【読書記録 -126】ハリー・ポッターと秘密の部屋
以前読んだ『ハリー・ポッターと賢者の石』に続き、二作目となる『ハリー・ポッターと秘密の部屋』を読了した。
第一作目の冒頭、物語はハリーがダーズリー家で不遇な環境に甘んじているところから始まる。
そして(ウラジミール・プロップが提唱した)「昔話の形態(骨格)」に従って物語は進み、ハリーは英雄となりハッピーエンドとなった。
第一作目(賢者の石)は、概ねこの骨格をトレースしているように見える。
1. 準備段階(出発)
不在:家族が留守にする。
禁止:主人公が「〜してはダメ」と言われる。
侵犯:禁止が破られる。
探索:敵が情報を探る。
出発:主人公が家から旅に出る。
2. 闘い(獲得)
闘争:主人公と敵が戦う。
勝利:主人公が勝つ。
課題:主人公に難しいテストが出される。
解決:主人公がテストをクリアする。
3. 宝物の手に入り(魔法の道具)
授与:協力者から魔法のアイテムなどをもらう。
移動:主人公が別の場所へ移動する。
獲得:宝物(魔法の力、お姫様など)を手に入れる。
4. 解決(大団円)
帰還:主人公が家に帰る。
追跡:敵が主人公を追いかけてくる。
救出:主人公がピンチから助かる。
結婚:主人公が王様になったり、結婚してハッピーエンドになる。
ところが、新しい物語(秘密の部屋)が始まると、ハリーはまたダーズリー家で窮屈な生活を送っている。そしてホグワーツへ戻り、また新たな事件に巻き込まれていくのだ。

続編というのは難しい。なぜなら、読者がすでに世界観を知っているからだ。残念ながら多くの二作目は、一作目と同じような鮮度で驚きを与えることができないことが多い。
ところが『秘密の部屋』は面白い。
J・K・ローリングが「様式美」を大切にしている作家であることは間違いないだろう。
『秘密の部屋』でも、ハリーは再びダーズリー家から出発し、ホグワーツへ向かい、仲間と謎を追う。ローリングは、その型を壊そうとはしない。むしろ読者が期待する型を丁寧に守っている。しかし、ローリングはその型の中で世界を深くしていくのである。
一作目では「ハリーの親友」という役割だったロンに、二作目では家族が与えられ、ウィーズリー家の日常が描かれる。ハグリッドには語りたくない過去があり、ダンブルドアにもまた長い歴史があることが見えてくる。そうなってくると、ホグワーツも単なる学校ではなく、多くの人々の人生が積み重なった場所として見えてくるのだ。
つまりローリングは、同じフォーマットを土台にしながらも、同じ物語を繰り返しているのではない。物語に新しい地層を積み重ねているのだ。
落語や時代劇に様式美があるように、ハリー・ポッターにも様式美がある。だから読者はその型に安心して身を委ね、そして戻ってくるたびに、ハリー・ポッターの世界の「新しい奥行き」を発見することができるのだろう。
一作目の『賢者の石』がホグワーツという世界への入口だとすれば、二作目の『秘密の部屋』はその世界に厚みと歴史を与えた作品だ。
J・K・ローリングの凄さは、新しい世界を次々に作ることではなく、同じ世界を何度でも深くできることなのかもしれない。
