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いつもの途中で

サーー
と、と、と。

朝、布団の中で雨を聞く。
部屋の中はうす灰色の膜をまとっている。

起き上がってトイレに向かうと、パートナーが先に入っていた。

歯磨きをしながら待つ。
下腹がじっと張っている。

顔を洗ってタオルで拭く。
お腹の奥がそわそわする。

まだだろうか。

ふいにからだの力を抜いてみる。
それでも下腹は、ほのかに力が入ったまま、漏れずにいる。

そうか、出さないようにしているのは私じゃない。からだがやってくれている。

私はただ、その反応の上にのって、勝手にそわそわして、騒ぎをふくらませているだけなのかもしれない。

やっとトイレが空いた。
何も考えなくても、からだはもう必要なことをやっている。
それに乗っかって、意識がほっとしているのを見つめた。

いつもより長めに瞑想をしてレッスンに入る。

「大切なものを扱うように動いてみましょう」
そう声をかける。

動き方、気持ちの向け方、からだが知らせてくれている感覚。
それらに大切に見ていくと、からだと意識の間に隙間ができて、動きが滑らかになっていく。

画面の向こうで、生徒さんの動きがゆっくり静まっていた。

レッスンが終わってキッチンに立つ。
今日は少し肌寒い。

にんにくと生姜をたっぷりと。
豆板醤を炒めて、
大根、きのこ、大豆ともちきびを入れ、
豆乳を加えて担々風スープを作った。

スプーンを入れると、大豆と野菜がごろっと上がってくる。
大きな口でほおばると、ほんのりした甘みにピリッとした辛みが重なる。

食べ終わるころには、指先までぽかぽかと温まっていた。

そういえば、次の離乳食はいつ送るんだっけ。
月に一度、娘からリクエストをもらう食材で離乳食を作って送っていた。

LINEをすると、
「離乳食は後期になったから卒業です!」と返ってきた。

親指が次の文字を探して漂う。

リクエストの紙を見ながら、スーパーを何軒も回ったこと。

離乳食を送った次の日に「これも追加で欲しい!」と言われて慌ててキッチンに立ったこともあったっけ。

ジップロックに名前を書くマジックの匂い。
箱のすき間に入れたお菓子。

どれも、ついこの前のことなのに。

最後だと分かっていたら、もっとやってあげたいことがあった。

けど、きっとどのことも、最後だと分からないまま終わっていく。
離乳食も、今日食べたご飯も、今こうして生きていることも。

目の前の器を見る。
内側にクリーム色の膜が残り、ところどころ唐辛子の跡がある。

お腹の中があたたかい。

ごちそうさまでした。
手を合わせて頭を下げた。


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