【読書記録 -29】AIに選ばれ、ファンに愛される。
AIの進化のスピードは速い。
もうすでに、ボクらは物事の決断をAIに頼るようになっている。そんな時代になったと感じるのも、ここ数年のことだ。
AIは、その所有者の過去の成功も失敗もデータ化し、それに加えて他の多くの人の同様のデータも取り込んだ上で、ボクたちが最適な決断をするためのレコメンドをしてくれる。
だから、ボクたちは一度AIを使うと手放すことができない。なぜなら、そのレコメンドによって無駄な時間と失敗のコストを大幅に削減できるから… つまり便利だからだ。
本書の著者 佐藤尚之は、電通に25年勤めたのち、コミュニケーション全体を設計する「コミュニケーション・デザイン」という領域で活動してきた人物だ。現在は株式会社ファンベースカンパニーの会長をされている。
本書『AIに選ばれ、ファンに愛される。』は、彼の最新刊だ。
AIの進化・普及によって、もうすぐ世の中が「世界一賢い生活者」だらけになる。その賢い生活者には、今までの広告やプロモーションが通用しない。だから、売り方もマーケティングも根本から変わらないといけないと、彼は本書で主張している。

ボクたちは、AIを単なる効率化の道具と捉えるのではなく、顧客の行動や価値観を根本から変える力として捉えなければならない。ビジネス観点で重要なのは、AIによってボクたちの仕事がどう変わるかとか、AIをどう利用するかではなく、AIによって決断の仕方が変化していく顧客への「伝え方」をどう変えていくかだ。
著者は、そんなAI時代を迎えるにあたって、企業や個人がAIに選ばれる存在にならなければならないが、それと同時に人間から愛され続ける必要があると説いている。そのためには「AIに選ばれる道」と「ファンに愛される道」の二つを展開する必要があり、それぞれが補完し合ってこそ、長期的に選ばれるブランドになることができるのだ。
①AIルート
AIに理解され、評価されるためには、情報構造の設計が不可欠だ。AIは膨大な情報を学習・整理し、生活者に提示するため、企業側はAIが理解・比較しやすいように、自らの価値や特徴を明確かつ整合的に提示しなければならない。
②ファンルート
AIが購買判断の一部を担うようになっても、最終的な意思決定や長期的な関係性は信頼や共感に依拠している。そのためには、双方が深い関係性を築いていくことが重要になる。関係性を築いた結果が、指名買いや継続購入、推奨意向といった形で表れれば、それがAIの評価シグナルとなり、①②の相乗効果を生むことになる。
つまり、①AIルートはデータ設計や情報構造化といったテクニカル側面を担い、②ファンルートは人間関係や共感の深さというヒューマン側面を担う。この両者を並行して設計し、循環させることで、競争優位性のあるマーケティングが実現できるのである。
これからの時代のマーケティングやブランディングは、単に目立つことや多くのリーチを得るといったことではなく、AIの評価プロセスと人の共感プロセスという二つの「選ばれる基準」に耐えうるルート設計をすることだ。
本書には、そのための方法論が、AIルート=「TRUST」「SENSE」、ファンルート=「FANBASE」という3つのフレームワークで詳しく記述されている。
ただ、冒頭に書いたように、AIの進化のスピードは速い。数年後にAIがどのように進化しているかは誰にもわからない。この本を読んでおくなら「今」なんだろう。
