そのタロットは、誰の涙を拭うのか?「3,000円の壁」を超えるコンセプト設計
前回の続きを少々…
ちょっと質問なんですが、「十徳ナイフ」って知ってます?
子供の頃、父が土産で買ってきてくれたもので、当時はそれが宝物でした。 ナイフ、ハサミ、栓抜き、コルク抜き、ノコギリ……。小さなボディに、ありとあらゆる機能が詰め込まれている。
「これさえあれば、無人島に行っても生きていける」なんて、少年の僕は目を輝かせていたものです。
1年ほど前に実家にあって、懐かしさ半分で、久しぶりにそのハサミを使ってみました。
……切れないんです。
紙一枚切るのにも、指が痛くなるほど力がいる。ナイフも、果物を剥くには短すぎる。コルク抜きに至っては、一度も使われた形跡がないまま錆びついていました。
「なんでもできる」それは裏を返せば、「なにひとつ、最高ではない」という事実でした。
そこが前回の占い師さんともかぶるんです。
今日は、そんな「足し算の呪い」にかかってしまったあなたへ。勇気を出して武器を捨てる、「引き算の美学」についてお話しします。
「デパート型占い師」が陥る、3,000円の泥沼
Web制作の相談を受けていると、多くの占い師さんやセラピストさんのプロフィール欄が、まるで「技のデパート」のようになっているのを見かけます。
タロットカード
西洋占星術
四柱推命
九星気学
手相
レイキヒーリング
心理カウンセリング
霊視
ズラリと並んだ資格やスキルの数々。これらは間違いなく、あなたの努力の結晶であり、研鑽の証です。「お客様のどんな悩みにも対応したい」という、あなたの誠実さそのものでしょう。
しかし、残念な事実をお伝えしなければなりません。メニューが増えれば増えるほど、あなたの時給は下がっていきます。
なぜなら、お客様は「占術のカタログ」を見たいわけではないからです。深夜、不安で眠れずにスマホを握りしめている人が探しているのは、「たくさんのことができる人」ではありません。
「私のこの苦しみを、今すぐ終わらせてくれる人」です。
「なんでも占えます」という看板は、「誰の悩みも、ほどほどにしか解決できません」と言っているのと同じに見えてしまうのです。
結果、数多いる「普通の占い師」の一人として比較され、3,000円、いや500円という価格競争の泥沼に巻き込まれていきます。
選ばれるのは「専門医」の看板
想像してみてください。もしあなたが、原因不明の激しい頭痛に悩まされていたとしたら。
A:「内科・外科・小児科・皮膚科・眼科。なんでも診ます」という街のクリニック。
B:「頭痛専門外来。長引く偏頭痛を根本から治療します」という専門医院。
どちらに行きたいと思いますか?そして、どちらになら「高くてもお金を払いたい」と思うでしょうか?
間違いなくBですよね。これが、Webマーケティングにおける「専門特化(ニッチ戦略)」の威力です。
Bの医師が、Aの医師より医学的知識が優れているとは限りません。もしかしたら、Aの医師の方がキャリアは長いかもしれない。けれど、患者(顧客)は、「自分の悩みに特化している」という一点において、Bの医師に圧倒的な信頼(権威性)を感じるのです。
ビジネスの世界では、これを「ポジショニング」と呼びます。
戦う場所を「占い全体」から、「〇〇な人のための専門家」へとずらすこと。それだけで、あなたは「その他大勢」から「唯一無二の先生」へと変わります。
「誰の涙を拭うのか」を決める勇気
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。新しいスキルを学ぶ必要はありません。むしろ、今持っているスキルを「隠す」勇気を持ってください。
コンセプトを作るための、たった一つの質問があります。「あなたのその占いは、具体的に『誰の』『どんな涙』を拭うためのものですか?」
「30代独身女性の、将来への漠然とした不安」ですか?
「経営者の、孤独な決断のプレッシャー」ですか?
「長年連れ添ったパートナーとの、冷え切った関係」ですか?
たった一人でいい。過去に出会ったお客様の中で、一番救いたいと思った人の顔を思い浮かべてください。そして、その人のためだけに看板を書き換えるのです。
Before:「タロット、占星術、手相であなたの運勢を占います」
After:「復縁特化・タロットアドバイザー。音信不通の彼から連絡が来る時期を読み解き、送るべきLINEの内容まで具体的に設計します」
どうでしょう。
後者のほうが、対象となる人は減ります。でも、「復縁したい」と願う人にとっては、「私のための先生だ!」と強烈に刺さるはずです。その強烈な信頼こそが、高単価でも「あなたにお願いしたい」と言われる理由になるのです。
昨日の自分より、身軽になる
十徳ナイフの話に戻りましょう。
結局、僕はそのナイフをまた引き出しの奥にしまいました。そして、キッチンにある「よく切れる包丁」でリンゴを剥きました。
道具は、使い道が決まっているからこそ、美しく機能します。あなたという才能も同じです。
「せっかく覚えたのにもったいない」その気持ちは痛いほどわかります。でも、全部を抱えて重たそうに歩いている今の姿のほうが、僕にはずっと「もったいない」ように見えるのです。
大丈夫。看板から消したとしても、あなたのスキルがなくなるわけではありません。むしろ、「復縁専門」として相談に来たお客様に対し、裏メニューとしてこっそり手相を見てあげたらどうでしょう?
「先生、そんなこともできるんですか!」と、感動というサプライズに変わります。
まずは、プロフィールを削ることから始めてみませんか。
「占いを売る」のをやめて、「解決を売る」覚悟を決める。その勇気ある引き算が、あなたのビジネスを、そしてあなた自身の心を、きっと軽くしてくれるはずです。
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