【閑古鳥雑貨店のプク】やさしくふいて、しっかり吸って、ずっとそばにいてほしいあの子|imaa 今治タオル
珍しくお客様が来た、と思ったら営業さん。
そして残ったのは、売上ゼロと白い布。
でも不思議と、悪くない気分。
だって今日は、この布が主役だから。

今日は珍しく午前中からお客様がいらっしゃいました。
「いらっしゃいませ」
と迎えたその人は、お水のように透明でさわやかな笑顔の男性。
でも――よく見ると、ウォーターサーバーの営業さんでした。
「大変ですね」と思わず口にして、逆にお冷をお出ししました。
外は35度を軽く超える超真夏日。
冷たいグラスを両手で受け取った彼は、ほっと息をついていました。
「買ってあげたいけれど……」
心の中で小さくつぶやきます。
うちには、閑古鳥さんが一杯住んでいて、
今はその子たちの食費で精いっぱいなのです。
お見送りをして、ふと気がつきました。
椅子の上に、小さな忘れ物。
白地に赤と青の四角が並んだ、小さなタグ。
――あ、これ、今治タオルのマークだ。

私も昔、お友達にプレゼントしたことがあります。
厳しい品質基準をクリアした、肌ざわりの良いタオル。
私のおすすめギフトです。
そのタグを見つめているうちに、ふと頭の中に物語がひらきました。
《ちいさなタオルのいまばりくん》
あるところに、小さなタオルの男の子がいました。
名前は「いまばりくん」。
お日さま色の糸と、海の色の糸で織られた、やさしい手ざわりのタオルです。
いまばりくんは、毎日ご主人さまの汗をぬぐいます。
額ににじんだ小さな雫も、首すじをつたう大きな汗も、
どれもそのままにしておけば冷たくなってしまうから。
「大丈夫?」
ふわりと包み込むと、ご主人さまの顔が少し和らぎます。
その一瞬の笑顔が、いまばりくんの何よりのごほうびでした。
ご主人さまは言葉にしないけれど、
きっと「ありがとう」と思ってくれている。
そう信じて、いまばりくんは今日もそばにいます。
やがて一日の終わり、
ご主人さまの手から離れて、温かいお湯にくぐると、
疲れがやさしくほどけていきます。
また明日、笑顔に会うために。
現実に戻って、私はタオルをそっとたたみました。
外はまだ、照りつける陽射し。
店内は静かで、壁の時計の音だけが小さく響きます。

棚の間を、風がすり抜けていきました。
今日はもう、お客様も来ないでしょう。
忘れ物のタオルのことも、営業さんのことも、
また明日、ゆっくり考えればいい。
――明日は、お客さんが来るといいな。
きっと、このタオルのご主人さまも、一緒に。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また思い出したときにでも、ふらりと遊びにいらしてくださいね。
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