【読書記録 -91】SNSマーケティング100の法則
これはSNS運用で成果を出すための実践バイブルだ!
SNSはもはや単なるコミュニケーションツールではない。今や生活インフラの一部となり、企業の売上やブランド価値を左右する強力なマーケティング基盤へと変貌を遂げた。しかし往々にして、現場では「フォロワーが伸びない」「投稿のネタが切れた」「結局ビジネスの役に立っているのかわからない」という悲鳴が上がる。
多くの担当者が陥るのは、投稿すること自体が目的化し、本来のビジネスゴールを見失うという罠だ。しかし、本書『SNSマーケティング100の法則』を紐解けば、そんな人たちの悩みが解決するかもしれない。…少なくとも軽減するだろう。

本書の著者である株式会社カーツメディアワークスは、戦略PRとSNSマーケティングを融合させた支援を得意とするプロフェッショナル集団だ。長年に渡って「企業の中の人」としてSNS運用を支援。戦略PRの視点を活かし、単なる発信に留まらないビジネス成果とファン構築を強みとする。
生活インフラ化したSNSと購買行動の変容
総務省の調査によれば、LINEの利用率は全年代で95%を超え、YouTubeも8割に達している。さらにX、Instagram、Facebookも各年代で広く浸透しており、SNSの影響力はマスメディアに匹敵(あるいは凌駕)する規模となった。さらに、5Gサービスが普及(2024年3月時点で人口カバー率98.1%)したことも相まって、ユーザーの情報収集行動は「ググる(検索エンジンでの検索)」から「タグる(SNSのハッシュタグ検索)」へとシフトした。
現代の消費者は、SNSで偶然見かけた投稿に共感し、UGC (User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)としてのクチコミを「タグる」ことで、その企業(および商品)の信頼性を確認し、そのまま購入に至る。このパラダイムシフトに対応できない企業は、市場での存在感を急速に失ってしまうのだ。
担当者が抱える「孤独」という課題
一方で、企業の現場は過酷だ。多くのSNS担当者は広報やマーケティング業務を兼任しており、「人手不足」や「ノウハウ不足」の中で運用を続けているのが現状だろう。そういった孤独な担当者にとって、本書が提示する100のノウハウが(アカウント開設の基本から、炎上を防ぐためのリスク管理、高度な効果検証の手法などの…)「具体的な道しるべ」となるだろう。
目標達成への逆算思考
SNS運用を「感覚」で行う時期は終わった。論理的な成果を出すためには、まず目標を数値化するプロセスが不可欠である。
運用の成否は、KGI (Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とKPI (Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の設定如何にかかっている。まずは企業として、KGIを「認知拡大」とするのか、それとも「購買促進」とするのかを明確にし、そこから逆算してKPIを定める必要がある。(ただし、この考え方はSNS運用に限ったものではないが…)
筑摩書房のFacebook運用の事例:
同社はKGIを「1年で10,000いいね!の獲得」と定め、その達成のために「毎日2回の投稿」という具体的な施策を打つことを決め、各投稿にネット書店のURLを記載して(そのURLのクリック数をKPIとして計測をすることによって)KGIに対する進捗を確認・報告しました。
その結果として1年後に10,000いいね!を達成し、さらにその1年後には2万フォロワーを獲得するに至りました。このように、数値を起点に戦略を組み立てることで迷いのない運用が可能となり、それがファンとの強固なコミュニティ構築の成功につながっているのです。
リアクションを最大化する「3大要素」
SNSの世界では、企業からの一方的な宣伝は忌避される。ユーザーに受け入れられ、リアクションを得るためには、以下の「3大要素」を意識したクリエイティブが求められる。
本書によれば、反応が良い投稿には共通して以下の3つの要素が含まれている。これらの要素を適切に組み合わせることで、SNS投稿が「広告」ではなく「価値ある情報」へと昇華する。
共感(Empathy): ユーザーが「あるある」と感じるネタや、感情に訴えるストーリー。
お役立ち(Utility): 専門知識の提供や、生活を便利にするハウツー。
シーズナル(Seasonal): 季節の行事やトレンド、その瞬間ならではの話題。
テクニカルな工夫も忘れずに
コンテンツを届けるための技術的な配慮も忘れてはならない。コンテンツをシェアする際にはOGP (Open Graph Protocol:SNSでのプレビュー表示設定)を適切に設定し、魅力的なサムネイルを表示させることでCTR(Click Through Rate:クリック率)の向上を狙うことが鉄則だ。
また、自社の発信だけでなく、一般ユーザーによるUGCを積極的に紹介することも信頼獲得に有効である。「Global PR Wire」のケースとして、マンガと動画を組み合わせたコンテンツをTwitter(現:X)で配信し、SNS特有の「拡散性」を武器にしてコンバージョンアップにつなげた実例が記載されている。
「Global PR Wire」の例では、Twitter(現:X)を活用してサービスの会員登録者数を増やすことを目的としたSNSマーケティングが実施されました。
Global PR Wireは、カーツメディアワークスが運営する、日本企業や団体が海外のメディアやジャーナリストに向けて、プレスリリースを配信できる国内最大級の海外向けPR・配信プラットフォームです。当時すでにリスティング広告(検索連動型広告)で高い費用対効果を出していましたが、さらに当サービスへの会員登録者数(コンバージョン)を増やすことを目標に設定しました。通常、Twitter運用は認知度アップやファン増加に向いているものの、コンバージョンの獲得は難しいとされていますが、あえてTwitterでリスティング広告と同等の成果を出すことに挑戦しました。
ターゲット層を、サービスの「見込み客(海外PRに興味のある層)」の中で「フォロワー数の多いユーザー」に設定しまし、そのターゲット層が思わず目を留めるような「マンガ×動画」のコンテンツを作成し、配信・広告運用を行いました。
その結果として、このコンテンツの配信と本格的なSNS広告運用を始めてから、約2週間で会員登録者数の目標値を達成しました。これにより、Twitterであってもクリエイティブや運用を工夫次第で、Webのリスティング広告と同等の効果が得られることが証明されたのです。
愛されるアカウントを構築するために
SNS運用で重要なのは「コミュニケーションのルール化」だ。
例えば、ユーザーからのコメントに対して「どの程度まで踏み込むか」「どのようなトーンで返信するか」などを細かく事前に策定しておく。こうした配慮の積み重ねが炎上を防ぎ、ユーザーから「愛されるアカウント」を創り上げる土壌となるのだ。
目的・目標・ターゲット
SNSマーケティングにおいて、成功への最短ルートは「目的・目標・ターゲット」の3要素を揺るぎないものにすることだ。
目的: 何のために運用するのか(認知、集客、ファン化など)。
目標: どの数値を達成すべきか(KGI・KPIの設定)。
ターゲット: 誰に届けたいのか(詳細なペルソナ設計)。
この土台さえ固まっていれば、あとは本書に記された100の法則を自社のフェーズに合わせて愚直に実践していくだけだ。これが理解できれば担当者が手探りで試行錯誤する時間は軽減できるだろう。
本書が書かれたのは2020年。
それから6年の間にAIが猛烈に進化した。
本書のSNS運用のノウハウは(ある意味)不変的なものだが、現代においてはこれに「AI対策」を加えなければならない。
例えば、こんな本を参考にしてみてはいかがだろう…
