本を買うだけで満足してしまうのは、悪いことではないのかもしれません。
私はミステリー小説が好きです。
太宰治や三島由紀夫、ビジネス書やドキュメンタリー系の本も好きで、本屋へ行くとつい長居してしまいます。
「あ、この本面白そうだな」「これは今の自分に必要かもしれない」
そう思って買った本が、家には何冊もあります。でも正直に言うと、その全部を読めているわけではありません。本棚には、買ったまま読んでいない本も並んでいます。いわゆる積読です。
本を見るたびに「また読めていないな」と少し後ろめたい気持ちになることもあります。せっかく買ったのに。読もうと思っていたのに。
でも実は、積読は悪いことばかりではないようです。
本を買った時、人はすでに報酬を受け取っている
本を買った時のことを思い出してみてください。レジを済ませて本を手に持った瞬間、少しワクワクした気持ちになりませんか。
「この本から何を学べるだろう」「今の悩みのヒントがあるかもしれない」
研究では、人の脳は報酬を手に入れた時だけでなく、これから得られると期待した時にも反応することが知られています。本を買った時の満足感は気のせいではありません。脳はその本を通して得られる知識や体験を先取りして評価しているのです。
だから本を買った瞬間に感じる高揚感には、ちゃんと理由があります。
もちろん、それだけで読まなくていいという話ではありません。ただ、本を買っただけで満足してしまう自分を「意志が弱い」「また失敗した」と責める必要もないのかもしれません。
そのワクワクは、学びたい気持ちや好奇心がまだ残っている証拠とも言えるからです。
積読は「学びたい気持ち」が消えていない証拠かもしれない
積読という言葉には、どこかネガティブな響きがあります。買ったのに読んでいない、途中で止まっている、本棚に並んでいるだけ。
でも見方を変えると、積読には別の意味もあります。それは「まだ知りたいことがある」ということです。
もし学ぶことに興味がなくなっていたら、そもそも本を買わないはずです。本屋へ行っても立ち止まらない。新刊情報も気にならない。それでも本を手に取り買って帰るということは、どこかに知的好奇心が残っているということでもあります。
作家の Nassim Nicholas Taleb は、読んだ本よりも、まだ読んでいない本の方が価値があるという考え方を紹介しています。「アンチライブラリー」と呼ばれる考え方です。
読了した本が過去の知識なら、積読は未来の可能性とも言えます。
読めないのは、意志が弱いからではない
では、なぜ積読が増えていくのでしょうか。
理由の一つは、読む気がないからではなく、読む余力が残っていないからかもしれません。
仕事が終わる頃には、私たちの脳はたくさんの情報を処理しています。会議、メール、チャット、判断、気遣い、小さな決断の積み重ね——会社員の一日は、思っている以上に脳を使っています。
そんな状態で家に帰り、さあ本を読もうと思っても、なかなかページが進まない。一方でスマホは見られる。SNSも見られる。動画も見られる。すると「スマホを見る元気はあるのに、本は読めない」と自分を責めてしまうことがあります。
でも本を読むことは意外とエネルギーを使います。文章を理解する、内容を記憶する、前後の話をつなげる、想像する——スマホよりも多くの注意力を必要とすることも少なくありません。
だから読めないのは、本が嫌いになったからでも、意志が弱くなったからでもない。
「今日はそこまで脳を使ったんだな」と思えた方が、少しだけ気持ちは楽になる気がします。
本は最初から最後まで読まなくてもいい
もし積読に少し罪悪感があるなら、本との付き合い方を少し変えてみるのも一つです。
私たちは本は最初から最後まで読むものだと思いがちです。でも実際は、すべての本を読破する必要はありません。
気になる章だけ読む。目次だけ眺める。前書きだけ読む。
そんな読み方でも十分です。研究でも、行動を始めるハードルは低いほど続きやすいことが知られています。いきなり300ページ読もうとすると重い。でも「とりあえず目次だけ見よう」なら少し気が楽です。
本棚の中には、今の自分には必要なくても、半年後や一年後に役立つ本もあります。買った時には読めなかったのに、後になって急に内容が入ってくる——そんな経験をした人もいるかもしれません。
本は読了しなければ価値がないわけではありません。必要な時に開ける場所にある。それだけでも意味があるのかもしれません。
最後に
本棚を見る。読んだ本もある。途中まで読んだ本もある。まだ開いていない本もある。
そんな本を見るたびに「また読めていないな」と思うことがありました。
でも最近は少しだけ見方が変わりました。それらは失敗の証拠ではなく、未来の自分への手紙のようなものかもしれない。
本棚に並ぶ未読本は、「まだ知りたい」「まだ学びたい」という気持ちが残っている証でもあります。今はまだ読めなくてもいい。今はまだ必要じゃなくてもいい。
本を買っただけで終わってしまったと思っていた一冊が、数年後に人生を変えることもあります。
だから積読は、必ずしも怠慢ではないのかもしれません。それは未来の自分への小さな投資。まだ知らない世界への入り口。あなたの好奇心が残した足跡です。
もし今日、読めていない本を見て少し後ろめたい気持ちになったなら、目次だけでも開いてみてください。そこから始まる読書も、きっとあるはずです。
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積読が増える理由の一つは「読みたいのに読めない」ことかもしれません。
以前、有料記事で「本を読む気力がない人に効く3つの脳回復読書法」を書きました。
本が嫌いになったわけではないのに、なぜか読めない。
そんな人向けに、脳疲労の視点から読書との付き合い方をまとめています。
