[エレキと戯れる]第5回 理想の弦高を導き出す指標(後編)
必須ではありませんが、弦高(げんこう)の基礎知識と調整方法を書いた前編を読んでもらってる前提で書いてますので、宜しければ先にこちらをご覧ください。
ギターを始めて間もない人が「弦高は好みでいいんだよ」と言われてどう思うだろうか?
「どうでもいい、ってわけじゃなさそうだし」
「好み、と言われても、好みも何も、まだないし」
「人それぞれなのは何で?」
「結局どうすればいいのさ」
「誰かバシッと示してくれ~」
20年以上封印していたエレキ・ギターを衝動買いし、2ヶ月ほど弾いてきたた私は、心も体も初心者に戻ってる、と気づいたんだ。初心者も2度目になると、この気持ちがよく分かる。
幸い知識は残ってるので、どうすれば良いかもわかるんだけどw
こんな私だから、自分にあった弦高を見つけるお手伝い、は言い過ぎか。まあ、方向性くらいは示せると思う。
弦高に対するモヤモヤが解消されますように、と祈りながら書いたので、初心者さんに是非読んでみて欲しい。
自分なりに弦高の好みがはっきりしてる方に、それは盲点だったよ、と言わせたいと思いながら書いたこともあわせて告白しておくよ。
弦高は弾きやすさと音色のせめぎ合い
これはこの通りなんだけど、弾きやすさと音色という、まったく違うものを天秤にかけてるので、人によってまちまちで正解がない。 ”好み” ってことに落ち着くのそのためだ。
”弾きやすさ” に関わるのは弦高だけじゃない。重さ、スケール、ネックの幅と形状、指板のラジアス、フレットの高さ、弦と弦の間隔、といった要素が関わってくる。どれも後から変えることが難しい基本仕様ばかり。ところが、
弦高を下げると顕著に弾きやすくなる。
先に挙げた基本仕様をど返しできるくらい。
これは一度弦高を下げてみれば感じるられるのでわかりやすい。
わかりにくいのは ”音色” の方だ。
なので、はじめに、音色にスポットをあてて、4つの基準ラインを導き出してみた。後半は、音以外の要素で弦高を考えてみたよ。
1.最低基準=音づまり解消
ベンド(チョーキング)と言って、弦を押さえたままグイッと引っ張って、音程を滑らかに上げる奏法があるんだけど、1弦(または2弦)をベンドした時、上げてる途中で音が止まることがある。この現象が 音づまり。
以前の記事で15フレットだけ高かったのとは根本が違う。フレットの高さが揃っていても、特定のフレットよりも高いポジションで起こる。
原因は、指板(フレット)が山なりに湾曲してることに起因する、構造上仕方ない現象なんだ。仕方ないにしても、
音づまりする=弾けないフレーズがある
ということだから、これは困るね。
曲にもよるけど、現代のポップス、ブルース、ロックなど、普段耳にしてる音楽で一切やらない、ってのは考えられない。このギターでハイポジションのベンドは一切しません、って決めない限り、
音づまり解消は必須、と考えていい。
指板の湾曲具合は Radias(ラジアス=半径)で表される。頭文字をとってアールと呼ばれ、305Rのように表記される。この場合、半径305mmの弧を描いている指板ってことになる。
このアールが小さいほど音づまりしやすい。
アールなんて買った時点で決まってるじゃん、と嘆かなくてもいいよ。
音づまりは、弦高を上げると解消できる。
そうなると、
ギリ音づまりしない高さ=弦高の最低基準
ってことになる。やったね、最低基準を手に入れた!
12フレット以上のハイポジションを、1フレットずつずらしながら、1弦を指板の真ん中までベンドしてみよう。途中で止まらなければクリアだ。
ただ、音づまりは、フレットが擦り減ったり、ネックがハイ起きしても起こるから、弦高調節で限界を感じたら、楽器店やリペアショップに相談しよう。
ちなみに、Ibanez AZES40 の指板は 250R。1弦の弦高は1.8mmにしていて、音づまりはナシ。
2.高基準=ビビリ解消
ビビるというのは、弾いた弦がフレットに当たって、びびびって鳴る状態のこと。
ビビらなければ、弦の振動がネックと本体に伝わってギターが共鳴し、それが再び弦に伝わって音を鳴らし続け、長いサスティーンが得られる。
この状態を、生音が良く鳴る、って言うんだ。
生音が良く鳴る状態なら、本体やネックの材質、塗装、パーツなどによって、音に違いが生まれる。ピッキングの強弱の幅も広がる。クリーンで鳴らすとそれが顕著に現れるんだ。
反対に、ビビってる間は弦の振幅がどんどん小さくなる。サスティーンは短くなり十分な共鳴も得られない。また、ピッキングのニュアンスが出しにくい。
ただし、ビビるのは鳴り始めだけだから、サスティーンの方は、歪み系のエフェクターを使うことでカバーできたりする。(だたし生音が鳴ってるのではなく小さな弦振動を大きくしてるだけ)
弾く強さによってもビビり具合が変わるしね。
これを踏まえ、
ピッキングのニュアンスを活かす、ことを考えたら、
強く弾いてもビビらない高さ=弦高の高基準
ってラインが導き出せるんだ。
アンプを通すとビビリがわかりにくいから、合わせる時は、生音を聴きながらやるといいよ。
3.最高基準=ボディと弦を離す
なんとなくだけど、ボディと弦を適度に離すと良く鳴ると感じてる。弦のテンションも張り詰めて固く、音が凛としていて、姿勢を正してるように感じられる。
バイオリンやチェロなどは、ボディと弦にかなり距離がある。アコースティックな弦楽器は、弦振動をボディが増幅するよう出来てるから、ある程度の距離は、楽器として欠かせない仕様だと思ってる。
私はやったことないけど、先の高基準より、もっと高い弦高で弾いてたギタリストがいたんだ。
私が大好きなギタリスト、Stevie Ray Vaughan(スティービー・レイ・ボーン)さんは、暴れ馬のような激しいサウンドが特徴で、弦高が高いということでも有名だった。
時と場合によって使い分けていたらしいけど、基本的にすごく高い。
6弦で4mm近く、1弦で3mmくらい、
時にはイモネジが外れてしまうほど上げていたというい話もある。
その上、張ってた弦が13-58の極太セットらしい。
なによりもギターの鳴りを優先したセッティングなんだと思う。
暴れ馬セッティングを弾きこなせる人はそういないだろうから、最高基準は、どんなに高くてもココまで、という目安にw
ボディと弦の距離といえば、ジャンボフレット(高さが2mm以上ある大きめのフレット)って、高さの分、はじめから弦とネックが離れてるし、弦高を下げる方向に追い込みやすい。弾きやすさと音色のバランスが取りやすくて、いいんじゃね!と思ってる。
4.低基準=ビビりが心地いい
低くてもこのくらいと思うのが、ビビリが心地よく聴こえるラインだ。
ビビってる音って、弦とフレットがぶつかる金属が混じる。生音だとただ濁ってる感じに聴こえるけど、アンプを通すと少々のビビリは、ピッキングとは違ったニュアンスに聴こえる。
潰れた感じがエレキ・ギターならではの醍醐味に感じる。
弾いてから音が消えるまでずっとビビってるほど弦高を下げてあると、アンプを通しても、音楽とは程遠いガラクタのような音がするw そこから弦高を上げていくと、ある地点で、ガラクタだった音がギターの音に変わる。音楽的な味付けに聴こえる。この時の弦高が ビビりが心地いい=低基準 になる。
人によって聴こえ方や感じ方が違うから、低基準の弦高も人によって差がある。諸先輩方が言う ”好み” はこういうことを指してるんだ。
低基準を探す時は、必ずアンプから出る音を確かめること。音は歪ませずクリーンで。生音だとビビる音の方が大きいし、歪ませると音が変わるラインがぼやけて分かりづらいからね。
もし、低基準で音づまりするなら、音づまりが止む最低基準=低基準ってことだ。その時は最低基準まで弦高を上げるしかない。
* * *
以上、4つの基準ラインは参考になりそうかな?
実際にやってみたら弦高を測ってメモっておこう。
ここからは、音以外の要素で弦高を考えてみたよ。
* * *
5.弦高が高いとチューニングが合わない
2週間ほど前までは、少々強く弾いてもビビらないよう 6弦2.5mm、1弦2.0mm で弾いてたんだ。高めだね。
響きはクリアで良かったんだけど、音程がズレてる気がしてね。もちろんクリップチューナーでまめにチューニングしてるし、オクターブ・チューニングも合わせてある。
そこでクリップチューナーで各弦・各フレットの音程を見ていったらほとんど高い。中には 20cent(セント)以上高いところもあったんだ。
ギターのチューニングを100%ピッタリ合わせることは出来ないってのはわかってるけど、気持ち悪く感じるほど音程がズレるのはダメだ。
原因はどうも、弦高が高い分、指が弦に触れてから押さえきるまでに、弦を引っ張るから、音程が高くなるって気づいたんだ。
対策として、5フレットでチューニングを合わせれば良いんじゃないかと考えた。距離による音程が上がった状態でチューニングする作戦。
いいと思ったんだけどね、オクターブチューニングがどうにも合わない。オクターブを下げたいのだけれど6弦のサドルとブリッジとの隙間がなくなり下げれなくなった。
そしてこれが決定的なんだけど、最も響く開放弦の音程がズレてるので、音程のズレが余計気になりだしたw
あきらめて、ズレが気にならなくなるまで弦高を下げたよ(涙)
まあ強く弾いた時と弱く弾いた時の違いは音に出るので由としてる。
弦高が高いほどチューニングを合わせにくい
合わない原因は他にあるかもしれないし、セッティングを追い込めば合うポイントが見つかるかもしれないが、時間がかかりそうだ。
いい方法があったらぜひ教えて欲しい。
6.本番と練習と、基礎練習
ギターを弾くステージ(目的)によって、弦高は変わるでしょう、という話だよ。あくまで私の持論ね。
本番は ”聴かせる” ことが目的。ライブやレコーディングなんかがそうだね 。
練習は ”作り込む” ことが目的。曲やフレーズを覚えたり、他のメンバーと合わせたり、作曲したり、新しい奏法を身につけたり、その精度を上げていったり、本番を想定してアンプやエフェクタのセッティングを詰めたり、といったこと 。
この2つは、”自分が最高のパフォーンスが引き出せる状態” にセッティングするもの。だから、弦高は人それぞれ ”好み” でまったく問題ナシ。
ただ、基礎練習だけは別だと考えてる。
基礎練習は ”思い描いた通り弾けるようになる” ことが目的。そのために身につけるべきスキルが山ほどあるし、奥が深い。
左手で目的のフレットを押さえる
右手で目的の弦を弾く
左手の4本の指をバラバラにコントロールする
右手の回転と振りをコントロールする
左手と右手のタイミングを合わせる
強弱をつけて弾く
指板を見ずに弾く
リズム感を育てる
といったものがあるね。
ギターを奏でるための基礎を磨くのが基礎練習だ。
ギターと自分を馴染ませる練習と言ってもいい。
基礎を磨くにあたって、必須と考えていることが2つある。それは、
”正しいチューニング” と ”きれいな響き” だ。
チューニングの方は、まめにチューニングする、これだけでいい。
ストローク練習を終えたらチューニング、クロマチック練習を終えたらチューニング、なにか違和感を感じたらチューニング、って具合。
私は始めたばかりの頃、お高いチューニングメーターが買えず、音叉で合わせてたんだ。合っている状態を知らないまま弾き続けてたら、音程に対する感度が鈍くなって、チューニングのズレに気づけなくなってしまったんだ。
チューニングメーターを買って、耳がバカになってたことに気づいた。
今はお求めやすい価格でクリップチューナが買えるいい時代。
チューニングは弾く以前の話だから、めんどくさいと思わないで、
チューニングは狂うもの、こまめに合わせるもの、と思って励もうぜ。
基礎練習に限ったことではないけどね。
きれいな響きを必須と考えるのは、弾けてる時、弾けてない時の、違いがわかりやすいから。ミスやニュアンスの違いに気づけるんだ。
ギターの響きが先生というわけ。
そうなると、弦高は高めで、アンプを通す場合もクリーンでやることになる。
そして次が最重要ポイントだけど、
響きを良く聴き感じること
基礎練は、右手左手だけでなく、耳も鍛えてるんだ。
始めたばかりだとチューニングの狂いに気づかなかったのが、響きを意識していると、開放弦をジャーンと鳴らしただけでチューニングのズレを感じる瞬間がいずれ来る。はじめは違和感を感じるだけかもしれないが、意識して聴く経験を重ねることで耳が育っていくんだ。
また、10回に1回しか綺麗に鳴らせなかったのが、10回に2回成功するようになり、3回4回と綺麗に弾ける割合が増えてくると、地味な基礎練も楽しくなってくる。ほぼミスらなくなった頃には「こうすればもっと綺麗に鳴らせるんじゃね?」といった感じで、いつの間にか高みを目指してるから、基礎練は奥が深い。
多かれ少なかれ第一線で活躍するギタリストは、こうした地味な基礎練習を積み重ねてきた人達だ。
誤解があってはいけないので補足すると、プロよりも初心者の方が基礎練に費やす時間は長くなると思うけど、
基礎練習は全てのスキルのベースを磨くもの
で、初心者とかプロとか関係なくやるもんだよ。
(休憩)著名なギタリストの弦高
同じメーカーの同じモデルであっても必ず個体差があるし、人それぞれなら参考にならないんじゃね?と思うだろうけど、その弦高にした理由の方は参考になると思うよ。
数値はインタビュー記事などを元にしてるけど、理由の方は私の主観も入ってるので正しいかどうかは自分で調べてね。
私が敬愛する George Lynch(ジョージ・リンチ)さんは、テクニカル且つエモーショナルなプレイと、独特なタイム感を持つフレーズが魅力のギタリスト。
6弦1.8mm、1弦1.4mmくらい、でした。(長らくこれを真似ていた)
テクニカルな速弾きギタリストは、このくらい低い方が多い印象だね。
日本人だと、SUGIZOさんは、6弦2.2mm、1弦1.8mm、くらいとのこと。
メーカー出荷時の標準といわれる 2mm-1.5mmよりも少し高めのセッティング。
歪んだ音でもニュアンスを表現できて、バンドを活かすサウンドに寄せた結果のセッティングだと思う。
たまたまだけど、今この弦高なので、狙いっているラインがわかる気がするよ。
もうお一人方、関口シンゴさん。チル・ギターと呼ばれる癒し系のジャンルでご活躍されているギタリストであり、作曲家・サウンドプロデューサでもある。
関口さんは、表現の幅が広く、強弱のつけ方がにくいほど上手い!ニュアンス重視のプレイスタイルがとても音楽的だと感じる方だ。
弦高は、6弦2.0mm、1弦1.5mm、くらい、らしいです。
クリーンなサウンドが多いのでもっと高めと思いきや違ったよ。オールラウンドに使える楽器としてのバランスを重視された結果かなと思う。
この動画で紹介されている3本目のギターは、私と同じ Ibanez AZES シリーズ。20万円以上高いギターと音色を比べても、お値段ほどの差は感じられない。つまり、セッテングの追い込みとテクニックで、ココまで引き上げられるポテンシャルを持ってるギターってこと。安いから音が悪いという言い訳が出来ないw もっとも私に聞き分ける耳があるかってのも疑問だけどw
いずれにしても、もっと出来るよ!と背中を押してくれてると感じるんだ。
7.はじめてギターを弾く方
初めてギターを弾く方は、ビビリや響きを気にせず
弾きやすい弦高まで下げる
ことをオススメするよ。散々響きをプッシュしておいてなんだけど、
弾きにくい=楽しくない
やるからには楽しく!って思うんだ。
まず楽しい!が根本にあれは、慣れるのも覚えるのも早いと思うんだ。
練習も苦にならないし、長く続けられるし、良いことだらけだ。
辛く感じるくらいなら下げてしまおう。
弦高を下げると顕著に弾きやすくなるから。
オススメは、ビビリが気持ちいい=低基準。
これが難しそうだと思うなら、前編の弦高調整を参考にして、サドルのイモネジを全て反時計回りに1周回してみよう。個体差と他のセッティングも絡むからピッタリってことはないけど、計算上0.25mm下がることになる。
どう調整するにしても変える前と後で弦高を測ってメモっておこう。気に入らなければ戻せば良い。それが自分の基準になるからね。
弾き続けてて、ステップアップしたいとか、響きが気になりだしたとか、やりたいジャンルや方向性が見えてきたとか、変わったとか、それって成長してる証だから、弦高はその時に見直せばいいんだ。
できるだけ主観を外そうと試みたけど難しいね。
ここ変じゃね!とか、間違ってる!とか、こういうのもあるよ!とか、ご意見ご感想頂けるとありがたいです。
ご質問も答えられる範囲で頑張りますw
最後に、2026年1月13日現在の私の弦高を残しておくよ。
6弦2.2mm、1弦1.8mm
基礎からやり直す!と決めてるので、響きに重きを置いたセッティング。
いずれは、6弦1.8mm、1弦1.3mm あたりにするつもり。一番パフォーマンスを引き出せてたセッティングだからね。まあ、やり直し期間中に変わるかもしれないけどw
こうなると、普段の練習用&本番用と、基礎練用、2本欲しいね。
ご支援は常時受け付けてますw
ではまた、おやすみなさい、Good Night :-)
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