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【閑古鳥雑貨店のプク】送別会のテーブルに、服部製糖所の花おはぎをひと箱


ご近所さんとの小さな送別会に、花おはぎをひと箱用意しました。
服部製糖所の「寸草春暉」です。
箱を開けたとたん、今日はこれでよかったのだと思いました。



午後の光が、店の奥まで細く入ってきます。

棚のすみを風がなでて、
紙袋の口が、かさりと鳴る。

今日も店は、びっくりするほど何も起こりません。
そういうところだけは、ほんとうによく続きます。



今日は、ご近所さんの小さな送別会です。

奥の丸テーブルを拭きました。
湯のみをふたつ。
小皿をふたつ。
そのまんなかに、箱をひとつ。

包みをひらくと、花のおはぎ。

桃色。
淡い紫。
やわらかな黄。

店の奥に、ふっとやさしい色が集まったようでした。

和三盆の甘い匂いが、ほのかにします。
それだけで、いつものテーブルが少しだけよそゆきになります。



窓際の椅子は空いています。

そのかわり、プクがテーブルの上にいました。
おはぎの箱のすぐ横。
前足をそろえて、最初からここが自分の席だったみたいな顔です。

いつもは窓際で店の外ばかり見ているのに、今日はどういうわけか、こちら側にいます。
送るでもなく、送られるでもなく、ただ真ん中にいるところが、いかにもプクらしいなと思いました。



やがてドアベルが鳴って、ご近所さんが入ってこられます。

いつもの笑い方。
いつもより、ほんの少しだけ、ゆっくりした足どり。

今日は送別会ですね、とも、
寂しくなりますね、とも、
うまいこと言えないまま、椅子をすすめました。

椅子を引く音。
湯のみからのぼる湯気。
向かい合うあいだに、プク。
その横に、花のおはぎ。

ひとつ、皿にのせます。
もうひとつ、皿にのせます。



きれいですねえ、という声。

ええ、と答えて、
それから荷造りのこと、
新しい家の近くのスーパーのこと、
段ボールが足りないこと。

話していることは、思いのほか、いつもみたいなことばかりでした。



送別会らしく、何か気の利いたことを言えたらよかったのかもしれません。
でも、そういう言葉は、湯気の向こうに最後まで出てきません。

そのかわり、いつもの話が、いつもより少しだけゆっくり流れていきます。

こういう小さな送別会には、このくらいの甘さがちょうどいいのかもしれません。
大げさすぎず、でも、ちゃんと心に残るくらいの甘さです。



プクはずっとテーブルの上にいました。

箱に鼻を寄せて、ひとつ匂いをかいで、
興味があるのかないのかわからない顔で、また座り直します。

それから、こちらの話などあまり聞いていないような顔で、目を細めています。

送別会の真ん中にいても、この猫はいつも通りです。
そのいつも通りに、少し助けられます。



和三盆の甘さはやわらかくて、見た目ほど前に出てこなくて、
口の中でほどけたあと、しばらく静かに残っていました。

皿の上の花びらが、ひとつずつなくなっていきます。
湯のみの縁が、少しずつ冷えていきます。
窓の外も、ゆっくり夕方になっていきます。

帰る時間になって、箱を閉じる音がしました。

ありがとうございました、という声。
こちらこそ、という声。



会釈。
小さく手を振る。
ドアが開いて、外の風が少し入って、また閉じます。

店の中に戻ると、さっきまでと同じようで、どこかひとつだけ違っています。

紙袋の音。
棚の影。
テーブルの上のプク。



プクは、まだそこにいます。
何事もなかったように、目を細めています。

窓際の席だけが、
ぽつんと空いたままでした。







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花みたいにきれいで、甘さはやさしめ。
気をつかわせすぎない贈りものを探す日に、ちょうどいいおはぎです。





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※商用利用可能なフリー素材の画像、イラストを使用しています。


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