【娘のこと|ep35】なんでママは今のママになれたの?——答えられなかった私
Mちゃんからの連絡がこないまま、1ヶ月が経っていました。
毎日のように届いていたLINE。
それが、パタリと来なくなったのです。
別の問題が起きたのか。
それとも、あのとき「今じゃないんじゃないか」と言ってしまったからなのか。
本音を言ってしまったことで、離れてしまったんじゃないか――。
そう思うと、あの言葉を口にしたことを後悔せずにはいられませんでした。
けれど、自分から連絡する勇気も出ず、
ただ1ヶ月、悶々とした時間を過ごしていました。
そんな、ある日のことでした。
学校へ送ったいった、わずか15分のドライブの中で、娘にこんなことを言われました。
Mちゃんとのやり取りを、家で何度も聞いていた娘が、
ある日、ぽつりと聞いてきたのです。
「ねえママ。なんでそんなふうにいられるの?」
何気ない会話をしていたはずなのに、
ふいに娘が、Mちゃんの話を切り出しました。
「なんでママは、自分がしんどいのにあそこまで親身になるの?」
少し間を置いて、娘は続けました。
「基本的に、ママの周りの人ってさ。
ママを利用してるか、ちょっとヤバい人しかいないよね」
「え。だれがあとヤバいの?」
思わず聞き返すと、娘はあっさりと言いました。
「パパと、ばあば」
「昔から思ってたけど、ばあばって、
なんでママにひどいことばっかするんだろうって。
だから、私、ばあば嫌いなんだよね」
(そんなふうに思ってたんだ)
少し驚いている私に、娘は続けました。
「でもママは、どの人にもちゃんとしてるじゃん。
すごいとは思うけど……見ててモヤモヤするんだよね」
そして、少し言葉を探すようにしてから、ぽつりと続けました。
「ばあばってさ、ママにひどいことするでしょ。
それって、ママが毒親育ちってことだよね」
思わず、言葉に詰まりました。
「昔、じいじに殴られてたって言ってたし。
でもママは、全然そんなんじゃないじゃん」
少しだけ間を置いて、娘は続けます。
「ちゃんと話聞いてくれるし、いっぱい考えてくれるし。
なんで、あんな人たちに育てられたのに、今のママになれたの?」
私は少しだけ考えてから、答えました。
「……あんなふうには、なりたくなかったんだと思う」
自分でも、うまく言葉にできている気はしませんでした。
「もちろん、あなたたちのためっていうのもあるけど。
でもたぶん、それ以上に——
そういう自分を、見たくなかったんだと思う」
娘は静かに聞いていました。
そして、少し考えるようにしてから、また口を開きました。
「でもさ、パパは違うよね」
その言葉に、少しだけ息が詰まりました。
「じいちゃんと、同じになってるのはなんで?」
「……パパはね」
言葉を選びながら、ゆっくりと続けました。
「わかりづらいけど、ちゃんと大切には思ってると思う。
ただ、愛情の出し方がちょっと歪んでるというか……
それが変だって、自分で気づけてないのかもしれないね」
娘は「そっか」と小さく頷いて、
少しだけ笑って言いました。
「じゃあやっぱり、ママはすごいね」
私は、その言葉に、うまく返すことができませんでした。
何か言おうとしても、言葉が見つからなくて。
そのまま車は学校に着き、
会話は、そこで途切れました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
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