【読書記録 -118】SNS広告の心理技術
ボクがハウツー本を読む理由
昨日の記事にも書いたが… ボクの仕事が「エグゼキューション」であるが故に、ボクは自分の仕事の上流と下流について、ある程度の知識を持っておく必要がある。
だから、ボクにとってはハウツー本の「How to do(どのようにするのか)」部分にはあまり興味がなく、どちらかというと「Why do we need(なぜそれが必要なのか)」の方に興味があるのだ。そこを知っていないと、オペレーションに繋げることができないからな。
さて、本書『SNS広告の心理技術』は、書店に並べるなら「大分類:ビジネス・経済 → 中分類:広告・宣伝・マーケティング → 小分類:SNSマーケティング・コピーライティング」という分類になるだろう。だけど、ボクは「心理学 → 行動経済学」というコンテクストで読んでいるので、ひょっとすると他の人と所感が異なっているかもしれない。

脳内の決定を促すプロセス
現代の消費者は注意散漫だ。
そんな(SNS上の)消費者の手を止め、行動を起こさせるには「LF8(Life-Force 8:人間が生まれながらに持つ8つの本能的欲求)」を刺激しなければならない。
1. 生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい
2. 食べ物、飲み物を味わいたい
3. 恐怖、痛み、危険を逃れたい
4. 性的に交わりたい
5. 快適に暮らしたい
6. 他人に優れ、世の中の遅れを取りたくない
7. 愛する人を気遣い、守りたい
8. 社会的に認められたい
これらを刺激しない広告は「単なる皿の上のパセリに過ぎない」と、著者のドルー・エリック・ホイットマンは説いている。SNSに彩りは添えるが、誰も食べないということだ。
「ダイレクトレスポンス広告」という行為を言語化するならば、それは「広告(=印刷されたセールスパーソン)」によって、見込み客が抱える「LF8(痛みや恐怖から解放されたいとか、快適な暮らしをしたいなど)」への渇望を、現実の購買行動へと変換させることにある。
以下は、ボクの個人的なメモだ。
冒頭申し上げた通り、How to部分よりWhy部分にフォーカスしたメモであるので、あまり汎用的ではないかもしれないな。
How to + Why do we need
CTAをどこに配置するか
CVR向上を狙うにあたり、CTA(Call To Action:行動喚起)ボタンをヘッドライン直後に設置することで効果を発揮する。ただし、一部の研究では「スクロールなしで見える位置にCTAを置くと(情報不足によって)CVRが17%下がるというデータも存在する。よってABテストを繰り返すことが重要だ。
人間の顔
人間の脳は、他人の顔に爆発的な注目を向けるよう設計されている。データによれば、Instagramの投稿に「人間の顔」が含まれるだけで、そうでない場合に比べて「いいね」は38%、コメントは32%も増加する。
VAKモデル
VAKモデルとは、人間が情報を認識・理解したり、記憶を引き出したりする際に、最も頼りにする感覚(優位感覚)を3つのタイプに分類した心理学・コミュニケーションのモデルを指す。
V(Visual) 視覚優位:目で見て理解するタイプ
A(Auditory) 聴覚優位:耳で聞いて理解するタイプ
K(Kinesthetic) 体感覚優位:身体で触れたり体験して理解するタイプ
その中で、SNSユーザーは視覚優位(Visual)層だと考えるべきだ。音声offで視聴するユーザーが一定数いることを考えると、動画広告に字幕を入れるべきである。それだけで(音声offで視聴するユーザーの69%を)視覚的に誘導することができ、視聴時間が12%延びる。
保有効果と損失回避
人は一度所有したものに対して、所有前よりも高い価値を感じる「保有効果」を持つ。無料トライアルはこの心理を利用したテクニックだ。一度使わせることで、その商品を「自分のもの」と錯覚させ、返却を「痛みからの解放(LF8)」に反する「損失」と認識させる。
色の好みよりもコントラスト
特定の色がLF8を刺激することはない。重要なのは視認性(周囲との「コントラスト)だ。ボタンを赤にするか緑にするかではなく、背景から浮かび上がっているかがCTR(クリック率)を左右する。
心理的価格設定「100の法則」
人間の脳は、パーセントよりも「実数」が大きい方に価値を感じる。100ドル(日本円でいうと1万円ってところか…)以上の商品は「〇〇ドル引き」、100ドル未満は「〇〇%引き」と表記せよ。数字としての大きさが、お得感(という錯覚)を強化する。
真実性の錯覚効果と反復
同じ主張を繰り返せば繰り返すほど、脳はそれを「真実」として処理しやすくなる。嘘であっても、繰り返されれば確信に変わるのだ。
おとり効果(デコイ・エフェクト)
あえて「選ばれないほど高価な選択肢」を中央に置くことで、本当に売りたい本命の商品を相対的に安く、魅力的に見せることができる。
結論めいたもの…
多くのマーケターは、CVR向上のためにSEO(検索エンジン最適化)などのテクニックを理解しようとする。しかし(技術的側面を理解しつつも)最後には人間の根源的な欲求「LF8」に立ち戻ることが不可欠だ。
どれほど洗練されたテクニックを用いても、そこに「LF8」という土台がなければ、それはただの「皿の上のパセリ」に過ぎないのだ。
参考リンク集
・ドルー・エリック・ホイットマン:公式サイト
・Amazon『SNS広告の心理技術』書籍紹介ページ
