ショートショート:猫は会いに行く
「迷子の有栖川」 の番外編になります
創作大賞は残念ながら落選してしまいました。
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「吾輩はニケである! 猫である!」
そんな事を呟きながら、猫又のニケは古びた家の塀の上を歩いていた。最近の家は塀をなくすところが多く、楽に歩ける場所が減ってきて歩きづらいと思いながら向かうのはとある人間の家だ。
塀を飛びおり、仕切りのない真新しい新築エリアに到着すると慣れたコースを進んでいく。
オシャレな表札には有栖川と書かれている。
「にゃー」
一声鳴けば、庭に水やりをしている人物が猫に気づいた。
襟足まで伸ばしたサラサラの髪の毛が揺らぐ。振り返った有栖川はニケに気づくと目をキラキラさせて喜んだ。
「猫ーー!! 今日もきたんだね!オヤツあるから!」
「にゃー」
可愛らしく返事を返せば、その有栖川は水を止めて家の中に急いで入って行った。
家の中でドタバタと音が響いている。
「お母さん、猫のおやつ!」
「あら、今日も来てるのねー猫ちゃん」
「うん!父さんが猫アレルギーじゃなければなー」
「あんたも気をつけなさいよ。マスクして触りなさい」
「えーー!」
「アレルギーは蓄積だって言うじゃない。長ーく触りたいなら対策が肝心よ〜」
「はーい」
ニケは毛繕いをしながら話しを聞いていた。飼い猫になるのは元から無理だが、仲の良さそうな家族の様子に飼い猫になったら幸せだろうなぁと夢想した。
「ごめんよ〜マスクしてても自分のこと分かるかな〜」
有栖川は猫用のお菓子を手に持って出てくるとニケの前にしゃがみ込んだ。
玄関の扉には薄く開けてこちらを覗き込んでいる母親もいる。有栖川も中性的な美人だが、母親も宝塚の男役のようなキリッとした美しい女性で、ニケは親子揃って美形な家族だと思った。
ニケがご機嫌に喉を鳴らして近づけば、口元までお菓子が差し出されパクリと食べれば優しく頭を撫でられた。
「可愛いなー。尻尾の先がハートみたいになってて可愛いなー」
有栖川はニコニコ顔でニケを撫でまわしお菓子を与えた。
ニケはお腹が満腹になって満足すると横になって腹を向ければ、有栖川は撫でまわしてくる。とても心地よいマッサージにニケは満足気に喉を鳴らすと、立ち上がった。
「にゃっ」
「猫ちゃんもう帰るのー?!」
寂し気な有栖川の声を無視して来た道を戻っていると、歩道に見知った人物がいた。黒いワイシャツに黒いズボン。黒いマスクという出立ちの男に思わず。
「芸能人、気取りかにゃ?」と思っていたら声に出てしまっていた。
「心の声が出てるぞニケ」
「伊織様、お久しぶりですにゃ〜」
「君、ちょっと太ったんじゃない?」
「体型のことを指摘するのは今やセクハラですにゃ」
「……人間界のお菓子も禁止にした方がいいかな?」
「暴君! 神使の伊織様にそんな権限ないじゃないですかにゃ〜」
「バレたか」
笑う伊織の横に並ぶようにニケは降り立った。
2人の陰には耳と尻尾がゆらめいている。
「何かお仕事ですかにゃ?」
「あー、こっち側の社の点検だよ。最近荒らす人がいるからね」
「困った世の中ですにゃ」
「そうだねーニケは有栖川に会いに行ってたのかな?」
「ですにゃ! 今日も何事もなく過ごしてますにゃ!」
「それはよかった」
