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【友人編|ep55】「内観してる」と言った彼女は、笑っていた

前回の話




LINEを送ってから、四日が経っていました。

ひどいことを言われ、傷つけられたのだから、もう断ち切ればいい。
頭では分かっているのに、心が追いつきませんでした。

共に過ごした10年という月日が、
頭をよぎります。

本当に、このまま終わらせていいのか。

迷って、迷って。
私は震える手で、彼女に電話をかけました。



子どもたちが学校へ出かけたあと、
静まり返った部屋にコール音だけが響く。

……出ない。

一時間後、もう一度かけましたが、
やはり繋がることはありませんでした。


『何度も電話してごめん。
Mちゃんとの間に溝ができたことは分かってる。
でも、10年の関係をこのままにしていいのか迷って電話した』



そうLINEを送り、
私は倒れ込むように眠りにつきました。



二時間後。
フラッシュバックの衝撃で目が覚めました。

荒い息を整えながら、手探りでスマホを掴む。

画面には、彼女からの返信が届いていました。

『電話ありがとう。
溝ができたわけじゃなくて、
今、私は自分を内観している時期なの。
どうしたらいいのか、自分自身を考えて、動いて、もがいている最中だよ。
だから自分のことでいっぱいいっぱいになってる』

……内観?
いっぱいいっぱい?

何度読み返しても、
言葉が、頭に入ってきませんでした。



あの日、カフェで見た彼女の、
あの饒舌で明るい姿は、何だったのか。

私の必死の言葉に対して、
返ってきたのは、電話ではなく文字だけでした。

ふと気になって、彼女のインスタグラムを開きました。


そこには、私がLINEを送ったあとの時間に投稿された
「インスタライブ」が残っていました。

(……ライブ、してたんだ)

再生すると、
画面の中の彼女は、満面の笑みで話していました。

特定の思想グループのイベントについて、
関係者と楽しそうに言葉を交わしている。



そこにいたのは、
私の知らない彼女でした。




「内観」という言葉の裏で、
彼女はもう、別の世界にいました。

どこかで、「助けてほしい」と
願ってしまった自分もいました。

もう期待なんてしていないはずなのに。

それでも、

彼女なら何か言葉をくれるんじゃないかと
思ってしまっている自分がいました。

彼女のあのLINEは、

遠回しに
「私の邪魔をしないで」と言われたのだと、

そう思いました。



もう、返信はやめよう。

そう決めた瞬間、
ふと、息子の顔が浮かびました。



Mちゃんの息子さんと、私の息子は同級生で、
親友と呼べるほど仲がいい。

クラスも同じ。
中学卒業まで、あと一年ある。



親の都合で、
子どもたちの関係まで壊していいのだろうか。

「お母さん同士、何かあったの?」

そんな言葉を、あの子に言わせたくない。



葛藤の末、
私は震える指で、言葉を打ち込みました。

『そっか、わかった。がんばって』



すぐに、返信が届きました。

『ありがとう、頑張るね〜✨』


その軽さに、言葉が出ませんでした。


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softly.beyond                         〜そっと‥そのさきへ〜 最後までお読みいただきありがとうございます。 もしこの記事が少しでもお役に立てたり、心に響くものがあったりしたら、チップで応援いただけると嬉しいです。 いただいたご支援は、クリエイターとしての活動費に使わせていただきます