【高校受験:息子|ep13】信じているつもりだった
前回までのお話
二学期に入った頃から、
息子が苛立つことが増えました。
返事は、
「あ?」
「は?」
が基本。
特にひどかったのは朝でした。
もともと寝起きの悪い息子ですが、
何度起こしても起きてこない。
起きてもなかなか動かない。
その姿を見るたびに、
私は中学一年生の頃を思い出していました。
学校へ行けなくなったあの頃。
また何かあるんじゃないか。
また学校がしんどくなっているんじゃないか。
そんな不安が頭をよぎります。
だからつい声をかけてしまう。
「早く食べな」
「スマホ見てないで着替えして」
すると返ってくるのは、
「は? やるって!」
という不機嫌な返事。
でも、なかなか動かない。
「間に合わなくなるよ」
そう言うと、
大きなため息をついて洗面所へ向かいます。
そこには、
相変わらず前髪のセットに夢中な娘。
洗面所を巡る姉弟喧嘩は、
我が家ではもう何年も見慣れた光景でした。
違ったのは娘の方です。
反抗期真っ只中だった頃は、
「うざっ」
と息子を追い払っていた娘が、
今では
「なに? 代わってほしいの?」
と言いながら、
くすぐりに行く。
けれど、
反抗期真っ只中の息子は、
それを受け流せません。
「やめろや!うざい!」
そして朝から大喧嘩。
仲裁に入っても止まらない二人。
そんな朝が続いていました。
家を出る頃には、
息子はバンッと大きな音を立てて玄関を出ていきます。
受験への不安が大きくなっているのかもしれない。
また前向きな気持ちが折れてしまったのかもしれない。
そんなふうに考えていました。
そんなある日。
通級の先生から届いた記録に、
こんなことが書かれていました。
「最近、朝お母さんと喧嘩をする」
「寝起きが悪いのは自分でも分かっている」
「でも、朝からいろいろ言われるとイライラしてしまう」
「お母さんが自分のことを想ってくれているのは分かっているし、好きなのも分かっている」
「でも、自分でやれるから、そろそろ信じてほしい」
「朝は静かに過ごしたい」
「家でも学校でも我慢しているから疲れてしまう」
読んだ瞬間、
しまった。
と思いました。
思春期だから機嫌が悪いんだろうな。
受験のストレスもあるんだろうな。
そんなふうに思っていました。
でも、本当は違った。
息子は、
ちゃんと自分のことを分かっていました。
寝起きが悪いことも。
朝イライラしてしまうことも。
分かった上で、
自分なりにやろうとしていた。
それなのに私は、
少しでも不機嫌だったり、
思うように動いていなかったりすると、
「また学校へ行けなくなるんじゃないか」
「また何か起きているんじゃないか」
そう考えてしまっていました。
中学一年生の頃の記憶が、
私の中にまだ残っていたことにその時気づきました。
息子は前に進んでいるのに、
私はまだ過去の息子を見ていたままだった。
それでも、
「お母さんが自分のことを思ってくれているのは分かっている」
という言葉が嬉しかった。
ちゃんと伝わっていたんだ。
そう思うと、
少し肩の力が抜けました。
私には言えないことも、
通級の先生には話せていた。
息子にとって、
本音を話せる場所がちゃんとあったことが嬉しかった。
そして
私も少しずつ手を離していかなければいけないんだな。
そう思った出来事でした。
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