#33 別れ、再会、そして希望。カギとサクラコが繋いだ『命のバトン』
この記事を書き始めたのは2025年12月。
山籠もりを終えたサルたちがようやく揃った今、改めてこの3ヶ月間の歩みを記録しておこうと思います。
9月中旬から秋の山籠もりに出かけていたサルたちも、12月になりエサ場に戻ってきました。
多くのサルが山籠もりをしている間も、エサ場にほぼ皆勤だったリーダーのビッグや4位オスのガッツも、11月末は遠征に出かけていたようでしたが、12月1日から中心メンバーが揃い、恋の季節恒例のサルたちの賑やかな声が聞こえています。

10月頃は静かだったエサ場が
賑やかになりました
淡路ザルに癒されたくて
山籠もりからサルたちが戻ってくると、帰りを待っていたファンの方々も、大勢来園されるようになります。
3カ月ぶり、あるいは1年ぶりに再会するサルたちに会うことだけを目的に、全国、そして海外からもリピーターの方が集まってくるのです。

さらに、「ずっと来てみたかったんです」と、初めての来園を喜んでおられる方とも何人かお話させていただきました。
想像以上のかわいさに癒され「また必ず来ます」と宣言して帰られる方もいらっしゃいました。

印象的だったのは、やはり皆さんのご様子でした。
子ザルのかわいさにメロメロで、自然と笑顔になる方、撮影しながら思わず「かわいいねえ」と独り言のように声が漏れ出てしまっている方、しばらくベンチに座ってサルたちの行動を静かに観察されている方。
サルたちに癒され、幸せな気持ちを感じていらっしゃることが、表情や声のトーンから真っすぐに伝わってきました。

12月下旬の午後。
暖かな日差しを求めて、サルたちは海側のエサ場の入口付近に集まっていました。
この日は12月の平日ということもあり、来園者は少なめ。
この場所には、私のほかにサル友さんが1人と、杖をつきながら坂道を上がってこられた高齢の男性がいらっしゃいました。
エサ場の入口には淡路ザルたちのための募金箱があるのですが、その近くで遊んでいた子ザルたちを見て「あんたら、本当にかわいいなあ」と目を細めながら、男性はゆっくりと募金箱に近づいていかれました。
片手に持っていた杖を募金箱に立てかけると、空いた手を箱の上に置いて体を支え、反対の手でズボンのポケットから小銭を取り出して箱に入れていらっしゃいました。
そして「あんたらのお年玉や」と笑顔でサルに話しかけながら、続けて2~3回募金されていました。
ちょうどその直後のことです。
近くに来たスタッフさんを見つけた男性が「ここには何頭くらいいるの?」とお声を掛けられました。
それをきっかけにスタッフさんと男性のお話が始まりました。
最初は「ここのサルはかわいいなあ」というお話や、「この子らにお年玉を入れといたよ。頭数が多いから、ちょっと足りないかもしれないけどね」といった、優しさの溢れる内容でした。
一瞬の間があったあと
「実は娘が、ここのサルがかわいいなあ、と言っていて…。末期がんだったのだが、ここに来たときにサルを気に入り、『生まれ変わったらここのサルになりたい』と言っていたんです。亡くなって一年ほど経ったので、どんなサルたちなのか見たくて、家族と一緒に初めて来てみたんです」とお話されました。
一緒に来られていたのは男性のお姉さんのようで、男性の代わりにタブレットでサルたちの写真や動画をたくさん撮影されていました。
男性と同じように「かわいいねえ、かわいいねえ」と愛おしさがそのまま言葉になって溢れ出しているようでした。
「きっと空から、毎日ここのサルたちを見てるでしょうね」
男性のお話を聞いたスタッフさんがそうおっしゃると、「うん、うん」と男性はうなずいていらっしゃいました。

サルたちがのんびりと日向ぼっこをする傍らでこのお話を聞きながら、ここには「人を癒す力」があるのだと、と改めて深く感じ入る出来事でした。
異例の山籠もりシーズン
今年の秋の山籠もりは、私が初めてじっくりと観察できた昨年とは、全く様子が違うものでした。
※昨年の山籠もり中の様子は、『#23サル達は秋の遠足に!』『#25ハナレ猿達の行動が変化!』に書いています。
『#31秋の山籠もり観察記』に9月後半の様子を記載していますが、今年は群れの一部のサルたちが山籠もりには出かけずエサ場に居残る、という例年とは違う行動が見られました。

ビッグ(ビーちゃん)
例年、体力的な問題などで、山奥までの遠征には参加せずエサ場に残る群れのサルもいるのですが、今年は11月末まで、リーダーのビッグと4位オスのガッツが毎日のようにエサ場に出勤。
高齢のメスを中心に20人前後のサルも彼らと共に行動していました。

ガッツ(ガッちゃん)
メスたちは、時々遠征していたサルたちがエサ場に戻ってくるタイミングで、何人かメンバーが変わっていましたが、高齢のメスたちはビッグやガッツに帯同しているようでした。
その中には、現在メス最年長、今年(2025年)29歳になったサクラコと、9月中旬頃から体力が低下していたカギがいました。

サクラコさん
カギの正確な年齢は分かりませんが、カギの姉が26歳だと思うので20代前半だと思います。

カギさん
今回はこの2人の様子を中心に、秋の山籠もりシーズンの観察記録をお届けします。
9月 みんなは秋の遠足に
2025年9月19日。
この日は休園日開けの金曜日。
多くのサルたちは山籠もりに出かけていて、午後2時30分頃のエサ場にはカギとメカブの2人しかいませんでした。
この日のカギは、特に体調が悪いようには見えず、チャームポイントの大きな目も生き生きとしていました。

チャームポイントは大きな目
強いて変化を感じることを挙げるなら、春頃までは、売店がある駐車場まで下りてきて、スタッフさんにおやつをねだる姿を見かけていましたが、夏頃からは見かけなくなり、足腰が弱くなったのか動きもゆっくりになったことくらいでした。

エサ場に1人だけ
カッコンを満喫するカギさん
2025年9月20日。
この日のカギは、前日よりも少し体調が良くないように見えました。
体を支えるように地面に両手を着き、目がトローンとしています。
一方、隣にいたサクラコは、少し痩せてきたものの、食欲も旺盛で元気にしています。

カギさんとサクラコさん(奥)
体調が良くなくても、仲間がいると心強いのでしょうか。
サクラコや、もうひとりの仲間であるプーサンと一緒にいる時のカギの目はグッと力が入ったように見えました。

なかよし3人娘
左から
プーサン・カギさん・サクラコさん
エサ場にいるサルが少ないせいもあるのでしょうが、この頃から、特にカギとサクラコが一緒に過ごしている光景を頻繁に見かけるようになりました。

サクラコさんの毛づくろいをするカギさん
2025年9月21日。
カギがサクラコの毛づくろいをしていました。
この頃、カギの体調には波があったようで、表情が良い時もあれば、しんどそうに見える時もありました。

サクラコさんがカギさんの毛づくろい
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