AIだけじゃ文化は根付かない
昨年10月、ボクは「エントロピーとホメオスタシス」という記事を書いた。
エントロピーとは、簡単に言えば「乱雑さ」のことだ。
物理学では、放っておくとエネルギーは拡散し、宇宙全体はより無秩序な状態へ向かうとされている。組織も同じだ。人が増え、部署が増え、情報が増えるほど、組織のエントロピーは自然と大きくなっていく。
製造業には5Sがある
そのときボクは、組織のエントロピーを抑える方法として「5S」を挙げた。
5Sは単なる整理整頓ではない。
必要なモノを定位置に置き、その状態を習慣として維持し続ける考え方である。現場で「この方が使いやすい」と気づいた人が改善を始め、それが広がり、やがて標準になる。
5Sとは、現場の自主的な改善活動そのものなのだ。
知的労働の5Sとは何だろう
では、知識労働における「5S」とは何だろうか。
知識が価値を生む世界に置き換えると、「5S」にあたるものは一体なんだろう。
ボクはその答えが「Wiki」ではないかと思っている。
Wikipediaの「Wiki」は、ハワイ語で「速い」を意味する「Wiki Wiki」が語源だという。誰でも素早く編集できることを目指して名付けられたそうだ。
ウィキペディア(英: Wikipedia)は、世界中のボランティアの共同作業によって執筆および作成されるフリーの多言語インターネット百科事典である。収録されている全ての内容がオープンコンテントで商業広告が存在しないということを特徴とし、主に寄付に依って活動している非営利団体「ウィキメディア財団」が所有・運営している。
「ウィキペディア(Wikipedia)」という名称は、ウェブブラウザ上でウェブページを編集することができる「ウィキ(Wiki)」というシステムを使用した「百科事典」(英: Encyclopedia)であることに由来する造語である。
Wikipediaはボランティアによって編纂されるネット上の百科事典だ。編集者には報酬は支払われず、世界中の人々が自主的に執筆・編集を続けている。
Wikipediaでは誰でも記事を書き、編集できる。
もちろん一定のルールはあるが、「書いてみる」という行為そのものが歓迎される文化がある。
自主性が文化を育てる
ボクは社内にWikiを作るのがいいと思っている。
それは、Wikiが企業文化を醸成するHubになると思っているからだ。
それは「知識を定位置へ戻す文化」だ。
「社内Wikiを書け」と命令しても文化にはならない。
誰かが勝手にWikiにコンテンツを投稿し、ほかの誰かが勝手にそれを編集する。それは「自分だけが知っているナレッジをみんなにも共有したい」という思いから生まれる行動だ。
それは「5S」も同じだろう。
道具や消耗品などを決められた場所に揃えようとする人がいる。その人は自分のためにやっているわけじゃない。次にそれを使う「誰かのため」にやっているのだ。
一方で、そういったモノを散らかす人もいる。
組織には、秩序を保とうとする力と、乱雑になろうとする力が常に混在しているものだ。ボクは以前、その関係を「エントロピーとホメオスタシス」と表現した。
組織は常にエントロピーとホメオスタシスが拮抗している。それは仕方のないことだが、いかに「誰かのために」と思う人を増やすかが、組織の文化につながっていくんだと思う。
AIだけじゃ文化は根付かない
最近はAI導入が盛んだ。
しかし、AIだけで組織の知識は整理されない。
AIが力を発揮するのは、社員が日頃から知識を共有し、改善を積み重ねる文化があってこそだ。だからボクは、AI研修よりも先に考えるべきことがあると思っている。
それは、社員が安心して試し、改善し、知識を共有できる企業文化を育てることだ。
新しいコンテンツを作っても誰からも怒られない。
「こんなの作りました」と紹介すれば歓迎される。
そんな小さな挑戦を受け入れる空気が文化を育てるのだ。
AIだけじゃ文化は根付かない。
だけど、知識を共有する文化が根付いた会社なら、AIはきっとその文化を何倍にも育ててくれるだろう。
