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【ショートショート】 忘れる星


地球にやって来た異星人は、不老不死ではなかった。

ただ、分裂した。

寿命が近づくと、体は二つに分かれる。

そして二つになった個体は、それまでの記憶を完全に受け継いだまま、それぞれ別の人生を歩み始める。

その文明には「先祖」という概念がない。

昨日の自分が、今日の自分になるだけだからだ。

もちろん文字もなかった。

本もない。

図書館もない。

知識は失われず、個体の中を流れ続ける。

だから書き残す必要がなかった。

地球の学者たちは羨望した。

「なんと効率的な文明だ。」

「歴史を忘れない種族だ。」

「私たちもそうなれればいいのに。」

異星人は静かにうなずいていた。


しかし、ある日、一人の異星人が古本屋に迷い込んだ。

棚に並ぶ何万冊もの本を見て、動かなくなった。

店主が尋ねる。

「何かお探しですか。」

異星人は一冊の小説を抱きしめるように持ち、ゆっくりと答えた。

「これは……誰の記憶ですか。」

「作者ですよ。」

「では、この作者は今どこに?」

「ずっと昔に亡くなりました。」

長い沈黙が流れた。

やがて異星人は、小さく息をついた。

「羨ましい。」

店主は耳を疑った。

「羨ましい?」

「私たちは、自分の記憶しか持てません。」

「だから、他人の人生を生きたことがありません。」

その日から彼は、宇宙船にも戻らず、本を読み続けた。

歴史書を読み、詩を読み、日記を読み、名もなき人の手紙を読んだ。


帰還の日。

地球代表は最後に尋ねた。

「地球で最も価値があると思ったものは何ですか。

ピラミッドですか。

量子コンピュータですか。

それともインターネットですか。」

異星人は首を横に振った。

そして、港町の小さな古本屋を振り返りながら、静かに微笑んだ。

「忘れることです。」

「あなた方は忘れるから、書く。

書くから、他人の人生を残せる。

私たちの文明には、何万年生きても、一度も生まれなかった宝物です。」

(完)


このショートショートは、「宇宙叙事詩の科学ノート 記憶と選択編 第4回 有性生殖はなぜ生まれたのか」に対する「frog001」さんからの、「プラナリア」という大変興味深い動物に関するコメントから生まれたものです。


※ noteによるAI自動翻訳(英訳)版も公開されています。興味のある方は、下記からご覧ください。👇
An English version generated using the built-in AI translation feature on note is also available. If you’re interested, please check it out below. 👇
🌐 [Short Short] The Planet of Forgetting


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