸契約をしづらいと聞いていたからだ。
不動産屋に行くと、確かにそんな傾向はあった。
申し込んでも、断られることがある。
それでも、ようやく二人とも気に入る部屋が見つかり、審査を通って契約までこぎつけた。
引っ越しの準備は順調に進んだ。
日取りも決めた。
ところがそのとき、夫の会社から思いがけない話が出た。
定年後も継続雇用するから、社宅にそのまま住んでほしい、と。
もう賃貸契約を済ませ、最初の費用も払ってしまっていた。
私はその新しい家に、どうしても住んでみたかった。
山と公園が見える窓からの景色が、とても気に入ってしまったのだ。
せっかく家賃を払ったのだからと、その期間は、私が住むことにした。
とりあえず冷蔵庫と電子レンジを買った。
仕事のあと、その部屋に行く。
窓からの景色を楽しんで、それから帰宅した。
ダイニングテーブルも買った。
さらに居心地が良くなった。
ベッドとテレビまで買ったら、もう、元の家に戻る気がなくなってしまった。
夫は社宅に残り、
私は新しい家に引っ越した。
平日はそれぞれの職場の近くで暮らし、週末だけ夫が私の家に来る。
家は同じ市内で、車で20分ほどの距離だ。
……2拠点生活というのには、近すぎる気がする。
そんなわけで、気がつけば、私たちは週末婚になっていた。
老後は一緒にいる時間が増えるはずだったのに。
なぜか、ちょうどいい距離になった。
家族との距離の話は、こちらにも書いています。
少し違う雰囲気ですが、よろしければどうぞ。
「家族との距離は、このくらいでちょうどいい」
