見出し画像

【読書記録 -145】最強チームを作る方法 -THE CULTURE CODE-

最強のチームに必要なのは「エース」ではない

最強チームを作る方法 -THE CULTURE CODE-』は、最強のチームを作るためにどんな要素が必要となるかを3つのスキルに分けて、実在している組織の例を挙げながら説いた本だ。

「最強のチーム」とは、2足す2が10になるようなチームのことだ。そんなチームに必要なのはメンバー同士の相互作用だ。本書においては、エース級のメンバーを集めることに注力するよりも、普通の人が「賢く協力する」ことによって、最高の結果を出すことができると説かれている。

著者 ダニエル・コイルは、ベル研究所やGoogle、Disney、Navy Sealsなどの実例を挙げ、成功しているチームに共通する3つのスキルを示している。

1. 安全な環境を作ること
2. 弱さを共有すること
3. 共通の目標を持つこと

安全な環境

大きな成功を収めているチームは、お互いの関係を「家族」という言葉で表現するそうだ。そんなチームのメンバーは、全員活気に満ち溢れていて、完全にリラックスしている。

そして、エンゲージメントが高いことを示す3つのシグナルがあるという。それが「あなたはここにいて安全だ」というメッセージになるのだ。

1. 目の前のメンバーとの交流を大切にする。
2. それぞれのメンバーを独自の存在と認め、尊重する。
3. その関係性がこの先もずっと続くというシグナルを出す。

しかし、それらのシグナルが上手くキャッチされるためには「偶発的な対話が生まれる距離の近さ」が重要になる。

ハリー・ナイキスト

さて、あなたのチームが「最強」であるかどうかを知りたければ、以下の問いを立ててみるといい。

―あなたのチームの文化を知るために、一人だけ会うとしたら誰ですか?―

経営者にこの質問をすると、おそらくトップセールスや優秀な管理職の名前が挙がるだろう。しかし、現場の人に同じ質問をすると、違う人物の名前が挙がるかもしれない。

それは、困ったときに相談したくなる人。
部署を越えて自然と人が集まる人。
誰かに頼まれたわけでもないのに、組織がうまく回るように動いている人。

本書では、ハリー・ナイキストという人物が紹介されている。
彼はベル研究所で働いていた技術者である。しかし、画期的な発明をした人物としてではなく、「組織の文化を体現する人物」として本書に登場する。

最強のチームには必ずハリー・ナイキストのような人物が存在する。そういった人物が上記の3つのシグナルのハブとなり、安全な環境の土台を作っているのだ。本人も気づかないうちに…

本書では、このような役割を果たす人物を「ナイキスト」と呼んでいる。

オートノミーは伝播する

以前、ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』の読書記録の記事を書いたことがある。

あの本には、人が力を発揮するためには「自律性(Autonomy)」が重要だと書かれていた。おそらくナイキストは、その「Autonomy」を最も自然に体現している人なんだろう。

誰かに命令されて動くのではなく、必要だから動く
そして、そのナイキストの姿を見ていると、周囲の人も「ああ、この組織では自分で考えて動いていいんだ」と感じ始める。

「Autonomy」は伝播する
その結果、組織全体が「群知能」のように機能し始めるのだ。

群知能(Swarm Intelligence)とは、アリやハチ、鳥の群れなどのように、個々の単純なルールに基づく行動から、全体として高度で複雑な問題解決能力や秩序ある振る舞いが自律的に生み出される現象、およびそれを応用したAI技術のことを指します。

誰か一人が正解を持っているのではない。
偶発的な対話を通じて、群知能的に自然と集団全体が最適な方向へ向かっていく。その結果として「文化」が形成されるのではないかとボクは感じた。

ナイキストが文化を醸成する仕組み

ハリー・ナイキストは1889年にスウェーデンで生まれ、家族でアメリカ合衆国に帰化し、その後ベル研究所で働くことになったそうだ。

ハリー・ナイキストがベル研究所にいたこと自体は偶然だったのかもしれない。しかしその偶然によって、彼は人と人をつなぐ中心に立つことになった。そして彼がハブとなって何気ない会話が繰り返され、人と人がつながり、知識が交わり、信頼が生まれた。

だから(最高のチームとしての)ベル研究所が産み出したのはたくさんの「イノベーション」だ。しかし、もしハリー・ナイキストが工場で働いていたら「改善文化」が育っていたかもしれないし、物流会社にいたなら「エンゲージメント」だったかもしれない。

つまり、「ナイキスト」的な人物が育てるのは、そのチームに必要なものが育つ土壌なのではないだろうか。そして、その土壌によって「群知能」が形成され、チーム固有の「文化」の醸成につながるのだ。

経営者の仕事は「管理」ではない

もしこの考え方が正しいのなら、経営者はマインドセットの切り替えが必要になるだろう。

ナイキストを管理しようとしてはいけない。
ナイキストは自由に動けてこそ、その本領を発揮するのだ

もし、ナイキストをガチガチの管理下に置いて、やるべきことを細かに与え、結果を監視するようなことをすると、彼は自分が機能しなくなったことを敏感に感じ取り、静かに組織を去っていくだろう。

そうなると、安全な環境も、 弱さを共有することも、共通の目標を持つこともなくなり、チームはどんどんと弱体化していく。

つまり、経営者が見極めなければならないのは、チームメンバー個々の成果ではなく、チームの「群知能」による自然な動き=形成され始めた文化の兆しだ。

現場で育ち始めた文化を見て、「あ、そっちの方向なのね」と舵を切る柔軟性こそが、最強のチームを作るために必要な考え方なのだろう。

参考リンク

・ベル研究所(Bell Labs)のイノベーション史

・Amazon 『最強チームを作る方法(THE CULTURE CODE)』


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集