【閑古鳥雑貨店のプク】『しあわせは食べて寝て待て』を読んだ午後、黒毛和牛に心が揺れた店主の話
お客様が来ない午後、静かな雑貨店の片すみにて。
看板猫はお昼寝中、わたしは漫画を一冊。
読んだのは『しあわせは食べて寝て待て』。
そして今夜は、すきやきを輸入牛で。

こんにちは。
うちの雑貨店は、きょうも静かに営業中です。
時計の針が「コッ、コッ…」と響いて、
奥の冷蔵庫が「ぶおん」と唸って、
あとは、風鈴が、時おり「ちりん」と鳴るくらい。
それくらいしか音のない午後です。
西日の光が、棚のあいだからそっと差し込んで、
床にレース模様の影を揺らしています。

看板猫のプクは、きょうも窓ぎわでお昼寝です。
白いお腹を見せたまま、ぺたんと転がって、ぜんぜん動きません。
「プク、もうすぐ八月も終わるって」
そう話しかけてみても、返事はありません。
くるんと寝返りをうって、ますます眠りが深くなっただけでした。
蝉の声は少し遠ざかって、
かわりにヒグラシの鳴き声がまじってきました。
夏の終わりって、なんとなく、いいですね。
さみしいような、ほっとするような。

お客様は、きょうも見えないまま、午後が半分すぎて。
お茶を飲みながら、なんとなくタブレットを開いてみました。
Amazonプライムで、前から気になっていた漫画を、そっとひとりで。
タイトルは『しあわせは食べて寝て待て』。
読むまえから、すこし救われたような気持ちになる言葉です。

しあわせは食べて寝て待て 1
発売日:2021年04月16日
著者/編集:水凪トリ(著)
レーベル:A.L.C.DX
出版社:秋田書店
主人公は、38歳の麦巻さとこさん。
ある日、「一生つきあう病気です」と告げられて、
それまでの仕事も暮らしも、大きく変えることになります。
会社をやめて、週4日のパート勤務。
出費をおさえるために、築45年の団地に引っ越して、
あたらしい毎日を、ゆっくりはじめていくんです。
でも、その団地には、あたたかい人たちがいました。
おせっかいで朗らかな大家さんの鈴さんと、
ちょっと無口で、でもやさしい料理人の司さん。
司さんの薬膳料理をきっかけに、
さとこさんは「食べること」で、からだとこころを整えていきます。
がんばりすぎなくていいんだよって、
この物語そのものが、そっと言ってくれているみたいでした。
団地の住人たちは、みんなちょっとずつ不器用で、
でも、ちゃんとやさしくて、
ちゃんと誰かのことを気にかけています。
さとこさんも、そのなかで、
いまの自分にちょうどいい距離や、ちょうどいい暮らし方を見つけていきます。
大きなことは起きないけれど、
それでも、心が少しずつ癒えていくのがわかって、
読み終えたあとは、わたしも深呼吸したくなりました。
ちなみにこの作品、NHKでドラマ化もされているそうです。
まだ観ていないのですが、あの団地の風や、薬膳の湯気が、
どんなふうに映像になっているのか、そっとのぞいてみたくなりました。

気がつけば、棚の影が長く伸びて、
今日も、いつのまにか夕方です。
プクは、いつものように、しれっと先に帰っていきました。
たぶんもう、あたたかい場所で丸くなってる頃。
わたしはガラス戸を引いて、鍵をかけました。
カチャリ、と鳴って、今日が静かに終わります。
今夜は、本に出てきたすきやきにしようかな。
さとこさんが食べてた黒毛和牛は…おあずけ。
お客様が来なかったから、輸入牛で。
でも、焼き豆腐とネギは丁寧に。
しあわせは、それでじゅうぶん、しみてきます。
きょうも、読んでいただいて、ありがとうございました。
みなさんの今夜の食卓には、どんなおいしいものが並ぶのでしょうか?
またいつでも、ふわりとお立ち寄りくださいね。
Amazonプライム会員の方は無料で読めますよ。(2025年8月現在)
読み放題が終了する前にぜひ。空気感が素敵なおススメできるマンガです。
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