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【友人編|ep54】それでも、返事を待っていた

前回の話




私は心療内科を受診しました。
診断は、複雑性PTSD。

医師からその言葉を告げられたとき、
驚きよりも先に、すとんと腑に落ちる感覚がありました。

「やっぱり、そうだったんだ」

そう思ったのを、今でも覚えています。

薬での治療も提案されましたが、
副作用への不安が強く、私は一度見送ることにしました。


それでも、生活を止めることはしませんでした。

仕事には、これまで通りに行く。
人と話している時間は、なんとか「普通」の自分を保てる。

けれど――

家に帰り、ふと気が抜けた瞬間に、
あのフラッシュバックが襲ってくる。

あの嵐のような三日間に比べれば強さは和らいでいたけれど、
それでも何度も、何度も繰り返されました。



そんな中、
以前から約束していた友人とのランチの日が来ました。

正直、外出できる状態ではありませんでしたが、
断ることもできず、
私は重い体を引きずるようにして向かいました。



駐車場に車を停め、降りたときでした。

「softlyちゃん!」

名前を呼ばれて振り向くと、
そこに立っていたのは、Mちゃんでした。

最後にやり取りをしてから、
まだ一ヶ月も経っていません。



一瞬、時間の感覚が止まりました。

どういう顔をすればいいのか、わからない。

「……Mちゃん」

それだけ言うのが、やっとでした。



Mちゃんは、まるで何もなかったかのように、
嬉しそうに笑っていました。



店に入ると、彼女は次々やってくる
人に声をかけられ、
初対面の挨拶を交わしていました。

その様子を、私は少し離れた席から、
眺めていました。

(彼女は、何をしているんだろう……)


そのまま、私は席を離れました。



帰宅後、気になって彼女のSNSを開きました。

そこには、特定の思想や宗教が関わるイベントの投稿が並んでいました。

『みんなの笑顔のために。
みんなが笑っていることが、私の幸せ』


綴られたキラキラした言葉たちが、
今の私の目には、ひどく遠い世界の出来事のように映りました。



そのとき、ふと目に入ったのが、
Mちゃんから預かっていた離婚のための資料でした。

それを見た瞬間、
理由のわからない苛立ちが込み上げてきました。

無性に、もう関わりたくないと思った。

これを返して、終わりにしよう。
そうすれば、もう関わらなくていい

そんな気持ちが、強くありました。



今の自分の状態で、
他人の人生の重荷を預かり続けるのは、あまりにもつらい。

そう思い、私はそれを郵送で送り返すことにしました。



レターパックで送ったこと。
本来なら会って渡すべきだけど、
複雑性PTSDと診断され、それどころではなくなってしまったこと。

正直に、LINEで伝えました。



「複雑性PTSD」

以前の彼女なら、
すぐに心配して飛んできてくれたはず。

今の彼女は、この言葉を聞いて何を思うだろう。

心のどこかで、「助けてほしい」と
願ってしまった自分もいました。



すぐに既読がつきましたが、
返信が来たのは数時間後でした。

『え……そうだったの、大丈夫なの?💦 書類、ありがとう』

たった、それだけでした。

その言葉を見たとき、

胸の奥が、じわっと痛みました。


「正直、大丈夫ではなくて。
けれど原因がどうにもできないことだから、
どうしようもないと思っている」

絞り出すようにそう送りましたが、
その後、既読がついたきり、
何日経っても返事が来ることはありませんでした。


(……なんでだろう)


そう思ってしまう自分が、いました。



彼女は変わってしまった。
そう思っているはずなのに。

もう、期待なんてしていないはずなのに。


それでもどこかで、


「何か言葉をくれるんじゃないか」と
待ってしまっている自分がいる。

もう、終わりにしたはずだった。

それでも――

人に期待してしまう自分までは、
まだ手放しきれていなかった。

そんな自分が、少しだけ嫌でした。

でも――

まだ手放しきれていないことも、
ちゃんと分かっていました。


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softly.beyond                         〜そっと‥そのさきへ〜 最後までお読みいただきありがとうございます。 もしこの記事が少しでもお役に立てたり、心に響くものがあったりしたら、チップで応援いただけると嬉しいです。 いただいたご支援は、クリエイターとしての活動費に使わせていただきます