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新人介護士さんが「迷惑をかけたくない」と焦るとき|安心して学べる環境も指導の一部【連載2/4】



こんにちは!
元ITエンジニアで現役介護福祉士のやなぎです🌱

現在、「新人さんの経験を、学びに変えるために」というテーマで、4回に分けて記事を書いています。

第1回では、介助を経験した回数が増えることと、その経験が本人の中に学びとして残ることは、必ずしも同じではないということを書きました。

一日に多くのことを教わるよりも、一つでも「今日はこれが分かった」と思えるものを持ち帰る。
その小さな積み重ねが、新人さんの力になっていくのだと思います。

ただ、一つずつ学びたいと思っていても、落ち着いて目の前の介助に向き合えないことがあります。

先日、一緒に行動した新人職員さんの様子を見ながら、僕が特に気になったのは、

「自分が遅れると、このあとの職員さんに迷惑をかけてしまう」

と新人さんが話してくれた気持ちでした。

もちろん、すべての新人さんが同じ不安を抱えているとは限りません。
本人の性格やこれまでの経験、職場の人員配置や業務量によっても、不安の形は変わると思います。

今回は、僕が現場で見た一つの姿をもとに、新人さんが抱えやすい「迷惑をかけたくない」という焦りと、安心して学べる環境について考えてみたいと思います。


新人さんは、自分の介助だけを見ているわけではない

新人さんが介助に時間をかけていると、
「慌てなくて大丈夫ですよ」
「もう少し落ち着いて行いましょう」
と伝えたくなることがあります。

ただ、その新人さんの様子を見ていると、気にしているのは目の前の介助だけではないように感じました。

自分が遅れれば、次の利用者さんを待たせてしまう。
予定していた業務が後ろへずれれば、そのあとを担当する職員に負担がかかる。
指導員が長く付き添えば、その人自身の仕事も進まなくなる。

まだ目の前の介助だけでも考えることが多い時期に、周囲の職員の動きや、そのあとの予定まで自分の責任として抱えているように見えました。

「迷惑をかけたくない」という気持ちは、単に注意されたくないから生まれるものではないと思います。

周りの役に立ちたい。
早く仕事を覚えたい。
自分のせいで誰かを困らせたくない。

そのような責任感や周囲への配慮が、焦りにつながることもあるのではないでしょうか。


焦るほど、目の前の介助に集中しにくくなる

新人さんは、介助をしながら多くのことを考えています。

利用者さんへの声かけ、介助の手順、安全の確認、前回教わったこと、今伝えられたこと。

そこへさらに、
「次の予定に間に合うだろうか」
「遅いと思われていないだろうか」
という不安が加わります。

考えることが増えるほど、利用者さんの表情や姿勢を落ち着いて見る余裕は少なくなります。

分からないところがあっても、質問すればさらに時間がかかると思い、そのまま進めてしまうこともあります。
介助が終わっても、うまくいかなかった理由を整理する前に、すぐ次の業務へ向かわなければなりません。

その結果、新人さんの中には、
「何とか終わった」
「また時間がかかってしまった」
という感覚ばかりが残ってしまいます。

新人さんが学ぼうとしていないわけではありません。

目の前の介助を安全に行うことと、周囲へ遅れを出さないことの両方を抱え、学んだことを整理するための余裕が残っていないのだと思います。


「ゆっくりでいいですよ」だけでは、安心できないこともある

焦っている新人さんに、「慌てなくて大丈夫ですよ」と伝えることは大切です。

ただ、言葉では大丈夫だと言われていても、周囲の職員が忙しそうに動き、次の予定が迫っていれば、簡単には安心できません。

新人さんからすれば、
「本当に遅れても大丈夫なのだろうか」
「結局、あとで誰かが残りの仕事をするのではないか」
という不安が残ります。

安心して介助に集中してもらうためには、気持ちを落ち着かせる言葉だけでなく、何を優先すればよいのか、どこまで自分で行えばよいのか、時間がかかった場合はどうするのかまで伝える必要があると思います。

たとえば、

  • 「今日は速さより、安全な立ち位置を確認しましょう」

  • 「ここまでは一人で行い、難しい部分は一緒に進めましょう」

  • 「時間が押した場合は、このあとの業務はこちらで調整します」

と具体的に伝える。

何を意識すればよいのか。
どこまで任されているのか。
予定より時間がかかったときは、誰がどのように調整するのか。

そこまで見通しが持てて初めて、新人さんは「今はこの介助に集中してよい」と思えるのではないでしょうか。


安心して学べる環境も、指導の一部

新人指導というと、介助方法を教えたり、間違っている部分を伝えたりすることが中心になりやすいと思います。

もちろん、安全な方法や正しい手順を伝えることは欠かせません。

ただ、教えた内容を新人さんが落ち着いて受け取れるように、時間や業務の流れを整え、本人の状態を確認することも、指導の一部なのだと思います。

1.時間が押してから引き取るのではなく、最初から流れを組み立てておく

新人さんの介助に時間がかかり、次の業務に間に合わなくなりそうになったとき、指導員が途中から介助を引き取ることがあります。

状況によっては、途中で交代することが必要な場面もあります。

ただ、時間がなくなってから指導員が慌ただしく介助を引き取ると、新人さんは、
「自分が遅かったから代わられてしまった」
「やはり周りに迷惑をかけている」
「次はもっと急がなければならない」

と感じるかもしれません。

助けるための対応が、かえって新人さんの焦りを強めてしまうこともあります。

そのため、新人さんと一緒に業務へ入る日は、時間が押してから対応を考えるのではなく、最初から新人さんが学ぶ時間を含めて、一日の流れを組み立てておく必要があると思います。

今日はどこまで新人さんに任せるのか。
時間がかかりやすい介助のあとには、どのくらい余裕を持たせるのか。
予定より時間がかかった場合、次の業務をどのように調整するのか。

こうしたことを、あらかじめ指導する側で考えておく。

見通しが最初から用意されていれば、新人さんも「自分のせいで一日の流れが崩れている」と一人で抱え込まずに済みます。

2.時間管理を、新人さんだけの責任にしない

新人さんは、まだ一人で業務全体の時間を見ながら動ける段階ではありません。

目の前の介助だけでも考えることが多い中で、次の業務との兼ね合いや、ほかの職員の動きまで調整するのは難しいと思います。

指導員と一緒に動く期間でも次の業務へ押すことが続く場合は、新人さんの速さだけでなく、時間の取り方や任せる範囲にも見直せるところがないか、考えてみる必要があると思います。

新人教育には、
介助技術を教える力だけでなく、新人さんが今どこまでできるのか、どのくらい時間がかかるのか、今日はどこまで任せるのかを判断する力も必要です。

介助技術と、それを相手に合わせて伝える技術は、同じものではありません。

僕自身も新人さんと一緒に動く中で、教える側には、教える側の学びが必要なのだと改めて感じました。

一方で、指導員一人の工夫だけでは調整できない人員配置や業務量もあります。指導員自身が通常業務を抱えたまま新人教育も任されている場合、時間に余裕を持たせたくても難しいことがあります。

そのような状況まで、指導員個人の力量の問題にしてはいけないと思います。

必要に応じて、施設全体で新人さんを受け入れる日の配置や業務分担を考える。安心して学べる環境づくりは、指導員一人だけに任せるのではなく、現場全体で支える必要があるのだと思います。

3.「たぶんできている」で終わらせず、その日のうちに確認する

新人さんが介助を行ったあと、大きな問題が起きなければ、「たぶんできているだろう」と判断して、そのまま次の業務へ進んでしまうことがあります。

ただ、新人さん本人は、何が合っていて、どこに不安が残っているのかを整理できていないかもしれません。

指導員から何も言われなかったため、「これでよかったのだろう」と思っていても、実際には手順の一部を理解できていなかったり、本人なりの不安を抱えたまま進めていたりすることもあります。

だからこそ、任せたあとに「たぶん大丈夫」で終わらせず、少なくともその日の業務が終わる前に、できたことや困ったことを確認することが大切だと思います。

「今の介助で、困ったところはありましたか」
「一人で行う中で、不安だった部分はありませんでしたか」
「次に同じ介助をするとしたら、何を意識したいですか」

このように、一度立ち止まって聞いてみる。

指導員からも、
「今日は声をかけてから動けていました」
「利用者さんの足元を確認できていました」
「次は立つ位置を少し近づけてみましょう」
と、できたことと次に確認したいことを具体的に伝えます。

毎回、長い振り返りをする必要はありません。

介助のあとや勤務の終わりに、一つ確認し、一つ伝える。
短い時間でも、何ができたのかを確かめられれば、
「今日も何もできなかった」という感覚だけを持ち帰らずに済みます。

4.確認するのは、できていないところを探すためではない

新人さんの介助を確認することは、間違いや不足を探すことだけが目的ではありません。

できていないところばかりを細かく探されれば、新人さんは「また何か指摘されるのではないか」と身構えてしまいます。

確認する本来の目的は、新人さんが独り立ちしたあとに、本人も、周囲の職員も、利用者さんも困らないようにすることだと思います。

一人で介助するようになってから、
「実は、ここの手順をよく分かっていなかった」
「利用者さんによって変える部分を知らなかった」
「不安だったけれど、聞けないまま進めていた」
と分かれば、新人さん本人も苦しくなります。

周囲の職員にも負担がかかり、利用者さんの安全や安心にも影響するかもしれません。

だからこそ、独り立ちする前に、できていることと、もう少し確認が必要なことを一緒に整理しておく。

確認は、新人さんを評価して選別するためのものではありません。

  • 新人さんが安心して一人で働けるようにすること。

  • 周囲の職員が安心して仕事を任せられるようにすること。

  • 利用者さんが安全に介助を受けられるようにすること。

そのために行うものだと思います。

5.本人の不安や自信を、対話から聞き取る

安心して学べる環境をつくるためには、新人さん本人を知るためのコミュニケーションも必要です。

ここでいうコミュニケーションは、休憩中の雑談を増やすことだけではありません。
もちろん、何気ない会話から関係がつくられ、相談しやすくなることもあります。

ただ、指導するうえでは、本人が仕事の中で何に不安を感じているのか、これから何を覚えたいと思っているのか、反対にどの業務には少し自信を持てているのかを、的確に聞き取ることも大切です。

指導員から見れば順調に見えていても、新人さんの中には不安が残っているかもしれません。
反対に、指導員が心配している部分でも、本人は以前より自信を持てるようになっていることがあります。

本人が何に困り、何を目指し、どこまでできていると感じているのかを知らないままでは、指導する側の判断だけで研修が進んでしまいます。

たとえば、新人さんが「移乗介助に自信がありません」と感じているのに、指導員は「何度も経験しているから、そろそろ一人で大丈夫だろう」と考えているかもしれません。

反対に、新人さんが「食事介助は少しずつ落ち着いてできるようになりました」と感じているなら、その自信を認め、次の課題へつなげることもできます。

こうした認識の違いを小さいうちに確かめるためにも、指導員には説明する力だけでなく、本人の言葉を引き出し、指導に必要な情報を聞き取る力も求められるのだと思います。

ただ、「不安なことはありますか」と聞くだけでは、「大丈夫です」と答えて終わることもあります。

「今日の介助で、一番判断に困ったところはどこでしたか」
「明日もう一度行うとしたら、確認しておきたいことはありますか」
「今は一人でできそうなことと、まだ一緒に行いたいことは何ですか」

と、答えやすい形で具体的に聞くことで、新人さん自身も、自分の状態を整理しやすくなります。

本人の希望をすべてそのまま受け入れるということではありません。

安全面や独り立ちまでに必要なことも含めて、本人の気持ちを知ったうえで、次に取り組む内容を一緒に考えていくことが大切なのだと思います。


安心は、言葉だけでなく準備と対話から生まれる

「焦らなくて大丈夫です」と声をかけることは大切です。

ただ、新人さんが本当に安心して学ぶためには、言葉だけでなく、指導する側の準備や関わり方も必要です。

  1. 時間が押してから慌てて介助を引き取るのではなく、新人さんの習得状況に合わせて、最初から業務の流れを組み立てておく。

  2. 時間管理を新人さんだけに背負わせず、必要に応じて指導員や周囲の職員が支える。

  3. 任せたあとは「たぶん大丈夫」で終わらせず、その日のうちに、できたことや不安なことを確認する。

  4. できていない部分を探すのではなく、独り立ちしたあとに本人も、周囲の職員も、利用者さんも困らないように、一緒に確認していく。

  5. そして、本人が何に不安を感じ、どこに自信を持ち、これから何を覚えたいと思っているのかを、対話の中から聞き取る。

こうした準備と対話が重なることで、新人さんは「自分の状態を分かってもらえている」「分からないことを伝えても大丈夫」と感じられるようになるのだと思います。


速さは、安全に行えるようになった先についてくる

介護現場では、時間を意識して動くことも必要です。
新人さんにも、少しずつ業務の流れや時間の感覚を身につけてもらわなければなりません。

ただ、手順や安全確認がまだ定まっていない段階で速さを求めると、急いで動くことだけを覚えてしまう可能性があります。

まずは、落ち着いて行えば安全にできる。
次に、同じ方法を繰り返しても安定してできる。
その先に、周囲の状況を見ながら、時間内に進められる段階があるのだと思います。

速さを求めることが悪いのではありません。
速さを求める順番を考えることが大切なのだと思います。


新人さんだけに「焦らない努力」を求めない

新人さんへ、「焦らなくて大丈夫です」「分からないことは聞いてください」と伝えることは大切です。

ただ、焦らずに学べるかどうかを、新人さん本人の気持ちの持ち方だけに任せてはいけないと思います。

  • 質問しても大丈夫だと思える雰囲気。

  • 今日は何を覚えればよいのかが分かる目標。

  • 現在の習得状況に合った、任される範囲。

  • 時間がかかったときに、指導する側や周囲の職員が調整してくれる安心感。

  • そして、自分が何に不安を感じ、どこまでできるようになったのかを、指導員と一緒に確認できる時間。

そのような環境があって初めて、新人さんは目の前の介助に集中しやすくなります。

「迷惑をかけたくない」と思う新人さんほど、周囲を気にかけ、一生懸命に仕事を覚えようとしているのかもしれません。

その気持ちを否定するのではなく、

「今は、学ぶことも仕事の一つです」

と伝えられる現場でありたいと思います。

指導員の役割は、介助方法を教えることだけではありません。

新人さんが安心して考え、試し、分からないことを伝えられるように、時間と環境を整えること。
本人が感じている不安や自信を聞き取り、次の指導につなげることも、指導の大切な一部です。

同時に、その環境づくりを指導員一人に背負わせず、周囲の職員や施設全体で支えることも必要なのだと思います。


ただ、安心して練習できる環境があっても、先輩の見本を見ただけでは、同じようにできないことがあります。

新人さん本人も、「見ていたはずなのに、なぜできないのだろう」と自信をなくしてしまうかもしれません。

次回は、見本を見てもすぐにできるようにならない理由と、新人さんが次の介助でも使える伝え方について考えてみたいと思います。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました🍀



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