語らない、という語り方を教えてくれた人。【#ddtpro 樋口和貞選手】
3月23日
首の怪我のため欠場中だったDDTプロレスリングの樋口和貞選手が、引退を表明した。
引退記者会見は、団体の公式YouTubeで生中継された。
仕事を終えて帰宅後、夫婦で食い入るように引退記者会見を見た。
そんなふうに引退記者会見を見るのは、2年前の坂口征夫さんの引退表明の時以来だった。
記者会見では、ドクターストップによる引退であることが明かされた。
悔しかった。
けれど、樋口選手自身の口からは、悔しさという言葉とともに「自分の足でリングを降りることが良かった」という言葉があった。
早期発見出来て良かった、と。
何人ものレスラーの顔が浮かんだ。
大好きだった、けれど、今はリング上にいない人たち。
自分の足で、リングを降りることが出来なかった人たち。
樋口選手に、涙は無かった。
同席した髙木三四郎副社長も、彰人取締役も。
絶対に、悔しさはあるだろう。無念だろう。それでも、時折笑顔も見せながらの記者会見だった。
樋口選手らしい、と思った。
質疑応答の中では、イラプション時代の同志でもある坂口征夫さんには引退を伝えたのか、との質問があった。
「しました」と、即答だった。
でも、坂口さんからかけられた言葉については
「それは言わないです」と、さらに即答だった。
「言わないです」と言い切った後に樋口さんが見せた笑顔が、あまりに樋口さんらしくて、やっぱり私はこの選手が大好きだと今更ながらに痛感した。
語らない、という語り方がある。
言わないことで、伝わってくることがある。
小学校時代に全日本プロレスと出会い、三沢光晴選手のファンになってから今に至るまで、私はたくさんのプロレスを見てきた。
いろんなタイプのプロレスがあった。
いろんなプロレスを見て、楽しんできた。
けれど、振り返ってみれば、私が大好きになるプロレスラーはみんな、リング上でのマイクで饒舌になるような人ではなかった。
試合で魅了してくれる人。
言葉ではなく視線で、動きで、たたずまいそのもので、生き方を語るような人。
いろんなプロレスラーを好きになって応援してゆく中でも、一番好きになるのはいつだって、そういうプロレスラーだった。
樋口和貞選手は、そんな、大好きになったプロレスラーの中の一人だった。
2年前、DDTの仙台大会を見に行った時に驚いたのは、メインの試合の際に、樋口選手がセコンドにいたことだった。
メインに出場した選手の中に、樋口選手のユニット「ハリマオ」の選手はいなかった。
なのに、KO-D無差別王者を戴冠したこともあり団体の顔の一人ともいえる樋口選手が、観客を守るために身体を張ってセコンドを務めていた。
その姿に驚くとともに、そんな樋口選手の姿勢に試合と同じくらい感動したことを、2年経った今でも私ははっきりと覚えている。
引退発表記者会見の翌週、DDTの公式サイトに、樋口選手のインタビューが掲載された。
樋口選手の言葉ひとつひとつを、噛み締めるように読んだ。
インタビューの後半で出てくる1999年の「世界最強タッグ決定リーグ戦」の優勝戦(全日本プロレスのリーグ戦決勝。小橋建太・秋山準組スタン・ハンセン・田上明組)は私にとっても忘れられない試合で、同じ試合を見ていたことが嬉しかった。
さらに、現在も復帰に向けての戦いを続けている髙山善廣選手とのエピソードに、泣いた。
DDTを見るようになって、樋口選手のファンになって良かった。
あらためて、そう思った。
4月5日、後楽園ホール。
現地に行けるか配信になるかは今の時点ではまだ分からないけれど、しっかりと、見届けたいと思う。
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