【ショートショート】 次は、君たちの番だ
西暦2212年。
観測史上最大級の小惑星が、十年後に地球へ衝突することが確定した。
回避確率、0.0000003%。
人類は初めて、自らの終わりを数字として突きつけられた。
各国は統合され、地球連邦政府が樹立された。
検討された計画は三つだけだった。
第一案。
核融合兵器群による小惑星の破壊、あるいは軌道変更。
第二案。
火星や系外惑星への大規模移住。
第三案。
生命の「種」を宇宙へ放つ計画。
微生物、植物の胞子、動物の受精卵、遺伝情報、人工知性が管理する生命ライブラリ。
直径わずか数センチのカプセル数十億個を、あらゆる方向へ放出する。
もし人類が滅んでも、どこか遠い未来、どこか遠い星で生命史が再び始まるかもしれない。
その計画は「播種計画」と名付けられた。
しかし世界は割れた。
「生命のない惑星なら構わない。」
「原始生命がいたらどうする。」
「宇宙を汚染する権利が我々にあるのか。」
「人類最後の行為が侵略であってよいのか。」
十年は、あまりにも短かった。
2221年。
第一案は失敗が確実となった。
人類の技術では、小惑星を止められない。
第二案も放棄された。
建造中の恒星間船は完成しても、目的地へ着く前に機能停止する可能性が極めて高い。
残されたのは、播種計画だけだった。
だが、最後まで決議はまとまらなかった。
「我々は生命を残す義務がある。」
「いや、宇宙へ勝手に生命をばらまく資格などない。」
歴史上最大の会議は、結論を出せぬまま閉会した。
そして2222年。
異変が起きた。
小惑星の軌道が、何の前触れもなく変化したのである。
人類の技術では説明できない規模だった。
衝突予測点は、地球から大きく外れた。
世界中が歓喜と恐怖に包まれる中、新たな報告が入る。
「……小惑星の影に巨大反応。」
最初は一つだった。
やがて十。
百。
千。
ついには数え切れなくなった。

超大型宇宙船の大船団が、静かに地球へ向かっていた。
全世界へ通信が送られる。
人類は息をのんだ。
画面に映ったのは、人間でも機械でも判別できない存在だった。
その代表は、ゆっくりと言葉を発した。
「安心してほしい。」
流暢な地球語だった。
「我々は征服のために来たのではない。」
誰も声を上げられなかった。
代表は続けた。
「諸君らが“播種計画”と呼んだ構想を観測した。」
「その議論が始まった瞬間、救援対象として登録された。」
会場は静まり返った。
そして最後に、代表は微笑むように言った。
「ようやく、君たちも種を蒔こうとしたのだな。」
一拍の沈黙。
「安心したまえ。」
「我々もまた、遥かな昔、別の文明が蒔いた種から始まった生命なのである。」
その瞬間、人類は初めて理解した。
宇宙文明とは、巨大な帝国ではなかった。
生命とは、勝者でも支配者でもなかった。
それは、自ら生き、子孫を残し、未来へ可能性を託そうとする、小さな営みの連鎖だった。
会議場の片隅で、一人の少女が窓の外の星空を見上げてつぶやいた。
「じゃあ……次は、私たちの番なんだね。」
誰も否定しなかった。
※ noteによるAI自動翻訳(英訳)版も公開されています。興味のある方は、下記からご覧ください。👇
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「次は、君たちの番だ」が、
先週特にスキを集めた #創作 の記事に選ばれました。
人類が宇宙へ生命の「種」を託す物語として書き始めましたが、
書き終えてみると、最後に問いかけていたのは未来ではなく、
「今を生きる私たち」だったような気がしています。
作品を読んでくださり、たくさんのスキを届けてくださった皆さま、
本当にありがとうございました。🌌🚀
2026/07/27
