【読書記録 -32】大事なことほど小声でささやく
―あなたが好きなのはコレでしょ?―
最近のAIは、過去の購買履歴からボクの好みを読み取って、いくつかのレコメンドを提示してくる。それはAudibleも同様だ。
成瀬シリーズを2作連続で再生した(3作目はまだオーディオ化されていない)ボクに、AIがレコメンドしてきた作品が「大事なことほど小声でささやく」だったのだ。
確かに、本作品は成瀬シリーズと同じ「連作短編形式」の作風だ。AIはボクがそういう作風を好んでいると判断したのだろう…
『大事なことほど小声でささやく』は、森沢明夫の代表作の一つだ。

本作の舞台は、都会の片隅にあるスポーツジム。物語は連作短編形式で進んでいき、章ごとに視点人物が切り替わる。それによって、それぞれの登場人物の立場や過去、抱える悩みや意外な一面が多面的に浮き彫りになる。
文章は極めて平易であり、優しく語りかけるようなリズムが特徴だが、オーディオブックだと、それがさらに際立つように思う。
著者 森沢明夫は1969年、千葉県生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経て作家活動に入った。『虹の岬の喫茶店』や『あなたへ』など、多くの作品が映画化やドラマ化がされている。
物語の中心となるのは、昼はジムで肉体を鍛え、夜はスナックのママとして働く、大型オカマの「ゴンママ」こと権田鉄雄だ。そして、ゴンママを慕って風変りな人物たちがスポーツジムに集まる。彼らはそれぞれにつらい過去や対人関係の悩みを抱えているが、ゴンママやジムの仲間たちとの触れ合いを通じて、閉ざしていた感情を少しずつ緩めていく。
本作品は「泣ける」「救われた」と高く評価されている。それは弱さを否定しない強さが描かれているからだろう。登場人物は誰もが皆、どこか欠けており、情けない部分を抱えている。
そんな欠落を埋めるのは、壮大な目標とか強靭な意志とかではないのかもしれない。
それは「小声のささやき」のような言葉なんだろう。
